データが語る日本財政の未来 (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680331

作品紹介・あらすじ

150以上のグラフ・表を用いて楽観論を斬る!

政府総債務残高の対GDP比が、先進諸国で唯一200%を超えている日本財政。借金返済を先送りした結果、
日本は膨大な債務に足を引っ張られ、それが経済成長にも悪影響を及ぼしている。
こうした財政運営失敗のツケを、我々はそう遠くない将来に、通貨崩壊という形で支払うはめになるだろう。
公的データによる150以上のグラフや表を用いて日本財政の問題点を分析。財政楽観論を完全否定し、通貨崩壊へと突き進む日本の未来に警鐘を鳴らす。

久米 宏氏、推薦!
「『円の崩壊』は現実となるのか。私たちは薄氷の上を歩いている」
野口悠紀雄氏、推薦!
「国債がもたらす問題を基本に遡って指摘し、警鐘を鳴らす!」


(目次より抜粋)
第1章:国債とは何か
「60年償還ルール」という名の返済引き延ばし策/毎年100兆円を借り換えている ほか

第2章:財政赤字が増えた理由
バブル崩壊後に日本が低迷し続けた理由/リーマンショックにより奈落の底に突き落とされた日本経済 ほか

第3章:税収の国際比較
減税すれども、景気は回復せず/株で大儲けした人や大企業ほど、税負担が軽い ほか

第4章:アベノミクスの大失敗
アベノミクスとは何か/公的資金を使って無理やり株価や不動産価格をつり上げ

第5章:アベノミクスの失敗をごまかす「ソノタノミクス」
国際基準と無関係な部分でアベノミクス以降のGDPを異常にかさ上げ/高い名目賃金伸び率のカラクリ ほか

第6章:日本は資産があるから大丈夫?
日本の資産はほとんど売れないものばかり/問題なのは日本政府単体の収支

第7章:巨額の日銀当座預金がもたらすもの
膨らみ過ぎた当座預金の利払費が、日銀を直撃する/日銀に直接国債を買わせるとインフレが止まらなくなる恐れがある

第8章:歴史は繰り返す〜高橋財政〜
アベノミクスと高橋財政の共通点/戦争遂行を可能にさせた要因

第9章:今、そこにある未来
雇用が増えたのは、賃金が低く生産性を上げにくい労働集約型産業/たまりすぎた借金をどうすればいいのか ほか

●プロフィール
明石順平(あかし じゅんぺい)
弁護士。1984年、和歌山県生まれ、栃木県育ち。東京都立大学法学部、法政大学法科大学院を卒業。主に労働事件、消費者被害事件を担当。
ブラック企業被害対策弁護団所属。著書に、客観的なデータを用いてアベノミクスの問題点を指摘した『アベノミクスによろしく』(インターナショナル新書)がある。
ブログ「モノシリンの3分でまとめるモノシリ話」管理人。

感想・レビュー・書評

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  • 東2法経図・6F開架:342.1A/A32d//K

  • 日本の財政が恐ろしく危機的である事を徹底的にデータの裏付けをもとに語る。なぜ、これほど“異次元”の危機的状況にも関わらず、円という通貨の信用が維持され続けて円高のままなのかが最大の謎である。とてつもない円安となり、とてつもないインフレになると警鐘をならす経済学者も多くいるが、広く国民に響かないのはなぜなのか。嫌なことは見ないふり。とんでもない状況になるまで実感が持てず、動かないのは国民性なのか。「短期的に見れば合理的な選択」の積み重ねで、自分は悪くなと思っているリーダーたち。長期的な見通しは見ないふりを続けている日本。こんな悲惨な見通しの中でもちゃんと現実に向き合い、長期的な夢を抱いて困難な状況に全力で向き合っていけるようにしないといけない。いつまで衆愚政治を続けるのか・・・将来の明るい夢が語れる日本でありたい。

  • この本も類書ですでに指摘されてきた日本財政の未来について書かれた本ですが、私が読んだところでは以下の2つの特徴がありました。

    一つ目は、述べられていることが調査可能なデータに基づき、それを多くの図表で解説してある点です。本によってはデータの出所を巻末に明示しただけで、結論や推察したポイントのみを書いているものもありますが、理系出身で実験データを元に何が起きているのかを考える癖がついている私にとっては、この本の著者の明石氏の本は初めて読みましたが、納得感がありました。

    二つ目は、データが残っていないということで、私にとってはブラックボックスに包まれていた太平洋戦争前後の経済データが示されていた点です、このデータを見ると、それまでの通貨・紙幣の価値が100分の1になってしまった等と定量的に理解できて良かったです。

    以上を踏まえた上で、本の後半には日本財政の未来について予測が書かれています。コロナが蔓延している中、これを理由にして何でもありの状態に数年以内になりそうな気がします。自分で決断して数年後に起こることに対して冷静に対処していきたいと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・10年国債だと10年毎に6分の1ずつ返していく、こんなにゆっくり返すので借金がたまる(p18)

    ・大学卒業者に占める就職者の割合は、バブル崩壊前(1991)までは概ね上がり続けていたが、それ以降は急降下して一旦止まって(95−97)1999年から2003年にかけて55%程度に落ちている、この時期は就職氷河期と言われている(p86)

    ・バブル期の国内銀行貸付金残高は1997ねんには475兆円のピークを記録、それ以降減少に転じているが銀行破綻のピークと重なる。名目GDPも同じである、1997ねんに523兆円、リーマンショック2009年が470兆円、2015年で500兆円(p89)

    ・減税を繰り返した上に、総合課税でなく分離課税(株の売買は対象とならない、例外措置で適用)までしたので、所得税は国債的に比較して少ない(p118)大企業が持つ子会社からの配当金には課税されない、理由は子会社は(日本国以外で)法人税を払って残金から支払われるので二重取りとなるから(p120)

    ・日米マネタリーベースの対名目GDP比較は、2012年以降、アメリカ比較でもすごく大きい。2017年で日本は87%に対して、アメリカは20%程度。日本の金融緩和の規模は超異次元である(p134)マネタリーベースが増えているにも関わらず、マネーストックは変わっていない、これはお金を借りたい、という需要がないということ(p140)

    ・1954年の製造業名目賃金を100とすると、1970年には500、実質賃金は200以上、消費者物価指数よりも大きい(p147)

    ・日銀国債買入総額は2012年度は25兆円程度であったが、2015年には70兆円、日銀がいなくなれば日本の国債価格が大暴落するのは確実である(p159)

    ・2016年12月8日に内閣府はGDPの算出方法を変更し、それに伴い、1994年以降のGDPを全て改訂して発表した。(p162)持ち家の帰属家賃はGDPの1割程度を占める、帰属家賃とは、自分の所有する家について、発生したことにする家賃である。(p177)

    ・日本は新円切り替えを行ったのちに、厳しい増税、財政緊縮を行ってインフレが終息した。(p235)

    ・金本位制をとっていた時、当時円と金の交換比率は日本の実力に見合っておらず、円が高すぎる(50ドル=100円)であった、金本位制をやめることで金の量の制限を受けなくなるので通貨を発行できて円安(20ドル=100円)となった(p239)

    ・1939年に価格等党政令を施行することで物価が無理やり押さえ込まれていたが、戦争が終わると物価は急上昇した。1945年を100とした卸売物価指数は、1949年には6000、1951年には1万となり、100倍近くになっている(p245)

    ・政府債務残高対GDPは、1944年に200%を超えていたが、1946年には一気に50%に落ちている、戦後の極端なインフレにより借金を大幅に減額することに成功した(p246)

    ・日本の世帯数は2023年にピークを迎え、そこから減少へ転じていく。他でカバーできない限り、実質GDPも落ちていくことになる(p275)

    ・現在の日本政府の溜まりすぎた借金の処理方法(財政の立て直し)は、1)増税と緊縮財政、2)経済成長、3)極端なインフレである(p276)

    2021年1月17日作成

  • 経済政策の判断ってホント分からない。帯にもある「日本は絶対に財政破綻しない」って書いてある記事を読むとそんなもんか、と思うし、この本のようにそうじゃないでしょ、ってのもそうなのか!と思うけど、結局「痛い目に遭う」まで変えられないのが僕らなんだよなぁ〜。

  • 参議院選挙の投票日の今日、読了。
    投票率を見て、この本読み終えて、いろいろ絶望感。

  • 日本の財政が心配だ!アベノミクスは失敗だ!金融緩和やばい!という本。
    経済理論には首を突っ込まず、あくまでも国家財政面から心配をする本。
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    この著者は強烈な財政再建論者ということになる。消費増税にも賛成なわけで。
    上念、高橋、黒田、、いくらでもいるリフレ派、マネタリズム派への批判。
    あとマネタリズム批判だが財政出動派のリチャード・クーへの批判。
    とにかく財政がこのままでは心配だ!増税して出血を止めて再建しないと!というのが著者の意見かと思う。それはそれで弊害があるはずなのだ。
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    高度成長期の黄金時代を夢見てはいけないのと同じく、健全な借金ゼロの国家財政もまたありえない、そういう新常態の時代がやってきてるのかなと思う。
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    現実化しなかったリスクは語られないわけで、日本の積み重ねてきた失政は結果論というか、誰がやっても、違うことやっても、同じような境遇になってたろうなとは思う。

  • ★4.5(3.75) 2019年2月発行。日本財政については様々な本で議論されてきたが、これだけデータを使って語られると説得力がありますね。途中専門的な所があって、分かり難い箇所はあったが、これを読むと改めて日本の将来がぞっとしますね。政府の名目GDP成長予測は、かなり実現性が低いなぁと。今後、日本の人口が減っていき、高齢者人口が増えていくが、これを政府はどう支えていくのか?これまで財務省は一体何をやっていたのかと腹立たしくもあるが、一刻も早い対応が必要ですね。多くの人にこの事実を知ってもらわねば・・・。

  • 日本の財政状況、危機的状況について丁寧に説明してくれる本。
    書いてあることが論理的で根拠もしっかりしてる気がするので、本当にヤバイのだろうと思う。希望としては日本政府が実は更に上手でやばく無いというのを期待したいが、流石にあり得ないので未来は暗い。

    というわけで良い本だけど、暗くなるので星は3にしました。
    個人的には専門性を高めること、英語をちゃんと勉強すること、というのに少しモチベーションが出たので、自己啓発本としてもおススメ。

  • これだけのグラフやデータ量の文庫本は珍しい。

  • 日銀当座預金が巨額になると、インフレを制御することができない

    インフレのきっかけになる有力候補が円安

    日銀のやっていることを、世界から日本はインチキをしているとみなされ円の信用が落ちてくれば、円安となる

    全体の人口は減るが、高齢者人工は2042年まで増え続けてそこからやっと減り始める

    2018年から2025年まで345.7万人も生産人口が減る
    第2時対戦の日本の犠牲者数が310万人

    インフレは過去の借金に効くけど、未来の借金には逆効果になる

    1945年の65歳以上人口の割合は5% 2018年は 28%

    一つ確実に言えることは、先送りをしてはいけないことだ

    p247 政府債務残高の名目GDP等に対する推移
    今 200%超え1 1945年に相当

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著者プロフィール

弁護士。1984年、和歌山県生まれ、栃木県育ち。東京都立大学法学部、法政大学法科大学院を卒業。主に労働事件、消費者被害事件を担当。ブラック企業被害対策弁護団所属。著書に『アベノミクスによろしく』『データが語る日本財政の未来』(集英社インターナショナル新書)など。ブログ「モノシリンの3分でまとめるモノシリ話」管理人。

「2023年 『データで見る日本経済の現在地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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