小説 PSYCHO-PASS サイコパス ゼロ 名前のない怪物

  • マッグガーデン
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800001429

作品紹介・あらすじ

西暦2109年。人間の精神を数値化し、最適幸福が追及できるようになった未来世界で、システムの導き出した"犯罪係数"をもとに、犯罪者とその予備軍"潜在犯"を取り締まる治安維持組織"厚生省公安局刑事課"。潜在犯でありながら犯罪捜査の実動を担う"執行官"と、模範的社会性を持つキャリアとして執行官の監視・指揮を担う"監視官"のチームで活動する彼らは今、後に"標本事件"と呼ばれる猟奇殺人事件"広域重要指定事件102"に総力を持って当たっていた。ある雨の日、廃棄区画で発生した騒ぎの鎮静に向かった一係所属の監視官・狡噛慎也と執行官・佐々山光留は、区画の片隅で、私立女子の名門"桜霜学園"の生徒・桐野瞳子と出会う。それは、待ち受ける悲劇の始まりだった-。「標本事件」…監視官・狡噛慎也を猟犬に堕とした事件の真相。TVアニメ12話の脚本家が標本事件の真相を綴る外伝ノベル。

感想・レビュー・書評

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  • 狡噛がなぜ標本事件にそんなにも執着するのか、ようやく少し理解できた気がする。逆に言えば本書を読まないと佐々山の人となりや魅力は全くわからなかったので、「愛すべきクソ野郎」の意味がやっとわかって嬉しい。あのピンボケした「マキシマ」の写真は瞳子が撮ったものだったとは。よくうまく繋げたなと思う。

    本書は佐々山の物語であると同時に、監視官だった頃の狡噛の物語でもある。狡噛が槙島に対して抱いた感情、桜霜学園の捜査でようやくその尻尾をつかんだときの気持ち。ノナタワーで対峙したときの「お前は槙島聖護だ」に込めた思い。「もう二度とごめんだね」という台詞が本心からきたものだということ。佐々山に対する贖罪と復讐心で心底疲れていたのだろう。この執着の由来もようやく理解した。

    狡噛は佐々山をパラライザーで撃つことができなかったと悔やんでいた。本編1話で朱がパラライザーで狡噛を撃ったことに対して、全く機嫌を損ねずに、むしろ感心したように対応していたのはこのことがあったからなのかと思った。また、「執行官に謝る監視官は珍しい」という台詞は佐々山が狡噛に対して発したものだったり、「執行官とうまくやっていける」という台詞は狡噛が宜野座に対して発したものだったりと、監視官狡噛と執行官佐々山の関係性が後の監視官朱と執行官狡噛に対比されているように感じた。そして宜野座の中間管理職的な苦悩はこの頃からだったのか、という妙な納得も。

    文章がこなれていない印象を受ける点、細部の誤植や文字表記不統一が気になったものの、ストーリーそのものは名作。本編しか観ていない人はおそらく、狡噛の執着も、佐々山の魅力も、理解できないという人が多いのではないか。本書の内容も本編に入れ込んで欲しかった。

  • 麻雀でのやりとり、一見すると誰か何を言っているのかわかりづらい場面でしたが、『牌をきって言葉をまわす』という解釈が面白い。
    これで誰が言っているか理解できます。
    そんな演出は「あ」「い」「う」「え」だけで、
    こういう会話シーンの作り方も、
    使い方もあるんだと関心しました。

    それと読み進めれば、読み進めれるほど、
    狡噛と朱は同じ境遇だったんだなと。
    監視官と、執行官の複雑な関係。
    執行官を撃てなかった狡噛、執行官を撃った朱。
    それによって、二人の運命は大きく変わったとも見えます。
    比較対象ですね。
    佐々山を失った狡噛の心、舩原を失った朱の心。
    復讐者と、変革者。
    色々な比較があるように見えます。

    そういった意味でいえば、
    狡噛さんはただ真面目過ぎたということなのでしょうか。
    逆に考えれば、PSYCHO-PASSは朱ちゃんが成長していく物語だったんだなと、再認識出来ました。

    ただ狡噛は撃てなかった自分が、本当は一番許せないのかもしれませんね。
    結果的に、佐々山を撃てなかったせいで、仲間を三人も失いました。
    かがりくん、とっつあん、佐々山。
    だからこそ、引き金を絞らないわけにはいかなかった。


    標本事件。
    なまえのないかいぶつは、何を表しているのか怖いものですね。
    それは、殺意なのか、シビュラシステムなのか、自分自身……はたまた別の何かなのか。

  • 正直、とても読みにくい。

    とはいえ、中盤からの盛り上がりは臨場感があり、事件の真相が明かされていくハラハラ感は楽しかった。
    佐々山とヒロイン瞳子の描き方は好ましく、著者の愛を感じられた。

    が、視点がころころ変わるにも関わらず、それぞれのキャラの考えが浅い。心情が大げさすぎたり、伝わりにくいとムラがあって振り回される。群像劇とは程遠い。
    何より、原作主要メンバーが魅力的に描かれていない。全員アニメとは関係のない別のキャラだろうかと思うほど、キャラの像が掴め切れていない印象だった。

    結局、"標本事件真相が明らかに"の謳い文句は、どこにいったのか、アニメ本編で疑問を抱いていた部分は一切描かないで結末だけを迎える。
    ミステリーとしても面白くないし、アニメ原作のノベライズとしても面白さに欠けて残念だった。

  • 狡噛が撃てなかったドミネーターを、付き合いの長さに差があるとはいえ常守は劇中で撃つ。しかも当の狡噛自身がそれに撃たれる、という皮肉。

  • サイコパスの小説版を読むのは二作目。前作読んだときに比べると、時間がかかった。書き手の問題だろうか。
    とはいえ、テレビ版につながる話なので読めてよかった。

  •  「サイコパス」のスピンオフ小説。
     本編で主人公が「潜在犯」に落ちるキッカケとなった相棒、佐々山の死の真相について。
     コウガミさんが非常に真面目。 
     本編のノベライズは、テレビまんまだったので良くも悪くもアッサリしていたが、こっちはサイドストーリーとしてよくできていると思われる。
     「シビュラシステム」の届かない場所で「棄民」として扱われていた藤間と佐々山の対比も面白い。
     ただ、コウガミさんが落ちていくところが描かれていないところが食い足りないという感想があったけど、それもそうかもしれない。

  • アニメ「サイコパス」の前日譚。アニメを観てから読むべし。アニメ観る前だと背景がわからず、さっぱり感が漂いそう。

    シビュラシステムは割と好みなんだけど、こういうシステムがはやると、人は楽をするようになって、できないことが増えていくことが問題なんだろうなぁ。

    ちなみに漫画版の「名前のない怪物」の連載が「PSYCHO-PASS 監視官 狡噛慎也」という名前で始まっている。2015/05/10 時点では未完で単行本が2冊という状況。こちらは、小説よりも設定を掘り下げている感じがする(別のエピソードも追加されている)ので、そちらもおすすめ。

  • 「PSYCHO-PASS」外伝小説。本編でちらりと語られた、過去の「標本事件」の顛末を描いた一冊。本編を知らない人がここから入るのもいいかもしれないけれど、本編を知ってる方がより楽しめるのは間違いありません。
    あまりに凄絶な「標本事件」だけれど、その裏に隠された犯人の物語は、どこかしらおとぎ話めいていて魅力でもあります。そしてこの物語の主役ともいえるかもしれない佐々山も魅力的。ただ、事件の結末を本編で知ってしまっていると……なんともやりきれないなあ。

  • アニメのノベライズ。アニメを見ていればわかるのかもしれないが、最後で犯人がどうなったかが曖昧なまま終わる。犯罪者となりうるものを事前に炙り出すこともできるシビュラシステム(包括的生涯福祉支援システム)に何らかの欠陥があることを匂わせて。本作だけだともやもやが残る。続きに期待。

  • 標本事件の真相。狡噛さんの監視官時代、つまり、猟犬(執行官)になるきっかけになった事件の話。
    佐々山との関係に苦悩する狡噛さんが……ファン必見(ぇ そー考えると常守さんよく狡噛さん撃ったね。運命を変えた1発。心で動く人、羨ましい。

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著者プロフィール

自身のプロデュースユニット「タカハ劇団」で全作品の作・演出を手掛けると共に、宮本亜門、青木豪といった一流演出家の舞台の脚本も手がけ、今、小劇場界で熱い注目を集める新進気鋭の劇作家。他の脚本作品にNHK FM 青春アドベンチャー「屋上デモクラシー」、CXアニメ「サイコパス」など。

「2017年 『千住クレイジーボーイズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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