怪獣使いと少年ウルトラマンの作家たち 増補新装版

著者 :
  • 洋泉社
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本棚登録 : 85
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800306159

作品紹介・あらすじ

差別・犯罪・初恋・忘執…四人の作家が怪獣に託した"孤独"を"痛み"とともに体験し直す渾身の力作!四万字を超える増補!伝説の名著、ここに完全復活!

感想・レビュー・書評

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  • 子供の頃、親にせがんでVHSを借りて見たウルトラマンやウルトラセブンの話に、こんな想いや思想が込められていたとは知らなかった。

    自分はどちらかというと、マンやセブンより怪獣の方が好きだった。次はどんな怪獣が出てくるのかワクワクしたものだが、怪獣は憶えていてもストーリーはおぼろげだった。この本を読んで、怪獣の設定やそれにまつわるお話に、強い作家性が出ていたことに驚いた。今また見直せば違った印象を持つと思う。

    そういう意味で、実際に脚本家たちにインタビューし、その出自や作家性からウルトラマンの物語に流れるものを可視化しようと試みたこの本は解説本、資料として価値があり、何より読み応えがある。

  • ウルトラマンシリーズを書いた4人の作家についての解説。ウルトラマンのシリーズが単なる子ども向けの話で終わらなかったのには、それぞれの作家の思いがあったのだと再認識できた。ただ著者の思いが強く解釈に強引さもあるか? とときどき思った。

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 評論家とか批評家とか、アナリストとか、専門家とか、あんまり好きじゃないし、この本を読んでいても、なんか自己満足をつらつら書いているだけだなぁとも思った。

    それでも、ウルトラマンシリーズの作家たちが作品に込めた主題、自分自身の思想背景・社会背景とかを知ることはできたのは面白かった。
    沖縄人として、クリスチャンとして、反体制派として、色々作家の人生も丸分けで。

  • 著者と世代が同じなので、ウルトラ体験も同じ。帰ってきたウルトラマン世代なのでした。

  •  本書は、ウルトラシリーズをはじめとする特撮ドラマの脚本を多く手がけたライター、金城哲夫、佐々木守、上原正三、市川森一の4人に焦点を当て、彼らの生い立ち、来歴、若き日に書いた特撮とは無関係の作品までを精査し、可能であれば直接話を聞き、作品に込められたメッセージを考察した本である。金城、上原は沖縄出身、佐々木は一時共産党員であり、市川は長崎出身のキリスト教徒であるが、作者たちのこうした背景が思わぬ形で作品に反映されていて、読んでいて興味が尽きなかった。
     佐々木守は、ウルトラシリーズの主役はヒーローではなく、怪獣だと言う。確かに、ウルトラシリーズ最初の番組ウルトラQには、超人ヒーローは登場しない。そうするとヒーローは、あくまで怪獣を描くために必要との発想から登場した、本来は脇役のキャラクターということになる。
     そう言えばウルトラシリーズには、「故郷は地球」(ジャミラ)、「ノンマルトの使者」(ノンマルト、ガイロス)等、正義の味方が悪を倒す爽快感からはほど遠く、見た後でどうしたらいいのかわからないような居心地の悪さを感じさせるエピソードがある。こういう話ほど何年たっても心に残っているような気がするが、それは、これらこそがウルトラシリーズの本質だからなのかもしれない。
     怪獣とは、現在の世界と調和して生きていくことができず、存在を許されない生物である。子供の落書きから生まれ、ほとんどただ寝ているだけのガヴァドンですら、最後はウルトラマンに駆除されていった。怪獣が疎外されている者の象徴だと考えると、その咆哮や宇宙人の言葉が少し違った、深い響きを持って聞こえてくる。
     大変面白い本だが、本書をまず手に取るのは特撮ファンだろうから、特撮以外の作品についての記述は、彼らが書いた特撮作品の考察に絶対必要なものにとどめ、焦点をもう少し絞った方が読みやすいのでは、という印象を持った。私はどの作品についての記述も興味深く読んだが、読み手によっては、少し冗長に感じるかもしれない気がした。
     それでも、ひとつひとつの作品には作者の深い思いが込められていることが実感できる。砂川裁判も、琉球処分も、方言札も出てくる。特撮ファンのみならず、社会事象に興味を持つ多くの人に読んでほしい本である。

  • う〜む、期待していた内容とだいぶ異なってたな。ウルトラに関する記述だけだと分量もすっきりしたろうに。

  • 1993年、宝島社から刊行された「怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち」から22年の歳月を経て、88ページにも及ぶ新たな検証、批評記事を加えた「増補版」。
    モノクロからカラーへと急成長するテレビ界の発展期、日本経済の高度成長期、安保闘争、沖縄返還、オイルショックなど「昭和」という時代の激しい流れの中で、戦中、戦後を生きて体験した経験を元に日本という国の「有り様」を≪ウルトラマンと怪獣が居る世界≫を通して、これからを生き、日本を築いてゆく力となる子供達にメッセージとして発信し続けた脚本家の金城哲夫・佐々木守・上原正三・市川森一 ら、それぞれの人物像を通して作品思想を検証した批評書。
    その内容は制作現場の舞台裏や「楽屋落ち」といった特撮マニアの飛付きそうな話ではなく、怪獣という存在を使ったストーリーを描いたそれぞれの脚本家が生まれてから体験し、視てきた事を通して戦後の日本人が背負ってきた事、そしてこれからの世代が「背負わされて行くこと」を20分足らずのドラマの中に凝縮した強く、重いメッセージの数々を白日の下に晒してなお「これからの日本の有り様」を占う書としてはあまりに切なく、痛みすらある。
    「怪獣使い」の少年達は今、みな鬼簿に載り、声を聞くに叶わなくなってしまった。ただ、この本を読んで、一番ショックだったのは、上原正三氏の描いてきた話のように今日の「沖縄」の≪存在≫が70年前と何ら変わっていない事、市川森一氏のメッセージの通り、日本が米国の「属国」として戦に駆り立てられてゆくであろう事の先見に「怖いものを視た」気がする。きっとこれが怪獣の『真の姿』なのだろう。

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著者プロフィール

きりどおし・りさく
◉1964年東京生まれ。和光大学人文学部文学科卒業。
「民族差別論」を学ぶ。編集者を経て文筆業。
映画、コミック、音楽、文学、社会問題を
クロスオーバーした批評活動を行なう。
『宮崎駿の〈世界〉』で2001年サントリー学芸賞受賞。
主著『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』
『本多猪四郎 無冠の巨匠』(ともに洋泉社)、
『山田洋次の〈世界〉』(ちくま新書)、
『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、
『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)他多数。

「2016年 『15歳の被爆者 歴史を消さないために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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