- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784797673050
作品紹介・あらすじ
TV、ラジオで活躍する気鋭の論客が困難を極める日韓関係とテロの時代を柔らかな視点で読み解く、新鮮で感動的な時評集。朝日新聞「WEBRONZA」の連載、政治学者の姜尚中氏との対談を収録する。
感想・レビュー・書評
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内容は日韓関係65%、それ以外の国際問題と日本社会が15%ずつ。2011年~15年の時事に関するコラムと対談をまとめたものなので、一冊の本として必ずしもまとまりがあるわけではなく、日韓関係については現在と状況が異なる部分もある。筆者が日米をよく知る韓国人である以上、やはりこの本の特色は韓国人から見た日韓関係の部分だろう。
中身は、日本国内の嫌韓やそれを煽るメディアへの批判、交流の重要性などごく普通であり、学術的分析があるわけでもない。ただ、この「普通」が「嫌韓」「反日」の人々には届きにくくなっているのだろうなとは思う。
なお2015年時点の対談の中で、姜尚中氏は日韓関係について「今が異常ならばいつが正常だったのか」「(韓国で市民社会が台頭し、対立のある)今の方が括弧つきで『正常』だと言えないわけでもないと思います」と述べているが、この問いには自分も読んでいて答えに窮した。 -
著者の金惠京(キム・ヘギョン)氏は、1975年にソウルに生まれ、高校卒業後、明治大学、早稲田大学に留学し、米ジョージ・ワシントン大学、米ハワイ大学等を経て、現在、日本大学総合科学研究所の准教授を務める国際法学者。
本書は、朝日新聞社の言論サイト「WEBRONZA(ウェブロンザ)」に2011~2015年に連載されたものに、姜尚中との対談と一部の書下ろしを加えた評論集である。
両国に軸足を持つ著者が、昨今の日韓関係を様々な角度から分析し、「二国間の歴史というものは、良い時と悪い時を繰り返しながら前進していくもの」と言いつつ、関係改善のためにお互いになし得ることを、冷静にかつ温かい目をもって語っている。また、テロとの戦い、イスラム国等に関する論考もあり、著者が日韓関係についても、国際法学者の立場で、国際関係の幅広い視座から捉えていることが窺える。
高校時代に日本に憧れ、「緻密さや穏やかさを保ちながら、世界の最先端を行く日本は、とても魅力的に映った。先進国でありつつも、「何か改善できる点があるのではないか」と常に考え、外からの指摘を貪欲に受け入れて自らを律する姿勢は、成熟した大人を思わせた。一方で、平和が乱されようとする際には、他国から何をいわれても自分を貫く芯の強さを見せることもあり、柔和さと良い意味での頑固さが同居する姿はアジアで異彩を放っていた」と語り、「今、私が望んでいるのは、韓国をはじめ各国にいる若者たちが、昔の私のような憧れを持つ日本ではあってほしいということである」という著者の想いが伝わる良書である。
『柔らかな海峡』という書名と温かい表紙のイラストも印象的である。
(2015年12月了)