正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について

著者 :
  • ビー・エヌ・エヌ新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784802511193

作品紹介・あらすじ

従来のソフトウェア開発とは、「既に正解があり、記述された正解をそのまま形にする」というものづくりであり、いかに効率よく作るかという観点が主眼でした。そのため、正解の見えないなかで手探りで進んでいくことが必要となる不確実性の高い現代においては、うまく噛み合わない状況になっている開発現場も少なくありません。

本書では、共創を実現する具体的な⼿段としてのアジャイル開発を下敷きに、これからのソフトウェア開発/デジタルプロダクトづくりに、作り⼿(エンジニア、開発者、デザイナーなど)と、それを必要とする⼈(クライアント)がどのように臨むべきなのか、その考え方と行い方を具体的に提⽰する一冊です。

「正しいものを正しく作る(著者の掲げる理念)」とは、すなわち「正しくないものを作らない」戦略をとることであり、そのためには粘り強く「正しく作れているか?」と問いに置き換えながら探索的に作っていく必要があります。問いを立て、仮説を立て、チームととともに越境しながら前進していく。本書はそのための力強い手引きとなるでしょう。

感想・レビュー・書評

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  • 300ページを超える本書は、特に初めてプロダクトオーナーなど「プロダクトでの視座を求められる」エンジニアに勧めたい。

    第一章 なぜプロダクトづくりがうまくいかないのか ではどこの現場でも失敗や混乱が起きていることを伝え
    第二章 プロダクトをアジャイルにつくる ではアジャイル開発の基本について解説され
    第三章 不確実性への適応 では「暗黙的な期待」「成り立たないトレードオフ」といったアジャイルを導入してもなお立ち上がってくる不確実性と向き合い、ひとまず「正しくつくる」方法を身につける。
    第四章 アジャイル開発は2度失敗する では文字通り、2つの壁が提示され「正しくつくる」だけでは不十分であることが示され
    第五章 仮説検証型アジャイル開発 では「正しいもの」を探索する方法を知り
    第六章 ともにつくる で「目的に忠誠を誓う。しかし心中はしない、問いを持ち続け共創する」という価値観が掲げられ、またそのためには「正しいものを正しくつくれているか」という問いの重要性が説かれる。

    上上下下左右左右過去未来、視座と視野を動かし
    正しいものを探し
    正しくつくる

    300ページを超える重厚な本書を読めばたちどころにプロダクトがよくなるわけではないが、本書の内容を咀嚼し、実践し、失敗し、カイゼンし、血肉としていくことで「正しいものを正しくつくる」力がついていくのではないだろうか。
    2019年、エンジニアにとって令和最初の必読書である。

  • 開発者、PMどちらも読むべき。とても勉強になったし、さっそく一部取り入れはじめた。今のプロダクトの開発前に出会いたかった1冊。

  • 仮説を仮説のままに検証する仕組みを持つこと、
    わかっていないことをわかっていないままに受け止めることの重要さを感じた

  • ‪なぜプロダクト作りやソフトウェア開発はいつまで経っても上手くいかないのか?この永遠の課題に立ち向かう武器となるアジャイル開発の解説本。体系的理論よりも実践と失敗をベースにした構成になっており、自分が何に陥っているのかカウンセリングされているかのごとく見えてくる(ただし本書でも繰り返し言及されている「習得は非常に困難」には留意すべし)個人的には不確実性との向き合い方が書かれた第3章、特に「学びから生まれる課題」の話は目から鱗。開発が進み次にやることの洗い出しの精度が上がるのに比例してスケジュールが混沌としてくる違和感の正体はこれだったのか。今後も末永くお世話になる一冊になりそう。‬

  • 昨日の「プロダクトをつくるとはどういうことなのか? -正しいものを正しくつくる-」に参加して、言われてみたらまだ本を買って読んでいなかったこともあり帰りに購入。
    著者の体験を書籍にまとめたとのことですが、特に衝撃だったのは「アジャイル開発は二度失敗する」という章。早く少しだけ形にすることで新たにわかってきたこと(特に不安的要素)を現実的にどう受け止められるかという第1の壁、そして、プロダクトオーナーと開発チーム間の境界線という第2の壁がアジャイル開発に存在するということを痛切に思い知りました。私自身はアジャイル開発の経験がほぼないに等しいのですが、実際に取り組むときはこの2つの壁を意識しつつ、仮説検証をして回せるようにしたいものです。特にアジャイル開発をして上手くいかないと感じる方には一読すると良いかも知れません。

  • アジャイルやスクラムについて、なぜ失敗するのか、どうやるべきなのかがわかる。

  • いわゆるアジャイル開発の進め方をスクラムをモデルとして具体的に解説。チームビルディングからチームにおける役割、日々のスプリントの回し方、マインドなどが解説される。
    私は本書が想定する読者ではなかったため、あまり刺さらなかったけれど、アジャイル・スクラムを具体的に導入したい方には実践的ガイドとなっているだろう。
    とはいえ、守破離に言及する文脈で、あえて不確実性を残すことも必要という観点は面白かった。新規プロダクト開発はややもするとみんなが想像できる安定感のあるプロダクトに落としてしまいがちだけれど、それをあえて揺さぶるために不確実性を残す、取り込むという観点は忘れてはならないだろう。何のために新規事業開発をつくろうとしているかはスプリントを回している内に見失いかねないけれど、それを思い出させてもらえるからだ。

  • アジャイルの実践が必要になり、メソッドとしての知識ではなく原則を知りたくて読みました。仮説検証型アジャイル開発というプロセスを提唱していますが、それが標準的なアジャイルと何が違うのかは(知識不足で)わかりませんでした。陥りそうなアンチパターンなどがわこりやすく、現在進行形で参考にしたい考え方ばかりでした。間違ったものを正しく作ることを避けること、そのために視座を意識的に行き来することが必要と感じました。

  • 具体的なHowについては、実践しながらインプットするとして、一旦概念的なもののメモを残しておく。

    ◾️第二章: スクラム開発
    4つの価値
    ・対話を重んじる
    ・早く動くものを作る
    ・顧客との協調
    ・計画よりも変化への対応

    原則
    ・早く、継続的に
    ・変化を味方につける
    ・振り返り改善する

    チーム
    ・PO)プロダクトの価値の最大化
    ・開発チーム)製造・完成
    ・SM)スクラムプロセスの実施中

    スクラムイベント
    ・プランニング
    ・デイリースクラム
    ・レビュー
    ・レトロスペクティブ

    成果物
    ・プロダクトバックログ
    ・スプリントバックログ
    ・インクリメント

    9つの意義 ≒ 目的
    ・早く認識を揃える
    ・早く問題に気づく
    ・繰り返して学習する
    ・早く市場に出す

    ■第五章: 価値探索
    基本スタンス
    ・モデル化とその検証の繰り返し
     モデル化)分かっていることの言語化・図式化

    仮説の種類
    ・課題仮説
    ・ソリューション仮説

    検証結果のジャッジ観点
    ・Problem-Solution-Fit
    ・Product-Market-Fit

    具体的な方法
    ・叩き作成(仮説キャンバス)
    ・課題設定の正しさの検証
     ユーザーインタビュー
    ・課題に対する解決策の正しさの検証
     プロトタイピング
    ・参考)その他の手法
     アンケート)課題仮説、ユーザーが見えないとき

    ---

    感想
    ・環境変化が激しい時代なので、ウォーターフォール型の開発プロセスが時代にフィットしないっていうのはこれまで何度も言われてきていること
    ・そういう状況に対してアジャイル開発という手法で立ち向かおうとするってのもよく聞く
    ・その整理でいくと、本質は「変化への適応」のように思う。それを達成するために「小さく・早く作る」という手段が採用される
    ・で、特に面白いのは後半の「価値探索」の話
    ・仮説をに種類に分けて、仮説検証を繰り返すことで「小さく・早く作る」ことを実現しよう、みたいな話

  • 近代的なプロダクト開発で使われないようなものを作らないためにはどう実践すべきかの指南書になる。より詳細なプラクティスはスクラムやアジャイルの知識を参照しつつ、マインドセットとして参考にすると良さそう。必要性も含めて文章でしっかり説明されており、プロダクト開発の全てのフェーズで活用できるはず。
    発売から4年経つので、第2版にも期待。

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著者プロフィール

株式会社レッドジャーニー 代表。サービスや事業についてのアイデア段階の構想からコンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイルについて経験が厚い。株式会社リコー CDIO付DXエグゼクティブ、政府CIO補佐官も務めた。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェクトマネジメント、大規模インターネットサービスのプロデューサー、アジャイル開発の実践を経て、自らの会社を立ち上げる。株式会社リコー CDIO付きDXエグゼクティブ。それぞれの局面から得られた実践知で、ソフトウェアの共創に辿り着くべく越境し続けている。著書に『カイゼン・ジャーニー』『チーム・ジャーニー』『デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー』(翔泳社)、『正しいものを正しくつくる』『組織を芯からアジャイルにする』(BNN新社)、『いちばんやさしいアジャイル開発の教本』(インプレス、共著)、訳書に『リーン開発の現場』(オーム社)がある。

「2023年 『これまでの仕事 これからの仕事 ~たった1人から現実を変えていくアジャイルという方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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