戦争と農業 (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680157

作品紹介・あらすじ

トラクターと戦車、化学肥料と火薬、農薬と毒ガス。農業を変えた発明は、戦争のあり方をも変えた。増大する人口を支えるシステムの闇に光を当て、飽食と飢餓の狭間で、危機に瀕した食の本質を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 小林宙の本に寄稿文を乗せた人の本

    978-4-7976-8015-7.  c0263¥720E

    戦争と農業
    2017年10月11日 第1刷発行

    インターナショナル新書015.
    著者:藤原辰史(ふじはら たつし)
    発行所:株式会社集英社インターナショナル

    ---カバー袖より---
    農作業を効率的にしたい。その思いが二十世紀の農業技術を飛躍的に発展させ、同時に、そのぎじゅが戦争の在り方をも変えた。
    トラクターは戦車に、化学肥料は火薬になった。毒ガスは平和利用の名のもと、農薬に転用される。
    本来人間の食を豊かにするはずのテクノロジーの発展が、現実には人々の争いを加速させ、飽食と飢餓が共存する世界を作った。
    この部条里奈状況を変えるために、私たちにできることを考える。
    ---------------------------------

    はじめに
     1 農業の技術から見た二十世紀
     2 暴力の技術から見た二十世紀
     3 飢餓から二十世紀の政治を問う
     4 食の終焉
     5 食と農業の再定義に向けて
     6 講義のまとめと展望
    終わりに 主要参考文献

    --------------------
    手にした理由は 小林宙さんの本を読んで、おもしろかったので、その本の帯を欠いた人だという情報から、手にしてみました。著者さん検索をして読んでみました。
    途中出てくる本は 「おいしいハンバーガーのこわい話」 以上に多岐にわたる事柄があって、怖くなりました。
    さて、自分にできることはなんだろう?
    -----------------------

  • ”戦争と農業”その歴史を通して、農業の不自然な状況と食から見た世界のアンフェアな仕組みを明らかにしている。
    本書は市民への講義を構成したもので読みやすい内容です。

  • NDC分類 611.3

    「農作業を効率的にしたい。その思いが二十世紀の農業技術を飛躍的に発展させ、同時に、その技術が戦争のあり方をも変えた。トラクターは戦車に、化学肥料は火薬になった。逆に毒ガスは平和利用の名のもと、農薬に転用される。本来人間の食を豊かにするはずのテクノロジーの発展が、現実には人々の争いを加速させ、飽食と飢餓が共存する世界をつくった。この不条理な状況を変えるために、わたしたちにできることを考える。」

    目次
    第1講 農業の技術から見た二十世紀
    第2講 暴力の技術から見た二十世紀
    第3講 飢餓から二十世紀の政治を問う
    第4講 食の終焉
    第5講 食と農業の再定義に向けて
    第6講 講義のまとめと展望

    著者等紹介
    藤原辰史[フジハラタツシ]
    京都大学人文科学研究所准教授。1976年、北海道生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程中途退学。京都大学人文科学研究所助手、東京大学大学院農学生命科学研究科講師を経て現職。専門は農業技術史、食の思想史、環境史、ドイツ現代史

  • 戦争と農業は切っても切り離せない。

    トラクターが戦車に、化学肥料が火薬に、毒ガスが農薬に転用される経緯は非常に興味深かった。
    また、戦時中の「食糧」というものの立ち位置も重要なものであるが故に、兵糧攻めができた。

    兵糧攻めというものを詳しく学べたのは非常に大きかった。
    食糧を管理下に置きたがる権力者の生々しさも学べた。
    なぜそんな酷いことができるのか。読むのが辛い部分もあった。
    非人道的であるが、それをおかしいと思えなかったのは、結局は民主主義の欠点でもある。

    大衆の意見が正義とされる。

    今自分が何不自由なく食事にありつけるありがたさを痛感する一冊でした。

  • ボッシュ・ハーバー法によって空気からアンモニアを作成し化学肥料が進展し、それが毒ガスに転用された。トラクターのキャタピラーは、塹壕への攻撃に転用された。
    自分にはなかった視点で刺激的だった。

  • 民主主義について考えさせられました。
    国が「民」を選ぶ -個人が選んでいるように思うけれど、社会が学校が国が個人、民を選んでいる
    黒田喜夫『死にいたる飢餓』
    農本主義 -農の営みは国の基礎であるというイデオロギー
    誰もが食べられるという当たり前を基盤とする世界はいまだ実現していない

  • 薄い本ながら超絶面白い。さすが藤原先生です。より詳細の感想を後日書く予定。

  • 『#農業と戦争』

    ほぼ日書評 Day398

    20世紀の人口増加を支えた4つの技術、すなわち農業機械、化学肥料、農薬、そして品種改良。
    にたようなことが家庭内のタスクにも当てはまるのだが、家電の発達により、以前は毎日しなくてよかった家事を毎日するようになった結果、「お母さん」は逆に忙しくなった…という逆説は興味深い。

    農業の機械化、トラクターの普及が進んだため、農業用の家畜が減り、資料となる糞尿が減った。それが化学肥料を発達させる要因となった。
    水俣病を引き起こしたチッソ社も元は化学肥料の生産を創業とする会社。効率や利便性と引き換えに、環境破壊が進む。その最たるものが農薬。
    品種改良に遺伝子操作が加わったことが未来に与える影響は如何ほどのものになるのか。

    第一次大戦からは、トラクターに使用された「キャタピラー」の技術が戦車に転用され、化学肥料に不可欠なアンモニア生産技術は火薬製造に応用され、これまでにない大量殺戮兵器と総力戦の時代となった。
    一方、同時期に開発された「毒ガス」はプランテーションにおける害虫駆除に用いられるようになり、「農薬」へと名前を変えた。

    第3講以降は、かなり著者自身の主張が前面に出るので、読者の好き好きかと思うが、サラッとチェックしておいて損はなかろう。

    https://amzn.to/3eLHkQX

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1講 農業の技術から見た二十世紀/第2講 暴力の技術から見た二十世紀/第3講 飢餓から二十世紀の政治を問う/第4講 食の終焉/第5講 食と農業の再定義に向けて/第6講 講義のまとめと展望

  • トラクターは戦車、農薬は毒ガス、肥料は火薬、人間の考えることは恐ろしい。窒素肥料と水俣病とか、悲しい。
    「人間は食べて出すものである」それもたくさんの微生物の力を借りて。私たちは環境とつながっている管みたいなもんなんだ、と意識すると普段の生活から国の政治や経済を考えざるを得なくなる。

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著者プロフィール

1976年生まれ。京都大学人文科学研究所准教授。専門は農業史、食の思想史。2006年、『ナチス・ドイツの有機農業』(柏書房)で日本ドイツ学会奨励賞、2013年、『ナチスのキッチン』(水声社/決定版:共和国)で河合隼雄学芸賞、2019年、日本学術振興会賞、『給食の歴史』(岩波新書)で辻静雄食文化賞、『分解の哲学』(青土社)でサントリー学芸賞を受賞。著書に、『カブラの冬』(人文書院)、『稲の大東亜共栄圏』(吉川弘文館)、『食べること考えること』(共和国)、『トラクターの世界史』(中公新書)、『食べるとはどういうことか』(農山漁村文化協会)、『縁食論』(ミシマ社)、『農の原理の史的研究』(創元社)、『歴史の屑拾い』(講談社)ほか。共著に『農学と戦争』、『言葉をもみほぐす』(共に岩波書店)、『中学生から知りたいウクライナのこと』(ミシマ社)などがある。

「2022年 『植物考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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