知のトレッキング叢書 新・ワイン学入門

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797673128

作品紹介・あらすじ

第七次ワインブームを牽引する日本ワインは確実に美味しくなったが、その理由は? 日仏のワインの歴史、世界の飲食スタイルの違いなどで検証する新しいワインの見方に、目からウロコ、間違いなし。

感想・レビュー・書評

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  • 流し読み。ワインへの偏愛からか書いてることに大分偏りが感じられて乗れなかった。「主食を潰して創る貴重な日本酒がそれだけを味わいつくす致粋飲料だとすれば、食中酒であるワインでは酔いは結果に過ぎません」とか他の酒をこき下ろしてワインを持ち上げるスタイルが多くてウンザリする。ワインに酔うのは結構だが、やるなら自分の中、広げてもワインの中で完結させてほしい。他所に絡んでしまうと、それ酔いすぎであり、悪い酒だ。うまい酒も不味くなる。ワインも嫌いになっちゃうよ。というか、こうゆう一部のワイン通の傲慢な態度と、それに付随しがちなナルシスティックな感じが、ワインへの食指を妨げているふしもある。
    蜂印香竄葡萄酒(はちじるしこうざんぶどうしゅ。日本初ヒットの甘味葡萄酒)は飲んでみたい。潤肺露や偽電気ブラン的な雰囲気を感じる。一瞬潤肺露の元ネタかと思ったけど、漢方の百潤露(ひゃくじゅんろ)の方が妥当かなと思う。それは別として、復刻版もう1回でてほしい。赤玉ポートワインの日本初女性ヌードポスターの話も面白かった。

  • ワインの具体的な品種や産地ではなく、もっと広範な視野からワインの歴史や文化について論じている。
    ブルゴーニュは地理的に川から遠く、必然的に高品質で高価格なワインを選ばざるを得なかった。同様に似たような地域でも税制が違うと、不利になった側の地域が高価格戦略を選び、現在でもその地位を踏襲している場合がある。また、歴史的に長くイギリス領だったボルドーなど、政治的理由でワイン生産が優遇され、現在に至っている地域もある。
    翻って日本でも近年ワイン生産が盛んになっていて、一般に日本の土壌はワインに適さないという意見もあるが、それは飽くまで俗説であり、発展の余地は大いにある。

  • 「学」を名乗っているけど、堅苦しい評論が続くわけではなく、うんちくが縷々語られるわけでもなく、軽いエッセイというわけでもなく、これらの中間を進むような本。
    文章がうまいので読みやすく、読み物として秀逸。

  • テロワールがワインの味を決めるとフランスワイン関係者は吹聴しているが、実際はそんな単純なものではなく人の努力と歴史がその味わいを形作ってきたとする。川沿いに有名な産地があり、川と土壌が関係するとされるが単純に出荷に中世は有利だった。しかし、川の近くは大量生産低品質ものとなりがちで立地が不利なところは高級かという差別化戦略をとる。
    また例えばボルドーはいい土地ではあるが、イギリス領としてその政治的なポジションからボルドー特権と呼ばれる排他的な権力を持っていた。たとえば川の中流にあって上流のライバル産地のの積み下ろしをコントロールしていた。同じような土壌を持つ場所を調べてみるといくらでもそのような人為的な例が出てくる。
    つまり日本でもいいワインは製造可能。食用栽培が多かった山梨は昔の伝統が邪魔しているが、それがない長野や北海道では完成度の高いものが出てきている。また日本もこの2−30年でワインの消費者における受容が進み、例えば食事との合わせ方日本酒で吟醸酒が主流になるなど、文化として日本ワイン成長の土台ができている。

  • 日本経済新聞社


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    あとがきのあと「新・ワイン学入門」 福田育弘氏 フランスでなくても造れる
    2016/1/24付日本経済新聞 朝刊

     「ワインはやっぱりフランス」。そう考えている人が多いかもしれない。ボルドーやブルゴーニュといった生産地の名前は多くの人が知っている。それに比べて日本のワインはどうか。自然条件が違うのだからフランスには到底かなわないだろう。そう思っている人が本書を読むと、目からうろこが落ちるはずだ。







     「いいワインはどこででも造れます。北海道でも沖縄でも」。日仏のワイン文化史を研究し、もちろんたらふく飲んできた人の言葉だから説得力がある。「フランスは生産の適地だから良質なワインができたのではなく、造る人々の意欲と努力のたまものなのです」


     本書は、必ずしもブドウの生育に適しているとはいえないボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュがワインの有力産地になった経緯から説き起こす。それをふまえて日本のワイン生産の歴史をひもとき、近年のワインブームが日本人の飲食文化をどのように変えてきたかを詳説している。ワイン本といえば個別の銘柄を解説するカタログ的なものが多いが、本書は社会学的にワインを論じる視点が新鮮だ。


     もとは現代フランス文学の研究者。「それが留学中にワインの魅力にはまってしまって……。左翼的な前衛文学が専門だったのに、ガストロノミー(美食)の研究に行ってしまったから、周りは理解に苦しんでいると思います」。妻はソムリエ。自宅のワインセラーには常時二百数十本のワインが入っているというから筋金入りだ。


     日本のブドウを使った「日本ワイン」をよく飲むようになったのはこの5年くらいだという。「ブドウの栽培から手掛ける造り手が増え、かつてとは比較にならないくらいおいしくなった。日本人もフランスワイン信仰をそろそろ脱してもいいでしょう」(集英社・1200円)




    (ふくだ・いくひろ)1955年愛知県生まれ。早大教育学部教授。著書に『ワインと書物でフランスめぐり』『「飲食」というレッスン』、訳書にR・ディオン『ワインと風土』など。


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著者プロフィール

早稲田大学 教育・総合科学学術院 教育学部 複合文化学科 教授。専門は文化学、フランス文化・文学。
主な著書に『ともに食べるということ』(弊社刊【日本経済新聞 書評掲載】)、『新・ワイン学入門』(集英社インターナショナル)、『「飲食」というレッスン』(三修社)など

「2023年 『自然派ワインを求めて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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