ファシズムの正体 (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680195

作品紹介・あらすじ

グローバル資本主義が進展すればするほど、国家は「国民を束ねて動員型政治を展開する」ファシズムへと接近していく。果たして、日本でファシズムは起こり得るのか。佐藤優がファシズムの本質を説く。

感想・レビュー・書評

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  • 先日オウム真理教死刑囚7人の死刑が執行されました。
    麻原以外は、もともと真面目に誠実に生きてきた人なんだと思う。
    オウム真理教が何なのか、きちんと理解していれば、こんな道に入ることはなかっただろうし、あのような大事件がおこることもなかったかもしれない。
    そう思うと残念でなりません。
    偏らないで、いろいろな意見に耳を傾けるべきなんだと改めて思います。

    私のもとに、佐藤優さんの新刊の連絡がはいると、図書館で早めに予約、待っている人がいるので頑張って早く読みます。
    そんなふうにしてこれで43冊目です。
    ファシズムなんて興味なくて、なんで今さらと思いました。
    でも、やっぱり勉強する良い機会ととらえます。

    私たちはファシズムをナチズムや戦前日本の軍国主義でイメージしています。
    でも実はイタリアの統一からムッソリーニまでの歴史を知ることが大事。
    そして戦前の日本のファシズムは中途半端であり、
    それは別種の危機や脅威が存在するということもここで知ります。

    ファシズムは福祉国家論と親和的で、魅力があるからこそ危険なのです。
    この本で、イタリア・ファシズムについて学んだのは、
    そうした危険性を敏感に察知できるようにするため、だそうです。
    イタリア・ファシズムでは、国民の不安や不満につけこむように、
    国家を至高の価値とする連帯の思想が唱えられました。
    グローバル資本主義が席巻する現代社会でも、同じような国家主義的な連帯思想が各国で高揚しているのだと、佐藤さんは言います。

  • ファシズムとナチズムの違い、特徴はわかった。さらに理解を深めるには経済体制を細かく学習する必要がありそうだ。学んだ上で再度読んでみたい。

    イタリアファシズムを率いたムッソリーニが天才であることはわかった。

  • ファシズム=悪という、単純化した先入観を改めさせてくれる。先ず、我々がファシズムをナチズムと混同している事に気付かねばならない。その上で、本著はファシズムの開祖的な存在でもあるイタリア、ムッソリーニの思想を教示してくれる。ムッソリーニと言うと、世界史を学校でしか学んでいない人間からすれば、どうしてもヒトラーの二番煎じ的存在として、尚且つ、第二次世界大戦でも早々と降伏し、またはチャップリンに揶揄された、中途半端な存在として認識してしまっている。先ず、この見方が変わる。その視点の切り替えから広がり、合理的であるが故に、人間を機械の一部とした資本主義や共産主義の問題点を説き、ファシズムの危険な魅力に触れる。
    価値観が変わるという意味で、貴重な著書である。

  • 元外交官の佐藤優が、ファシズムの由来についてイタリアのムッソリーニを取り上げて書いた一冊。

    これまでファシズム=ヒトラーだと思っていたので、ムッソリーニについては全然知らず、勉強になった。

  • ファシズムの発生の歴史から整理してくれ、似ている言葉たち(ナチズム、全体主義、国家主義)を立て分けて理解できた。

    資本主義、社会主義といった固定化された考え方ではなく、流動的な考え方だと感じた。自由経済の中で景気によって、ファシズム的な発想が生まれやすくなっているので、現代を捉えるのに参考になる本だと感じた。

  • うーん、まあ、分かったような、分からないような…
    ナチズムとファシズムを混同してはいけないということは分かった。笑

  • ファシズムとはオーケストラのようなもの。という例えがわかりやすい。各々の役割は違っているが、一つの目標に向かって皆が協力して調和するような体制(ラグビーもコレに近い)。これは一見魅力的だし、ちょっと前に流行った「絆」というワードで簡単に取り込まれそうになる。ただし、協力や調和をしない・デキナイ人間は排除するという面もある。
    これを抑止できるのが、中間団体であると著者は説いているが、アトム化した社会とそれを補完するSNSという状況の中で、実体的な中間団体の形成は可能なのか?という疑問もあるが、バーチャル空間を肯定的に評価するなら、SNSからデューイの言う公衆的な団体が形成されて、それがクッション的な役割を果たす事が可能ではないのかと妄想するのだが。
    <追記>2年半ぶりに再読。ファシズムの原点としてヒトラーよりもムッソリーニにフォーカスを当てている。パフォーマンス的にはヒトラーが目立ち、ムッソリーニは概して日陰の存在ではあるが、思想的・理論的にはムッソリーニの方が優れているのでもう少し注目されてもいいように思える。

  • 新刊でると時々購入する作者の一人。実際にあって話をしたこともある方なので、本と人柄がマッチする。ファシズムを、ナチズムを混同することが多いが、作者は分かりやすく違いを定義づけしている。民主主義と独裁は表裏なのだと改めて思う。

  • アメリカトランプ政権の白人至上主義的な「アメリカファースト」政策。

    イギリスのEUからの離脱。

    フランス、ドイツ、オーストリアをはじめとする欧州諸国での極右勢力の台頭。

    筆者はそこに、「ファシズムが入り込んでくる可能性は十分に考えられる」と語る。

    日本とて例外ではないのだと。


    では、「ファシズム」とは何か?

    多くの違った現象をひとくくりにしてレッテル貼りするような粗雑な理解では、20世紀ファシズムの持つ「魅力と危うさ、そしてその犯した過ち」を正確に評価することはできないのだと。

    一般的にあまり知られることのない文献をもとに、ファシズムの本質を解き明かしていく。

    そして、現代日本においては「中途半端なファシズムのなかに、本来のファシズムとは別種の危機や脅威が存在する」と説く。

    併せて、「完全なファシズム国家」といえる北朝鮮への対応について思慮をめぐらせていく。

    「同じ内容の話を違った視点から眺めて知識を積み上げていくことは、学びにとって非常に重要です。これまで身につけた知識と関連する話が出た際に、一度振り返ってみることで、学んだ内容が『重ね塗り』されます。ファシズムの内在的論理は非常に複雑なので、『器に何度も漆を重ねて塗る』ように知識を上積みしていかなくては、理解を正しく深めることはできないのです」

    正しい知識とバランスある思考こそが、現在と未来を切り開いていく羅針盤となる。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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