オープン&クローズ戦略: 日本企業再興の条件

著者 :
  • 翔泳社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784798136714

作品紹介・あらすじ

「ものづくり」や「匠の技」だけでは、もはや勝てない。市場撤退を繰り返し、長らく停滞してきた日本の製造業をはじめとする産業の再生の方途はあるのか?アップル、サムスン、インテル、クアルコム。これらの企業は利益を生み出すコア領域をクローズにする一方で市場との境界にオープン領域を設定し、多くの企業を巻き込みビジネスのエコシステムを実現している。本書は、欧米企業が生み出した周到な知財マネジメントとビジネスモデルの構造を分析し、長年の実証研究に基づく成果から、日本企業の本質的な課題を克服し、再び活力を与え、再成長のための戦略を提起する。

感想・レビュー・書評

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  • 月島図書館

  • 仕事上で付き合いのある方がこれをよく引用しているので改めて読んでみた。産業政策を考えるうえでは必要な視点。
    具体的にコンサルするときにどうするかは難しい。

  • 期待してた分だけ期待ハズレというところか。結局のところ何度も同じことが連呼されているだけで簡潔にまとめれば随分と薄くできるのではないか。

  • 標準化し国際分業が可能な領域におけるビジネスにおいては、オープン&クローズ戦略が重要になるという話。
    そのためにはクローズな領域はとしてコア領域を持つ必要があり、そこはクロスライセンスに持ち込まれないような徹底的に守るようにする必要がある。一方ですそれ以外の領域なついては、オープンイノベーションの活用による低コスト化やそれに伴う市場シェアの向上をはかり、その市場のコア技術を先導する権利を独占できる形にして持ち込むべきだという話。

    主題を伝えるのにこんなにページ数はいらないし、専門的な言葉をそのまま使いすぎていて、文章としてはイマイチ。疲れるし読みづらい。

  • 本書の技術だけでなく、知財や政策などかかるコスト全体を俯瞰して分析する着想に素晴らしさを感じた。また「技術とその関連情報の伝搬」のスピードという切り口での議論が、たいへん面白かった。さらに産業構造の歴史という視点からの、現在のエレクトロニクス産業を中心とした、組込みシステムによるハードウェアからソフトウェアリッチ製品の台頭による構造の急激な変化の説明なども、非常に納得性があり、よく理解することができた。現代は、溢れる情報量とそれを誰でも活用できる機会があるが故に、益々新たなビジネスモデルが生まれ、世の中の仕組みを容易に変える多様な変化社会が到来すると思われる。
    そんな様な事を考えるいいきっかけを本書はつくって下さいました。

  • 知財の話

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784798136714

  • 最近の流れでもある、企業内でクローズする部分とオープン化してエコシステムの構築を目指す部分を組み合わせる戦略に関する著作。
    著者は、
    ●オープン戦略
    製造業のグローバリゼーションを積極的に活用しながら世界中の知識・知恵を集め、自社/自国の技術と製品を戦略的に普及させる仕組みづくり
    ●クローズ戦略
    価値の源泉として守るべき技術領域を事前に決め、これを自社の外あるいは国外へ伝搬させないための仕組みづくり
    と定義しており、これらに関しては従来からも言われてきた内容とさほど差がないのだが、新しい概念として提起する「伸びゆく手」という概念がこれまでは明確に述べられることが少なかったと思う。

    オープン&クローズ戦略の本質はこの「伸びゆく手」であり、
    「産業構造が同じ製品や同じシステムで大規模な分業型へ転換する時、自社のコア領域からサプライチェーンに向けて強い影響力を持たせるための仕組み」
    と定義しているが、これを支えるのが知財マネジメントであり、それを成立させる契約マネジメントであると言う。
    つまり自社技術と他社技術をつなぐ境界に知的財産を刷り込ませて公開する知財&契約マネジメントが重要になるのだ。

    このような戦略が重要性を増してきた背景には、ソフトウエアリッチな製造業が増えてきたことも関係している。
    ハードウエア志向で自然法則に沿ったモノづくりと比べて、自由自在に設計ルールを変えられるソフトウエアが主流になることで、戦略的にも自由度が増えたということ、そして技術革新のスピードが早くなったことも影響している。
    ハードウエアがソフトウエアを使って容易に結合できるようになってきたので、その結合インターフェースをオープン化出来るようになったことが、この戦略の重要さを後押ししてきている。

    日本ではこの分野ではあまり成功していないので、本書に出てくる事例は参考になる。
    シスコのIOSオープン化の戦略ではI/Fを標準化するが、OS内部の改変権は契約・知財で縛りクローズ化しエコシステムを構築できたことが、IBMの攻勢に対することが出来た肝となっている。
    クァルコムの圧倒的な成功例は、事業を携帯電話に使用する半導体チップセットに特化することで、内部のコア技術を知財で守り、他社技術とつなぐインターフェースにも知財を摺りこんでオープン&クローズを徹底させている。
    しかもファブレス型の企業なので、大きな資産を持たずファウンドリーを自在に動かすことで、携帯市場のシェアを左右できるポジションを獲得していると共に、携帯を進化させる技術イノベーションを常に主導できるポジションをも手にしているのだ。
    これこそが著者の言う「伸びゆく手」そのものの戦略である。
    その他にも散々研究しつくされているアップルをこの戦略で紐解いたり、インテルのPC産業における例、日本発の珍しい事例である三菱化学の例など興味深い事例が多数掲載されているのは嬉しい。

    また新興国との競争を例にあげて、日本製造業が取ってきた特許出願・登録数に依存したクロスライセンスで打ち勝つ戦略が有効ではなくなってきていることにも言及している。
    オープン化が進むことで、どの企業も自社の特許だけでは製品を守りきれず、結局安価な価格でクロスライセンスを結ばざるをえない。
    そうなると製品全体での売上に比して、クロスライセンス料がインパクトを与えられなくなり競合に対する抑止力とは成らなくなると言っている。
    新興国にとっての良い特許とは、自社技術を守ることでなく、クロスライセンスに持ち込んで差止め訴訟を起こさせないものであり、ロイヤリティ支払を少なくさせるものである。
    この論は、自戒も込めて心に留めておくこととしたい。

    本書で論じられているオープン&クローズ戦略の在り方は、自身でも重要性を感じてきたことであるし、このようなやり方でないとこれからは勝ち残れなくなるのは明白だ。
    その観点からは事例も多いし、示唆に富む部分も多く参考になった本であるのだが、いかんせん同じ主張の繰り返しが多く読みづらく感じるのには参った。
    もう少しコンパクトにまとめることも出来たのではと思う。

    最後に本筋とは離れるのだが、本書でも触れているように現代の企業戦略は、従来の競争戦略のセオリーでは語れなくなってきていることをまたしても感じてしまった。
    例えば、ポーターのファイブフォース型ではオープン型のビジネスモデルは説明しきれないだろうし、競争優位の維持という基本が守りにくくなっている原題では、リーンに市場の状況を把握しながら柔軟に戦略を変えていくことが重要となってきている。
    それだけビジネスが複雑になってしまったということなのだろう。

  • CIECの妹尾堅一郎氏が推薦している。
    オープン&クローズ戦略を日本の製造業の
    現状と、欧米、東アジアの今元気がいい企業
    を例にとって解説。
    ある意味製造業である私がいる業界にも関係してくる
    のかもしれない。ただ、この本でも述べているように
    ソフトウェアリッチ型製品製造に関して当てはまると
    いうことであるが、私がいる業界はある意味ソフトウェア
    リッチ型ではない状況で、そういう意味では一番遅れている
    業界かもと思います。
    書いてあること(オープンとクローズをうまく設定し
    境界線を自社の競争優位を保てるように設計する)
    ということは非常に重要なことだと思います。
    ただ、それって所謂当たり前の話でもあるかと。。。

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著者プロフィール



「2015年 『オープン&クローズ戦略 日本企業再興の条件 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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