持続可能な資本主義――100年後も生き残る会社の「八方よし」の経営哲学 (ディスカヴァー携書)

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799324226

感想・レビュー・書評

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  • 著者の鎌倉投信さんへの投資は僕ももう長いことやってます。
    利益追求ではなく社会に役立つ企業の応援をされてる方です。
    鎌倉投信は「リターン=お金」というの定義を書き換えることで、現在のフロー重視の資本主義にかわる、新しいシステムをつくろうとしています。
    リターンをお金と捉えてしまうと効率的な投資を追求することになり無限にお金を稼がなくてはいけなくなります。
    ゴール設定を変えていい会社を支援する必要があります。

    「いい会社」は数値化できない
    もし指標をつくって画一化しようとすれば、企業は指標を満たそうとするあまり個性を失い、社会から多様性が失われてしまう。
    「いい会社」のすべてを定量化することはできない、いや、むしろすべきではないと書かれています。
    たしかに定量化数値化してしまうと目的と手段が入れ替わっていい会社に見せかけることが目的になってしまいます。

    「お金をリターンとすると「三方よし」は成立しない」
    本書はお金をリターンにする今の行きすぎた日本の資本主義経済を憂いています。
    日本では昔から定量化数値化できない「信頼」を拠り所にしてきました。
    取引先や社会から「信頼」を得なければ企業は長期的に発展することはできません。
    今の日本の金融業界はリスクを軽減するために「BIS規制」の基準を取り入れたのかもしれませんが結果として生まれたのは銀行の「目利き」能力の低下だったと書かれています。。
    「信頼」の元になる社会的価値や人間的価値などの「見えざる資産」を評価する力を失い客観的に評価できる担保に極度に依存する体質をつくってしまったことが今の日本の行き詰まり感を表しているんやと思います。

    「CSV」
    とは「企業が事業活動を通して経済性(利益の創出)と社会性(社会課題の解決)を両立すること」と書かれています。
    噛み砕いていえば「ボランティアではなく本業で社会に貢献すること」です。
    そして企業が「CSV」の姿勢を持っているかはステークホルダーとの間に「共通価値」を見いだしているかどうかが重要な判断基準となると書かれています。
    こちらもシンプルに「自分と相手のどちらにとっても価値があると感じられるもの」と言い換えてよいと書かれています。
    お金をリターンとすると一見利益相反すると思われることも「共通価値」という一段高い視点で抽象化することで経済性と社会性を両立することが可能になるんやと思います。
    日本では「三方よし」の概念をみればわかるように社会性がすでに事業のうちに内在していたと書かれています。
    SDGsを上げるまでもなくこれからは日本的経営が見直されるのかもしれません。

    「ファン経済」
    価格選好から脱け出すための立派な競争戦略と書かれています。
    価格コムを上げるまでもなくみんな安いものが好きです。
    でもそれが行きすぎた結果「安いが正義」になってしまいました。
    そこに売り手と買い手のつながりはありません。
    ファン経済は価格競争だけの世界から選ばれる企業を目指すための競争戦略と書かれています。
    企業のステークホルダーにファンになってもらうためにもっとも重要なものは「事業に対する大義」すなわち「経営理念」と書かれています。
    経営理念に共感してもらうことからファンづくりの第一歩がはじまります。

    「無料コンサルティング」
    自社製品を使ってもらう代わりにコンサルティングを無料でする会社があります。
    利益は取引先の成長の延長線上にあるという考え方です。
    利益を取引先と奪い合うのではなくともに成長し長期的な関係性のなかで双方の利益を増やしています。
    この考えは役所にも通じると思います。
    これまで民間に肩入れすることはタブー視されてきました。
    しかしこれからは民間さんが儲けることで税金も増えるし雇用も増えると考えるべきです。
    特に福祉的雇用をしてもらうためにはまず足元の経営をしっかりしてもらう必要があります。
    そのために共存共栄なんやと思います。

  • 新井さんの穏やかな人柄が出ていそうな優しい本。
    (昔はそんな人じゃなかったのかもしれないけど。)

    アメリカ流の「リターン=お金」という考え方を否定している割には、
    ポーターのCSVを持ち出すあたり、
    若干突っ込みたくなる気持ちもありますが、
    八方良しの考え方は、まさしく同意で、
    今後、ほとんどの企業で求められそうな概念。

    後半のいい会社の実例は、八方の中の1つ(ないし数個)が秀でている会社の紹介という建付けでしたが、
    八方全てにおいて良しを体現している例を教えてもらいたかったです。
    普通の企業としては、異なる利害関係者間で
    いかに価値を共有するかに興味があるはずなので。

    著者が運用している鎌倉投信のことは、かなり昔方知っていますが、
    この本を読んだら、買ってみたくなりました。。

  • 社会や心、「見えざる資本」。
    レバレッジをかけた金銭のポジティブフィードバックによる成長には限界があると考えているため、本書の根幹をなす主張には同意する。
    しかしながら、日本の住宅が諸外国と比べ短期間で償却してしまうことを行き過ぎた資本主義の弊害であるかのように捉えるなど、主張が強いあまり違和感を感じる部分もあった。

  • 友達に興味ありそう!と勧められて読んだ、とても興味深かった。だけど、読みながらそもそも持続可能と資本主義を結びつけるのは無理があるのでは...と思ったり。塩谷舞さんのエッセイで読んだ、「いいことで飯が食える社会にするには(正しいタイトル忘れた)」という章で書いてあったこととも結びつくことがたくさんあった。社会的に良いアクションを起こしている会社をいくつか知ることができたし読みやすいのでおすすめ。

  • 鎌倉投信出身、新井和宏さん。
    短期的に効率的な利益だけを求める資本主義は淘汰されていく。
    長期的に8方良しを見据えた資本主義が支える。
    個人に必要なのは、そういった企業を応援する、という選択。
    数値化できないものを、数値化しないことを選択する気付き。

  • 資本主義の限界云々を言っているが、著者の商売(鎌倉投信)の宣伝がほとんど。
    でも、それがそこそこ興味深かったので、そこまで読後感は悪くなかった。

  • 資本主義の在り方が変わってきていて、ポイントとなるのは、「持続可能」であること。
    経営者、株主、社員だけでなく、国や地球に対しても利益のある"8方良し"の経営をする。そのためにはやっぱり「心」が大切ということは本当によくわかった。
    綺麗事と言われて、でもやっぱりこのままはおかしい。だから本気でいい会社だけを応援する。その気持ちに賛同する人はどんどん増えてきている気がするし、私もそう思っている。
    株主だけでなく、消費者である全員が当事者で、考えていかなきゃ行けないことだと思う。

  • 人新世の「資本論」と同じようなテーマを取り上げているが、
    こちらはよりビジネス寄り、しかも、投資をする上で大切にしているポイントをもとに持続可能な資本主義を論じている。

    具体例を出して話が進むので非常にわかりやすい。

    持続可能な資本主義は、「三方よし」ではなく、「八方よし」。これ重要!

  • 現状コストとみなされているものを、発想の転換でコストと見なさないやり方をしている、良い企業の例が出ていて勉強になった。

    とても共感したし、利益、効率だけが全てではないともっと多くの人が思える社会に早くなったら良いなと思った。

  • 信頼出来る会社を応援し投資する。
    この考えは新しい様であっても、投資のプリミティブな考えの一つだと思う。

    鎌倉投信はその入口としての意味合いがあると思った。投資先一覧が出ているので、ここは、と思った先には個別に株や債券を買うのもいいし、更にそこから別の投資したい会社を探すのもいいと思った。

    鎌倉投信を購入している訳ではないが。

    ジュンク堂書店大阪本店にて購入。

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