宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八 (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797388503

作品紹介・あらすじ

銀河系には約1000億個もの惑星が存在すると言われています。そのうち人類が歩いた惑星は地球のただひとつ。無人探査機が近くを通り過ぎただけのものを含めても、8個しかありません。人類の宇宙への旅は、まだ始まったばかりなのです――。

本書は、人気コミック『宇宙兄弟』の公式HPで連載をもち、監修協力を務め、NASAジェット推進研究所で技術開発に従事する著者が、やさしくかみくだきながら「人類の謎」に挑む、壮大な宇宙の旅の物語です。

人類が解き明かしてきた謎とは? 「地球外生命や地球外文明は存在するのか? これからの宇宙探査はどうなる……? テクノロジーとイマジネーションを駆使して、独自の視点で語るエキサイティングな書き下ろし!

感想・レビュー・書評

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  • 宇宙に関心があるかと言われれば無かった。生命なんていないと思っていたからだ。ところが本作を読むと「もしかしたら・・」と思わされてしまった。

    本作は技術者の開発に賭けるノンフィクションさながらのドラマでいきなり心を掴んでくる。2人の技術者のどちらが先に人工衛星という宇宙への一歩を踏み出すのかという物語だ。

    生命を産み出す条件は2つあるという。水と火山による熱だ。木星と土星のいくつかの衛星でそれらが発見された。それだけでなく、一つの銀河には1,000億の惑星が存在し、銀河もまた1,000億ある。つまり、確率的に考えれば地球で起きた現象が1,000億×1,000億の惑星の中にあるかもしれないというのである。

    宇宙という未知と出会って己の無知を知らされた。2020年火星に探査ローバーを送るということで私も今からワクワクしている。知ることはワクワクの一歩だと改めて感じさせてくれた一冊だった。

  • 2020年12月10日読了。

    NASAの研究機関JPLに現役で勤務されている小野雅裕氏による宇宙探査の最前線を描いた本書。

    人類がいかにして宇宙を目指すようになったのか。
    どうして携帯もカーナビも無いような時代に、アポロは月へ行くという大事業を成し遂げる事が出来たのか。
    太陽系の8つの惑星やその衛星がどのような星なのか。
    そこには『何かいるのか。何がいるのか。それとも我々は孤独なのか。』
    系外惑星の探査、地球外文明とのコンタクト…
    等々、書き切れない程の内容が詰まっている。
    その中で、著者が始めから終わりまで伝えている事は『イマジネーション』の大切さ。

    ●「SFの父」と呼ばれたジュール・ベルヌの『地球から月へ』という本を読んだ三人の少年がイマジネーションの力に突き動かされ、空を目指すようになり、やがて「ロケットの父」と呼ばれる研究者となった。
    ●アルバート・アインシュタインの言葉
    「イマジネーションは知識より大事だ」
    知識を身につける事は大事だけれど、その知識を学ぶ原動力となるものこそがイマジネーションなのだと思った。
    ●宇宙への旅を可能にしたロケットの原点は、ナチスドイツ・ソ連・アメリカが戦争で人の命を奪うために創り出したロケット兵器だった。
    ●ソ連は人類史上初の人工衛星『スプートニク』を打ち上げ、「地球は青かった」と名セリフを言った初の宇宙飛行士ユーリィ・ガガーリンを宇宙へと送った。
    ●アメリカのNASAは『アポロ8号』を月軌道へと打ち上げ、『アポロ11号』で人類初の月面着陸を果たした。
    ●アポロ計画にはおよそ40万人もの人が関わり、技術者や科学者や宇宙飛行士だけではなく、縁の下で支える事務員や建設作業員、運転手など多くの無名のヒーロー達の力で成功を収めた。
    ケネディ大統領がNASAに視察に訪れた時、清掃員に「あなたの仕事は?」と聞くと、その彼は誇らしげに「私は人類を月に送るのを手伝っています!」と答えたという。
    ●有名なCEOが行う華々しいプレゼンテーションではなく、日々技術者が向かう散らかった机こそが、未来が生まれる現場である。
    ●イマジネーションとは見た事の無いものを想像する力。常識の外に可能性を見出す力である。
    今、存在するものしか見えなければ、新技術は決して生まれない。
    ●人類は太陽系の惑星全てに探査機を送ったが、この銀河系には約1千億の惑星があると言われている。人類はまだ1千億の8しか知らない。
    ●地球をテニスボールの大きさに縮め、掌に置いたとすると、太陽系の一番遠い惑星・海王星は23kmの距離にあるバスケットボールである。
    掌の上のテニスボールと23km先にあるバスケットボールの間に広がる虚空が我々が生きる太陽系空間。
    ●無知の自覚は無知を克服する出発点。
    知らないと言うことを、まずは知る。
    ●地球外生命探査におけるリスクは、地球から持ち込んだ微生物によって異世界を汚染してしまうリスクである。
    地球の生命体が他の天体に持ち込まれ、繁殖してしまったら、現地の生態系を破壊し、発見された生命が地球外生命なのか、地球の生命なのか区別がつかなくなってしまう。
    そして、2度と元に戻す事は出来ない。
    その逆も然りで、他の天体からの『逆汚染』のリスクもある。
    外来種による生態系の破壊などよく耳にするが、宇宙規模でも同じ事が言える事を今まで考えた事がなかった。
    ●かつて新大陸を発見して乗り込んできた人間が持ち込んだ病原菌が原因でパンデミックが起きたり、逆に新大陸からの新種の病気が流行したりと、未開の地・未知の病原菌に対するリスクを過去の過ちから学び、宇宙条約で『宇宙空間の有害な汚染・地球外物質の導入から生じる地球環境の悪化を避けるように』と定められている。
    コロナ禍で未知のウイルスの脅威を目の当たりにしている今だからこそ、未開の地・宇宙には恐ろしいリスクが潜んでいるかもしれないと思ってしまう。
    そういう面から先日、『はやぶさ2』が持ち帰ったリュウグウの試料もとても慎重に扱われるのだろう。
    ●1つの銀河には1千億の惑星があると言われている。
    東京ドームを天井までピンポン球でいっぱいにする数は約270億個。
    銀河にある惑星の数は東京ドーム4つをいっぱいにするピンポン球の数くらい。
    さらに宇宙には1千億の銀河があると言われている。
    1千億の1千億倍の世界。
    地球はその中のたった1つにすぎない。
    ●太陽系の境界『ヘリオポーズ』を超え、星間空間に入るボイジャーには「宇宙人への手紙」が積まれている。
    地球外知的生命に出会った場合、その文明は我々よりもはるかに多くの事を知っている文明に間違いない。それならば我々のユニークな面を伝えるべきだ、という観点から文字による手紙ではなく、金メッキを施された『ゴールデンレコード』に音楽や様々な音を録音して宇宙へと送った。
    「人類のベスト盤」ともいえる27曲が収録されており、バッハ、モーツァルト、ベートーベンなどのクラシックから、ルイ・アームストロングのジャズや様々な世界の民族音楽が収められている。
    ビートルズも収録するつもりが、レコード会社の権利がおりず実現しなかったらしい。
    音楽だけではなく、55ヶ国語の挨拶や、地球の様々な音(風、雷、虫の鳴き声、クジラの歌、列車や飛行機の騒音等)も収録されている。
    まさに『The・地球の音』
    宇宙人に音楽を送る。人類の想像力と創造性・言葉や方程式では表現出来ない意識や感情を伝える素晴らしいアイデアだと思う。
    ●宇宙人が地球の文明に気づくとすると、ラジオやテレビの電波を受信する事による可能性が高いのだという。
    東京タワーのような電波塔から全方位に電波は発信され、空を抜け宇宙まで飛んで行く。
    人類初のラジオ放送は1906年のクリスマスイヴにアメリカでクリスマスキャロルが放送された。
    電波は電磁波の一種なので、光の速さで進む。
    2020年現在、その電波は地球から114光年の位置を飛んでいる。
    もし地球から100光年の位置に宇宙人が存在して、その放送を聴いてすぐに返事の電波を送ったとしても、まだその星から14光年しか進んでおらず地球に届くまで、あと86年かかる。

    長々と書いたが、この本を読んで思ったのは、結局の所、宇宙の誕生・宇宙人の存在・系外惑星の事や宇宙に関わるほぼ全ては解明されていないのだと思う。
    人類が月に立ってからたったの50年で、宇宙の138億年という歴史を知るなど到底無理な話だ。
    この本に書かれているほとんどの事が、〜かもしれない・イマジネーションでしかないのだが、そのイマジネーションこそがロマンであり、これからの宇宙探査の鍵なのだろう。
    何も分かっておらず、分からないが故にイマジネーションは膨らむ。

    現代社会は、インターネットやテレビやスマホ・SNSの存在で常に何かしらの情報が押し寄せ、人が自ら頭で考えイマジネーションを働かせる事が減っている。
    少しの空いた時間にも片手にはスマホを持つ人がとても多い気がする。
    著者は、時にはスマホをしまい、夜空を見上げてそこに輝く星や月を見て色々な事を想像して欲しいと締め括っている。
    自分はふとした時に、星や月を眺める事が結構あるのだが、これからは更に感慨深くイマジネーションを働かせて空を眺めてみようと思った。

  • 長い間、積読状態だったこの本をようやく読み切ることができました。

    ロケットを初めて作る話から始まり、月面着陸のプロジェクト、そして宇宙に生命を探す旅…。
    こういうテーマの場合、難しいことを難しく描写されていることが多いのですが、
    著者はちゃんと素人でも理解できるようにかみ砕いて書いてくれています。
    そして、文才もある!
    著者の文章が詩的で、思わずのめり込むようなストーリーがあって、夢と希望のある物語になっています。

    著者の宇宙に対する深い知見と底知れない好奇心が爆発したとっても素敵な本でした。

  • イマジネーションあふれとても面白かった。数千億の銀河のなかに、きっと何処かに命はあるね。これからの宇宙探査が楽しみだ。

  • これまで宇宙物理学の理論のほうばかり読んできたけれど、技術開発は「政治」が大いに関わっているぶん、よけいにドラマチックだ。おまけに、筆者の筆致がドラマチックなので、ぐんぐんと読まされてしまう。
    本書を読んでいちばんよかったと思うことは二つある。
    一つは、地球とは別の、地球に似た星で、生命が誕生していたと仮定した場合、その誕生がわずかでも遅れていた、あるいは進んでいた場合、その差は膨大な時間の経過を経た末に、途方もない差を生み出すだろうとの知見。を知れたこと。
    つまりそれが意味するところは、もし生命誕生が遅れた星では、地球よりもだいぶん文明が遅れている(つまりコンタクト不可能)し、誕生が早かった星においては、確実に人類よりも進んだ文明が築かれているだろうこと。
    二つめは、生命の定義というのは、そう簡単ではないということ。なんとなく、動物や植物や微生物やに似ている存在であれば生命を持っていると断定できると思っていたけど、生命の定義は、宇宙規模になると、もっと抽象的になるのだな、ということ。
    常識を破るには、妄想も時には有効だなと実感。それが結果的に、想像力として評価される。ほんとに必要なのは、「妄想力」

  • 自分の宇宙の知識はアポロと月で止まっていたが、今は火星探査が主流なのか…



    読み始めて、宇宙開発について過去も現在もほとんど知らないことに気づいた。
    東京ドームのTenQに行ったとき、火星探査の状況が映し出されていたが、それに対して特に感動もドキドキもしなかったのだけど(当時はプロジェクションマッピングの方に興味があったので…)、
    地球から飛び出すために多くの人の努力(と工作)と過去の試行錯誤が今につながっているのだと、
    関係者の内なる言葉で語られるとこんなにも鮮やかにイキイキとした情景が伝わってくる。
    人々が昔、なぜ地球以外の星へ行こうとしたか、
    そのための資金難や国の情勢、派閥争いなんかもあった中、夢(と野望)を純粋に追い続けている人がいる。
    「(未知のエリア)そこに何かがある」と。

    この本を読むと、世界(World)という言葉の定義が広がっていく。
    大自然の中でちっぽけな存在だと感じるように、地球もまた宇宙の中ではちっぽけな存在でしかないという。
    世界の広さに、未来にワクワクする少年の気持ちが伝わってくる。
    著者が、想像してごらん。という景色、なんてハッピーで縛られない、自由な発想と希望があるのだろう。

    面白かったのはボイジャー姉妹のグランドツアーの話。
    175年に1度のチャンスなのに、大統領に予算を削られ、計画を半分以下に縮小されてもあきらめきれなかった研究者たちが、権力者の目を盗んで仕込んでいたという。
    そのおかげで、半分以下の計画で十分な結果を出した後に「ドッキリ」形式で仕組みをバラした後、おとがめなしで続行を許可された話は色々スカッとする。
    (きっとお偉方はあたかも初めから計画してましたとばかりに成果を発表しただろうが…)

    火星が星としての生命活動を終えたのと、地球に生命が誕生した(と言われている)40億年前が時期的にリンクしているということが恣意的と著者は言うが、想像するとドキドキがとまらない。
    もしかして火星からの移植者が解明されていないナスカやピラミッドに関係している!?と妄想してしまう。

  • 「イマジネーションがあれば何でも実現できる」
    と著者は言う。
    今の時代、イマジネーションの前に
    好奇心に乏しくなっていないか、
    自分の楽しいをもっと追求したい。

  • ここまでワクワクして読めた新書は少ない。

    現代の宇宙研究が到達している世界。
    これまでの軌跡、その先の展望について
    見事に読者を取り込みながら語られている。

  • 【あってほしい!】
    人類の宇宙に対する歴史がよくわかりました。
    読んでいておもしろいです。

    ホーキング博士が亡くなりましたが。。。
    理論物理学は頭で考える世界で、現実を直視する世界には勝ち目がありません。
    見えてしまった瞬間、理論的にどうこう言っても現実の勝ちです。

    これからどんどんいろいろなものが見えてくると思うと、ワクワクします!!

  • 日経の夕刊の書評にあり、おもしろそうだったので。とんでもなく、おもしろかった。宇宙を旅すること、他の星に生命を見つけることをジュールベルヌの昔から、現在まで、日に当たることのなかった科学者たちを突き動かすものが何で、どのようにして成し遂げていったかを、叙事詩のように語る。単なる科学書にとどまらず、心を動かされる表現で書き綴っている。オススメ。

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著者プロフィール

NASAジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)技術者。
1982年大阪府生まれ。2005年東京大学工学部航空宇宙工学科卒業。2012年マサチューセッツ工科大学(MIT)航空宇宙工学科博士課程および同技術政策プログラム修士課程修了。2012年より慶應義塾大学理工学部助教。

「2021年 『ロケットかがく for babies』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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