ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか? 生命科学のテクノロジーによって生まれうる未来

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799321676

感想・レビュー・書評

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  • 中高生のとき、生物の授業がとても苦手で、
    暗記の少ない物理と化学に流れてしまった自分ですが、
    ふとしたきっかけで生命科学に興味を持ち
    (というより、教養として知っておく必要性が出てきて)、
    手に取った一冊。
    あんまり期待していなかったのですが、
    想像以上に分かりやすく、面白い内容でした。

    多少、著者のポジショントーク的な役割も果たしているのでしょうが、
    科学初心者でも(ある程度は)理解できるように分かりやすく書かれています。

    遺伝子解析や遺伝子研究は、テクノロジーの進化をもろに受け、
    今とてもホットなトピックなんですね。
    恥ずかしながら、自分は全く知りませんでしたが、
    遺伝子研究の分野で起こっている急激な変化は、
    今後あらゆる分野でも起こり得ることで、
    この業界でどんな変化が起こりそうなのかを知って、
    自業界の変化を想像するだけでも、
    学びが得られると感じました。

    最近出た著者の別の本も読んでみたくなりました。

  • 生命科学の様々なテクノロジーに対して、わからない、または怖いという考えを持ってしまうのは仕方のないことかもしれません。高橋氏は「時間」の概念を考えに入れることで、それらテクノロジーが社会へ応用されていく助けになると考えます。つまり、どんな風にテクノロジーが進化するのは分からないが、いつかはこうなるだろうーー例えばヒトゲノムがかんたんに読めるような世界が来るだろう、のようなーーと考えることによって、事前にテクノロジーと社会に関する議論を進められるというのです。
    自分のことで考えると、もし、男の娘(トランスジェンダー)に関わる遺伝子がすべて判明して、身体性に合わせる薬が開発されたとしたら……というSFを考えてみると、そんなことをしてよいのか、と怖くなりますね。しかし、そういう議論を今からしておかないといけないのではないかな、と思います。
    そのためには、生命科学に関する基礎知識を社会へうまく説明するのが科学者の義務なのだと思えます。高橋氏のような影響力のある方の活動に期待しながら、わたしもひっそりとそういう発信をしなければ。

  • ヒトのゲノムの全塩基配列がヒトゲノム計画で明らかになった。
    塩基配列というのは、DNAの構成物の一部である塩基の並びのことをいうのだそうだ。
    塩基には
    アデニン(A)
    チミン(T)
    グアニン(G)
    シトシン(C)
    の4種類があり、この並びが生物によって異なっている。
    このすべてが明確になれば、ヒトという生き物がどういうものかがわかるのではとの期待があったそうです。遺伝子が音楽であれば、ゲノムは音符のようなもの。
    ゲノム解析の研究者がジーンクエストという会社を作り、その代表取締役が著者である高橋祥子さんです。

    興味深い話の連続でありました。研究が進みゲノムに関する謎が解明されていくことで、社会課題の解決に結びつける可能性をみせてくれています。
    これからも、注目する著者の一人になりました。

  • ●人の肌細胞に6種類の遺伝子を導入することで、精子に近い性質の細胞を作り出すことに成功しました2016年。生殖能力が低下した100歳を超えてでも皮膚細胞から精子を作って子供を得ることができるかもしれません。
    ●線虫はがん患者の尿に集まる習性がある。何らかの匂いの物質を嗅ぎ分けることができると言うこと。トイレでがんのチェックができるようになるかもしれない。
    ●現在の人類のゲノムのうち、数%がネアンデルタール人に由来するとのことです。その遺伝子の中には、うつ病に関係するもの、タバコへの依存に関係するものがあることもわかってきました。
    ● DNAは物質の名称で、遺伝子は情報を指します。DNAが本なら、遺伝子はそこに書かれている物語の内容になります。
    ●糖尿病治療に使うインスリンが誰でも利用できるのは、インスリンを作る遺伝子を大腸菌などに組み込むことで、大量生産できるようになったからです。
    ●今は、ジーンクエストのような遺伝子解析サービスを受けるかどうか選択できますが、いずれは全員が自分のゲノムを知る未来がやってきます。そういう前提で、情報の取り扱いをどうするのか、と言う議論をする必要があります。
    ●ヒトゲノムは30億塩基対で遺伝子は約22,000個。
    ●イギリスで1歳の白血病患者の治療にゲノム編集が使われた。患者の細胞を攻撃しないよう免疫に関する遺伝子を不活性化させたり、抗がん剤に強くなるようにゲノム編集した。免疫タイプが一致するドナーが見つかるまでのつなぎの治療法だと位置づけられているが、経過は良好です。

  •  研修で企業訪問をすることになったため、事前学習のために購入。急激な変化を起こすテクノロジーへの向き合いかた、その中でも注目すべき生命科学の現状と展望について書かれている。
     テクノロジーの進歩の速度は予測できないが、進歩を前提としてどんな未来が実現されていくかの流れは予測できる。それを是として受け入れることで、豊かな暮らしができる、というのが主な主張かな。
     事業者側ではなく受け手側の視点で書かれているのは新鮮だった。新しいテクノロジーに拒否感を示す人が意外と多いというのは、この領域で起業した筆者ならではの実感と思う。特に生命科学の領域はセンシティブで難しいように思う。倫理的な議論の多い分野だし、今後の進歩のシナリオは地域性(価値観、宗教、法規制)や先駆けた導入者のやり方の巧拙によって変わってくるのだろう。うまく導入できずに一度拒否反応が根付くと、覆すのには時間がかかる。
     まだまだゲノム解析で明らかになる因果関係もいろいろ多いのだろう。生体情報の測定方法の進化とトランスオミクス(ゲノムを含むあらゆる生体情報を扱う研究分野)での知見の蓄積とで、健康管理やダイエットのノウハウは経験と勘の世界から統計の世界にシフトするのだろう。楽しみだ。

  • 生命科学=「生命に共通の法則性を解き明かし、それを活用する学問」または「ゲノムを中心として、生命を分子の集まりと見なして、生命が作るストーリーを紐解く学問」

  • ゲノム解析とは、ゲノム解析によって何が変わるのか、「私」にはどのような変化がもたらされるのか、についてわかりやすく書かれている。

    医療系の大学に通ってたので知っていることも多く、新しい発見はあまり無かった。

    遺伝子のみが自分の性格、見た目、病気の発症などを決定してるわけではなく、生体内での代謝や環境要因も大きく作用するため、必要以上に怖がり、思考停止するべきではないということはもっと広まって欲しい。

  • 作者の独特の書き方はなかなか癖になる。

  • ゲノム解析の詳しいところは流し読みになりましたが、どんな分野でも新しい技術開発とそれが世の中に与えうる影響について関心を持たないとと思った。
    世の中の変化の加速が加速していてぼーっとしていると置いてかれる。歴史も理科も学校で習ったことはどんどん古くなる。若い人から教えてもらう姿勢がいる。

  • Twitterでフォローしている著者に興味があって、本書を手に取った。文系で、生命科学の領域に全く知識がなく、最後まで読めるか最初心配だったけど、とてもわかりやすく現在のテクノロジーやゲノムについて理解が深まった。今後、テクノロジーによって生命が可視化され、医療や社会問題を解決していく未来が実現するといいなと思った。

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著者プロフィール

ジーンクエスト代表取締役。2010年京都大学農学部卒業。2013年東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻博士課程在籍中に、遺伝子解析の研究を推進し、正しい活用を広めることを目指すジーンクエスト(https://genequest.jp/)を起業。2015年同学博士課程修了。2018年株式会社ユーグレナ執行役員就任。受賞歴に経済産業省「第二回日本ベンチャー大賞」経済産業大臣賞(女性起業家賞)、「日本バイオベンチャー大賞」日本ベンチャー学会賞など。その他科学技術・学術政策研究所「科学技術への顕著な貢献2015(ナイスステップな研究者)」、世界経済フォーラム「Young Global Leaders 2018」、フォーブス30歳未満のアジアを代表する30人「30 Under 30 Asia」、Newsweek「世界が尊敬する日本人100」に選出など。著書に『ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか?』。

「2021年 『ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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