〈おんな〉の思想 私たちは、あなたを忘れない

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797672510

作品紹介・あらすじ

フェミニズムは賞味期限をすぎただろうか? それとも、そこから受け取るべき文化的遺産はあるのか? 過激だけれど知的興奮がいっぱい。東西「知」の名著を上野千鶴子が読みなおす。

感想・レビュー・書評

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  • #英語 Women's Thoughts: We Will not Forget You by UENO Chizuko

  • 性と愛と生殖を三位一体とするロマンティックイデオロギーを解体して考えるみるのは良い考えだと思った。

    フェミニズムに関しては男女平等の実現を支持すること、くらいにしか理解がなく、体に違いがある以上、完全な平等は無理じゃないのか、と引っかかっていた。また、現代では女性差別はほぼ見ないと思うほど興味がなかった。

    本書でリブとは男なみになりたい女の権利獲得運動ではなく、男の論理からの解放運動である、という説明で腑に落ちた。
    また、女性への負担の押し付けがあまりに自然すぎて、自分が知らないうちに利益を享受し、無意識のうちに差別をしていたのだと知った。

  • 「便所からの解放」
     これは、男性の便所としての女性からの解放という意味であり、かなり刺激的なスローガンである。フェミニズムとは女性が主体を獲得する運動である。

     現在は、男女雇用機会均等法や人権意識の定着によって、女性の人権は当たり前にあるものとなっている。けれど、歴史的には、そうなったのはここ100年ぐらいの間であった。それまでは、女性に主体はなかったし、ゆえに女性の言葉もなかった。
    そんな女性差別というよりも女性排除の社会の中で、まずは女の言葉を、そして女の主体を獲得する運動がフェミニズムである。なので、女性の主体性を奪う制度や思想に反対を表明するのがフェミニズムであり、獲得すべき主体性には倫理とか道徳といったフィルターはない。つまり主体的に意思決定する権利を獲得しようとしている。

     フェミニズムの歴史も、哲学の潮流によって時代時代で変わっている。構造主義や脱構築主義によってジェンター理論も変遷している。これはジェンターが人工的に構築されているということでもあり、裏を返せばジェンダーの足元の危うさでもある。

     二次元アニメが過剰に性的だと噛み付いてる人たちは揃ってフェミニストを標榜してるけど、主体性を獲得することと客体的表現を規制することにどんな関連があるのだろうか。
    主体として在るためには、生産手段を持たなければならない。それは、所有された女からの解放である。そして、性的消費される要素それ自体は女性が有する生産手段の一つである。意図的にその生産手段を使う女性がいても非難はされない。
    それが実際の女性の場合は、その客体的表現が自主的か否かを図ることができないため噛みつけない。しかし、二次元アニメは違って、そもそも主体的女性が存在しない。なので確信持って噛み付いたのだ。そこにその表現が男性によって行われたからではなく、ただ客体として切り取られたことに噛み付いたのだ。

  • これはなかなかいい本だった。私は長く、上野さんのいい読者ではなかった。面白いと思うものもあるけれど、たいていは「なんだか文章が面白くないんだよなァ…」とか言いながらダラダラ読んでいるにすぎなかった。たまにグッと胸を掴まれるようなことがあっても、それは一瞬で過ぎ去ってしまうので、まあ総体的に上野さんに大きい影響を受けたという感じではないと思う。
    しかし、この本には最初から最後まで心を捕まれ続けた。それはなぜかというと、この本には「私の血となり肉となった思想を次の世代へと手渡したい」という痛烈な思いがあったからだと思う。上野さんの、この「次の世代へ」という意識は恐らく、長い女性たちの苦闘の積み重ねの上に今があり、その苦闘の記憶を継承していかなければ私たちは容易に奪われるという危惧があるのだろう。そして、すべての人文知は読まれなくなれば終わりである。思想として引き継ぐためにも、そもそもマイノリティー性・周縁性の高いジャンルであるフェミニズムの知を読み受け継ぐ次世代を作ることがどれだけ大切かということ。私は手渡されるバトンを、きちんと受け取りたいのだと認識した。
    そして同時に、私が上野さんのいい読者ではなかった理由が、上野さんのこれらの著書との向き合い方によって見えてくる。いろんな意味で面白い読書だったし、次に進むべき指針が見えたように思った。

  • 先人たちの身もだえしながら生み出された言葉と指し示された灯。先人達の苦悩を切に感じ、ひとつひとつが胸にずしんときた。
    ジェンダーについては、なんとなく雰囲気的にしかわかっていなかったので外から植えつけられた言葉というイメージがあった。けれど、それ以前から日本でもすでに格闘し言葉として発した人がいた、のだという感慨と感謝。
    言葉として表わされることで意味を知り世界を知る。十分に刺激的でわくわくしながら読めた。
    ホモソーシャルとホモセクシャルについてはなるほどと膝を打つ感じ。
    「服従が抵抗に、抵抗が服従に」と「境界を撹乱する」は、これもなるほどと得心した。問題を解き明かす鍵にはなる。けど、難しい。私はどうあるか考えていきたい。自分の限界を知りつつ前進していけたらとは思う。
    「書物は読み続けることで古典となる」
    まずは、ここにとりあげられた本を読んでいってみたい

    目次
    第一部 <おんなの本>を読み直す
     産の思想と男の一代主義 
      森崎和江『第三の性』-はるかなるエロス
     共振する魂の文学へ
      石牟礼道子『苦界浄土』-わが水俣病
     リブの産声が聴こえる
      田中美津『いのちの女たちへ』-とり乱しウーマン・リブ論
     単独者のニヒリズム
      富岡多恵子『藤の衣に朝の衾』
     近代日本男性文学をフェミニズム批評する』
      水田宗子『物語と反物語の風景』-文学と女性の想像力
    第二部 ジェンダーで世界を読み換える
     セックスは自然でも本能でもない
      ミッシェル・フーコー『性の歴史Ⅰ 知への意思』
     オリエントとは西洋人の妄想である
      エドワード・W・サイード『オリエンタリズム』
     同性愛の恐怖と女性嫌悪
      イブ・K・セジウィック『男同士の絆』
        -イタリア文学とホモソーシャルな欲望
     世界を読み換えたジェンダー
      ジョーン・W ・スコット『ジェンダーと歴史学』
     服従が抵抗に、抵抗が服従に
      ガヤトリ・C・スピヴァク『サバルタンは語ることができるか』
     境界を攪乱する
      ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル』
       -フェミニズムとアイデンティティの攪乱
     

  • 森崎和江『第三の性』、石牟礼道子『苦海浄土』、田中美津『いのちの女たちへ』といった日本生まれの書を「第一部・〈おんなの本〉を読みなおす」として、フーコー『性の歴史Ⅰ知への意志』、サイード『オリエンタリズム』、セジウィック『男同士の絆』などを「第二部・ジェンダーで世界を読み換える」として、フェミニズムのバックボーンとなった名著を紹介している。
    挙がっている名著はどれも読んだことがないけれど、それでも敬愛のこもった上野氏の文章から、各人の思いまでストレートに伝わってくるかのようだ。きゅうくつななかで、自分の思いを言葉で翻訳しようとした人たちの本気さが伝わってくる。文章ことばって、もともとは男社会でつくられたものだから、それをツールにして女性が思いを表現していくのって、それだけですでにハードルがあると思う。でも、それに真っ向から立ち向かったり、軽々と発想を転換させたからこそ名著が生まれたのだなと理解。あとがきがいい。

  • 新宿で時間潰すときに紀伊国屋で読む本の第二冊目。

    先週の月曜日、森崎和江さんと石牟礼道子さんの項読了。

    そうか最近読んだばっかりだった「からゆきさん」の森崎和江さんはこんなすごいひとだったのね。

    そして「からゆきさん」が初めて彼女が自分の言葉を見つけ書いた本なんだ。

    石牟礼道子さんの「苦海浄土」。まさに石牟礼さんが水俣のひとたちの言葉を心で受け取って書いた作品なんだ。

    再読したらまた広がってくんだろうな。

  • リブ、フェミニズムの現在[評者]三上治=評論家(東京新聞)
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013081102000171.html

    賞味期限の無いものは無いですから、、、でも、新たな光を当てるコトで再生する場合もありますよね。。。

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    「フェミニズムは賞味期限をすぎたのだろうか? それとも、そこから受け取るべき文化的遺産はあるのか?
    過激だけれど知的興奮がいっぱい。東西「知」の名著を上野千鶴子が読みなおす。 」
    <おんな>の思想 « 集英社インターナショナル 公式ブログ
    http://www.shueisha-int.co.jp/blog/?cat=81

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著者プロフィール

上野千鶴子(うえの・ちづこ)東京大学名誉教授、WAN理事長。社会学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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