もういちどベートーヴェン

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800293213

感想・レビュー・書評

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  • 岬洋介シリーズ第5弾。今回は岬洋介とともに司法修習生となった天生高春目線で物語が展開していく…。検察庁実務研修で取り調べに立ち会うことになった事件…絵本作家の夫が殺害され妻の絵本画家に容疑がかかる…証拠は凶器に付着した妻の指紋…岬洋介は妻が犯行を否認していること、腑に落ちないことがあったこともあり独自に捜査を開始する…。また、岬洋介は再びピアノに触れたい思いが抑えきれなくなり、司法修習生でありながらピアノコンクールへの出場を決める…。
    司法修習生の岬洋介、激しく新鮮でした!一番心に残ったのは、教官の高円寺静さんの「仕事の価値は自分以外の人間をどれだけ幸福にできるかで決まるのだ」という言葉…これは何の仕事をしていても通じる言葉でもあって、私にも響きました。高円寺静さん、別の作品に登場しているキャラなんですね…そちらも機会があれば読みたいと思いました。ストーリー的には意外な人が犯人であってやられた感もあり、ピアノ演奏の描写も変わらず見事でした。次作を読むのも楽しみです。

  • 非凡な才能に恵まれたミステリアスなピアニスト・岬洋介の物語、5作目。
    高校生だった頃の岬洋介の物語を一週間前に読みました。 
    気になって仕方がなかった岬洋介少年のその後が、この作品で語られます。
    タイトルにある『もういちど…』の意味も明らかになりました。

    そして、あの「静おばあちゃん」こと高遠寺静さん。
    今回は、岬青年の教官としての登場です。
    山中七里さんの作品は音楽ミステリ―なので、
    前作同様、ある事件の解決に岬洋介が大きく関わります。

    何作かこのシリーズを読んで、気づいたことがあります。
    事件の解決という筋とは別に、困難に立ち向かう人の姿が見え隠れするのです。
    ベートーヴェンが聴力障害を持っていたことは有名です。
    絶望の淵から不死鳥のように甦った作曲家でした。

    第一作目の『さよならドビュッシー』
    これは、岬の生徒・遥 の、全身大火傷からの “再生” の物語でした。
    二作目の『おやすみラフマニノフ』
    ここでは、岬が非常勤講師を務める音大の学生・初音が災難に見舞われます。
    この作品では、ジャクリーヌ・デュプレの逸話が登場しました。
    多発性硬化症という難病に冒され、演奏家として引退した伝説のチェリスト。
    デュプレは、後進の指導に当たることで最期までチェロから逃げませんでした。

    はっとしました。
    「災い人を選ばず。でも、それにどう対処するかは人が選べる」
    岬自身が闘い続ける、一連の作品のどこかにあった文言。
    このシリーズの通奏低音として流れているのですね。

  • 岬洋介 シリーズ第5作目

    ピアニストになる夢を諦め、法曹界に進もうとした、岬洋介の、司法修習生時代の話。

    岬洋介は、検察庁の実務研修で、絵本作家殺害事件の検事調べに立ち会った。

    被害者の絵本作家は、司法修習の検察担当の蒲原教官と、顔見知りであったが、蒲原は、取調べ検察官でもあった。

    絵本画家である妻が、容疑者として送検されるが、彼女は無実を訴え続けていた。

    納得できない点がある岬洋介は、同期の天生高春の協力を得て、独自に、捜査する。

    お決まりの、意外な犯人。
    と言うか、多分「あの人?」と想像はできたが。

    殺された絵本作家の、最後の作品内容と、
    天生のちょっとした悪戯心が元で、岬洋介が、再び、ピアノの道を進む。

    前シリーズを読んでいるから、結果は、わかっていたけど。

    三年毎の父親の転勤で「お陰でクラスメートが増えました」という洋介は、天生から「友だちはいたのかよ」と言われて「高ニの時に一人だけいましたよ。少なくとも僕はそう信じています」と。
    鷹村亮の事?と、嬉しくなった。

    「仕事の価値は自分以外の人間をどれだけ幸福にできるかで決まるのだ」
    遠遠寺教官の言葉が
    私の心の琴線に触れた。

    • かなさん
      マミさん、こんばんは!
      いつも私が本棚に読みたい作品をあげると、いいねをして頂き
      ありがとうございます。

      マミさんは、中山七里さん...
      マミさん、こんばんは!
      いつも私が本棚に読みたい作品をあげると、いいねをして頂き
      ありがとうございます。

      マミさんは、中山七里さんがお好きなんですね!
      私も岬洋介シリーズが大好きです。
      他の作品もいつか読んでみようと思っています(^^)

      今後読まれるマミさんのレビューを参考にして
      読みたい作品を決めたいとも考えて
      フォローさせていただければと思います。
      どうぞよろしくお願いします。
      2022/11/21
  • 司法修習生時期の岬先生のお話。

    登場人物そんな多くないから犯人はこの人ってなるんですけど、動機がずっと分からなかったです〜
    そーゆーことだったのねぇって推理が語られてやっと分かりました

    メインは岬先生が法律の世界から、ピアノに戻るお話でした。♪(´ε` )

  • ベートーベンの楽曲を文章にてここまで表現できるのか!
    ベートーベンピアノソナタ30

    ベートーベン32
    ベートーベンいわゆる皇帝
    ベートーベンいわゆる悲壮
    とベートーベンと知ってるもの、全く知らないものとベートーベンに溢れている
    元から好きだったベートーベンに改めて虜になる、「なんと単純」
    しかし、素人ゆえ自分はYou tube を聴きながら読んでる。「なんと便利なものがある」
    中山七里はかくも御子柴弁護士、岬検事、渡瀬刑事
    高遠寺判事、裁判官
    一つ一つ上げていってもキリがないくらい
    ここまでの魅力ある人たちを生み出す!凄すぎる

    前半岬洋介を目の前にするといかに自分が愚かで何者かに左右され右顧左眄しているかをわからせされる
    司法修習生として岬洋介に出逢う天生高春がそうである
    一点の曇りのない本人を目の前にしては
    嫉妬も妬みも、人間として持ちうるありとあらゆる感情を彼は元から意に感しない
    次元が違う

    数え上げればきりがないほど卓越した才能、鋭利な智慧
    しかしそのことを本人がなんとも思わない輩を目の前にした時
    大衆はどう感じる
    とにかく全てが面白く一気読み。

    高円寺静判事ここでは教官の言葉に痺れる、やはり静さん素敵!、

    被告人Aの懲役12年が妥当がどうかと座学にて審議するところでの
    高円寺静さんの言葉

    ーー事実だけを拾い上げれば法廷はただ罪人を罰する場所に堕ちてしまいます、

    法廷は罰する場所ではなくあくまでも裁く場所です。ーー
    カッコいい。

    他にも色々とあるのだけど、あまり長いのもね。
    ダイヤモンドが散りばめられてる。

    司法修習生として試験をトップ合格
    他の追従を許さぬ切れ
    天は二物も三物も与える
    この世は平等ではない、テミスの神が微笑んでる
    持っている
    才能を余すことなく手にしている、洋介くん、
    言わずと知れた岬検事の息子!
    どうにも終始悲しさ、諦観が匂う

    後半は全くすごい。音楽の神ミューズが。

    修士の研修の一環としていくつかの犯罪をまなぶ、その中で「絵本赤うさぎロックン・ロール」
    妻牧野日見子は殺人を否認しているー

    もう中山七里も五十作すぎも読んでると
    わかってるつもりでもまた虜になる。
    わぁいいわ!

    しかしいつも、最後は難しい、
    最後にフン?と
    首を傾げた。最後はこうしかならないのかぁー
    最後前までは、星⭐️五つだったわ。



  • 岬のシリーズもの。司法修習生となった岬を、同期生の天生が語ってゆく。天生は岬の境遇を才能を嫉妬するが、岬の魅力により友となる。さらに天生はベートーベンが好き。岬の不自然な行動で、岬がクラシック音楽が嫌いだと思い、苦しませるため、修行のため、クラシックコンサートに誘う。そこで岬の本来の姿を見てしまう。岬が音楽か司法かを選ぶ、その時のお話。
    今回は岬の一時代を描いたものとして、殺人事件の解決とか、音楽の描写(もちろんありますが)が弱いように思えます。司法修習生としてですが、仕事に向き合う姿勢とか、本人でなく天生の視点で抜かりなく仕事をしてゆく岬の姿を読んでいると、某シリーズの佐方さんを思い出し錯覚しました、読み進めて、音楽の世界に引き戻され中山さんの世界なんだなあとに浸りましたが。岬さんシリーズは彼がどういった人生を歩むかこれから見続けたく思います、音楽とともに。

  • 司法修習生時代の岬洋介の活躍を同期生の天生(アモウ)高春が語るスタイルで展開する岬洋介シリーズの最新巻。司法試験も成績トップ、研修中の成績はダントツ、おまけにピアノテクも超絶と言う非の打ち所無い彼だが反面チョー天然で憎めないキャラになっている。なのでピアノコンクールの場面もたくさんあって、思わず「蜜蜂と遠雷」を想起してしまう♪ そして勿論ミステリー解決もめでたくこなしてしまいました(笑) シリーズ物は知った面々が出てくるのも何だか懐かしい。

  • 司法修習生時代の岬をえがく、シリーズ最新刊。
    事件について検討する仕事なので、よりその観察眼が光って見え、たのしかった。
    司法修習生の仕事について知れたのも、興味深い。
    高遠寺静が登場したり。
    渡瀬の名前がでたり。
    過去作とのリンクもたのしい。
    印象に残るのは、やはり音楽に没頭したときの豹変ぶり。
    演奏シーンは変わらず圧巻。
    読後感もさわやか。

  • とても気に入っているシリーズだ。
    語り方やピアノの心得がない自分でもグングンと引き込まれる演奏の表現が好きだ。
    ただこの作品は中心となるミステリーの所が弱い。
    奥行きもなく物足らない。
    主人公の若い時の話として割り切ればいいのだが、それはそれで最後の辺りも簡潔すぎて寂しい感じがする。
    最後の方で高遠寺教官が一言語る部分が欲しかった。

  • 岬洋介シリーズはどうしても音楽への没入時間を生んでしまう(小説からクラシック好きに)

    でも本作はちょっと謎解きのための材料が足りなかったような…

    いや、カッコいいのよ、岬さんは。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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