創るためのAI 機械と創造性のはてしない物語

著者 :
  • ビー・エヌ・エヌ
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本棚登録 : 181
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784802512008

作品紹介・あらすじ

Artificial Intelligence(AI)=人工知能を用いたアートや音楽など創作に関する取り組みを題材に、人間の創造性とAIの関係、その未来像について考察した一冊。

社会における注目度が急速に増し、日常の何気ない会話の中にも登場するほど、私たちの生活に浸透しつつあるAI。一方で、AIの実像について理解できている人はそう多くありません。「近いうちにAIが人間の能力を凌駕する」、「AIが仕事を奪う」といった話がマスメディアでまことしやかに囁かれ、「AI時代」を生き抜くために必要な能力を議論する書籍をよく目にするようになりました。機械的な計算を超人的なスピードと正確性でこなすAIに対して、「人間のアドバンテージは機械にはない創造性にある」、「AI時代を生き抜くためには創造性を養う必要がある」、そんな議論もよく耳にします。

本書はこうした話とは、趣旨が大きく異なります。創造性を持つ人間と、持たないAIという二項対立で捉えるのではなく、まずは「機械は創造性を持ち得ない」という先入観を疑ってみることとします。その上で、「AIも人とは違う創造性を持ち得るのではないか」という仮説に基づいて議論を進めます。

AIとは何か。ただの道具か。AIによって人の能力、特に創造性をどのように拡張できるのか。そもそも、創造性とは何か──。機械による模倣が人の創造性を拡張してきた歴史を紐解きながら、世界中で行われている現在進行形の取り組みに注目し、より豊かなAIと創造性の未来を照らし出します。

創造性という極めて人間的な心の働きを、新しい人工物の上で模倣することで、私たち人間の創造性について、新しい視座を得ようとする試みともいえます。AIというレンズを通すことで、創造するという行為が全く新しい姿を見せてくれることに驚くはずです。

感想・レビュー・書評

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  • AIを通して考える創造性の話。
    ChatGPTを始め、最近何かと話題の生成系AIの本質をついた内容だと思った。AIが生成した「誤り」を「間違えるから使えない」と一蹴するのではなく、AIの「過ち」から人間が取捨選択して新しい価値基準として取り入れていけば、人間の創造性を拡張することができる。
    今後はAIが生成したものに対して、何かしらの価値基準や指針、経験に基づいて判断できる人が成長・成功するのでしょう。果たして、自分は取捨選択の判断ができるような価値基準や指針を持っているのか…

  • 現在は生成系AIなどの発達で、変に敵対視する人が増えた気がする。また、これを使いこなす人とそうでない人でのデジタル格差も生まれている。この本はそういったことではなく、AIの創造性にフォーカスした本である。悪く言えば、普通に生きる人には関係がないともいえる。芸術は娯楽だ。なくても生きていける。
    AIを創るために主体として置くのではなく、あえて間違いを起こさせることで、驚きを与えるのだ。基本的に筆者はこのスタイルを貫いている。着眼点が新しい、読んだことのないタイプの本。

  • AIについての書籍は何冊か読んできましたが、本書では新たな視点を改めて得ることができたと思います。 結論から言うと、「人間が関わることによって、AIは十分創造的な活用に利用することができる」のだと思います。現在でも、AIはいろいろな活用がされていますが、AIが導き出した結論をどう受け止めるかは結局人間次第。人間がいなかたら、AIが導き出した結論は誰が受け止めるのだろう。他のAI? それはまた違った意味がある思いますが、人間世界においては、やはり人間ありきで考えるべきかな。本書では、結局、AIがやっているのは、膨大な可能性の中から(人間に)、与えられたアルゴリズムによって行っている「検索」だという。対象がどんなに広くても、有限といえる以上、人間でも「検索」できるだろうけど、機械のほうが早いってことかな。とにもかくにも、「ビジネス」の世界におけるAIの活用と、「芸術」の世界におけるAIの活用方法は、対象的ということですね。

  • 現状、AIと芸術(主に絵画・音楽)についてこれ以上議論する内容が思いつかないぐらい決定的な良書だと感じた。素晴らしい。

  • 道具の間違った使用方法から新たなアイデアが生まれてきた。(ターンテーブル、808、ジャクソンポロック)

  •  世界初のプログラマが「詞」を理解するアーティストであったように、AIを使った創造に関する研究者がDJなどを自分で行うアーティストというところが本書を象徴している。
     ①AI(人工知能)に対する世間の誤解、②クラブ音楽やその周辺に関するテクノロジーから見た視座、③絵を描く等のヒトの創造と機械によるものの対比が分かる。
     とても乱暴に総括すると、AI技術が発展し人の能力を超える点「シンギュラリティ」により仕事が奪われるということが言われておりコンピュータには「創造性」がないのだから「アート思考」が大事だという風潮があるように思われる。個人的には全く逆だと思っている。創造と言われる活動の多くがディープラーニング等が得意にしている似ているものを探すことと異なる点を分別することにほかならないからである。ある意味のエラーとして発生したイレギュラーに対して意味を見つけることがアーティストの役割だと思う。
     このことから分かるのはアーティストの一部は積極的にこの技術を活用し、より効率的にこれまで見たことがないものを生成(創造)することになるのだと思う。本書はそこに至る歴史について工学的な検知と各芸術に関する知見を組み合わせて編まれた優れた作品だ。
     大量の過去の知見や実験等から得られた情報から一つのインサイトとして結晶化するのが研究だとすると、知識や論理的な思考はもちろんだがアーティスト的な才能によりうまく切り取っていくという行為が大事ということが改めて分かる。それを言語化しているとい意味で本書は貴重である。

  • とても面白かったです。私自身はAIに対して楽観も悲観も持ち合わせていますが、少し楽観的に使おうかなという気分が強くなる本でした。本書自体はアートとAIの交差点という趣ですが、おそらくそれに限りません。研究の世界も類似点はたくさんあり、一線で戦うというのは新しいテクノロジーとうまく付き合うということなのかもしれない、と感じました。

  • AIと創作の関係性を考えた本。
    マーガレット・ボーデンの創造の種類が紹介。結合的創造性(例:カレーうどん)、探索的創造性(組み合わせの総体から作り出す)、変革的創造性(例:ピカソの絵みたいな概念的な変化)。このうち変革的創造性はAIには難しい。
    人類初のプログラマーであるエイダ・ラブレス、画家にしてプログラムに興味を持って新しい道を切り開いたハロルド・コーエン、boomyという音楽生成サービスで100曲作っているアーティスト、AIとコラボしたフラメンコダンサーイスラエル・ガルバンなど面白い人物達が印象的だった。
    AIに模倣させる、AIの間違いや予測不可能性を大切にする、AIの園芸家になる(育てる)、AIを誤用する以上の筆者が考える付き合い方も勉強になる。

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著者プロフィール

徳井直生
アーティスト/研究者

Computational Creativity and Beyondをモットーに、AIと人の共生による創造性の拡張を模索。AIを用いたインスタレーション作品群や楽曲で知られる。アーティスト、デザイナー、AI研究者/エンジニアなどから構成されるコレクティブ、Qosmo(コズモ)を率いて作品制作や技術開発に取り組むほか、慶應義塾大学SFCでComputational Creativity Labを主宰する。これまでに手がけた作品は、MoMA(ニューヨーク)、バービカン・センター(ロンドン)、NTT InterCommunication Center、アルスエレクトロニカなどで展示されている。

株式会社Qosmo 代表取締役/慶應義塾大学政策・メディア研究科 准教授/Dentsu Craft Tokyo, Head of Technology
東京大学工学系研究科電子工学専攻博士課程修了 博士(工学)

「2021年 『創るためのAI』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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