数学ガール/ポアンカレ予想 (「数学ガール」シリーズ6)
- SBクリエイティブ (2018年4月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784797384789
作品紹介・あらすじ
《ポアンカレ予想》は、20世紀の初頭にフランスの数学者アンリ・ポアンカレが提示した位相幾何学の問題であり、2000年にクレイ数学研究所が発表した7つの数学の難問(賞金100万ドルのミレニアム問題)の一つです。百年間、誰も証明できなかったこの問題が、 21世紀の初めにロシアのグリーシャ・ペレルマンによって証明されました。
本書は、ポアンカレ予想をテーマに、トポロジー(位相幾何学)、基本群、非ユークリッド幾何学、微分方程式、多様体、フーリエ展開などの数学的題材を解き明かしていきます。大学受験を迎えた「僕」の苦悩と数学ガールたちとの交流も軽やかに描かれます。
『数学ガール/ガロア理論』の刊行から6年。「数学ガール」ファンはもちろん、すべての数学愛好家に捧げる一冊です。
▼内容構成
あなたへ
プロローグ
第1章 ケーニヒスベルクの橋
第2章 メビウスの帯、クラインの壺
第3章 テトラちゃんの近くで
第4章 非ユークリッド幾何学
第5章 多様体に飛び込んで
第6章 見えない形を捕まえる
第7章 微分方程式のぬくもり
第8章 驚異の定理
第9章 ひらめきと腕力
第10章 ポアンカレ予想
エピローグ
あとがき
参考文献と読書案内
感想・レビュー・書評
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久しぶりの新作。
物語では数学力がだんだん上がっていくのに、私の数学力はだんだん下がっていっているので、後半の数式がだいぶキツくなってきたけど、ストーリーは変わりなく面白かった。
特に今回の主人公の受験との葛藤は、とても感情移入できてしまって、後半は一気読みだった。 -
惜しいなあ。
いつも最後の章は容赦のない数学になるのだが、本巻だけはポアンカレ予想の雰囲気を伝えることで終わってしまった。
次の巻はいつ読めるのか。 -
数学ガールの最新刊.といっても4年も前に出たもの.
よく数学の素材を消化して書いていると感心する.
ポアンカレ予想自体の紹介は少なめ.難しいからね. -
数学系の道にはこういう沼もあるんだなぁと。
大学1年生の時に買ったが半分しか読んでおらず、3年の時を経て、また最初から読み返して読み終わった。 -
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もちろん,何も考えなくても極端な類別はできる。極端な類別は二つある。《すべては違う》と見なす類別。《すべては同じ》と見なす類別。これは自明な類別を生むけれど,あまり役には立たない。
うまく類別できれば,研究対象を一望できる。《同じ》と《違う》を定める過程の中で,私たちは基準を手に入れ,学問は前に進んでいく。(p.46)
真剣に取り組まなくては,練習の意味がない。(p.82) -
請求記号 410.4/Y 99
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数学ガールシリーズ。読書ノートに移行してもう新刊出ないと思ってたら、いつの間にか出てたw
グラフ理論から位相幾何学まで俯瞰出来て面白い。 -
数学ガールシリーズ第6弾
5作目で終わりかなと思っていたが、なんと、ポアンカレ予想の内容で最新作が出ていたのを去年本屋で発見し、ようやく読了した。6章までは去年の6月末で読み終わっていたのだが、なぜか先月7章を読み始めるまでにちょうど1年のブランクがある。ちょうど話が一区切りついた感じだったので、少し休むつもりが、別の本を読み始めて1年経ってしまったようだ。
ぼくもそろそろ受験、周りの数学ガールたちとの会話もだんだん変わっていくのだろうか。今回もミルカさん、テトラちゃんを始め、いとこのユーリとの絡みも楽しかった。お母さんがなかなかいい味を出している。
今回は、ケーニヒスベルクの橋から始まり、トポロジーの導入としてはよくある一筆書きの話から始まった。自分は学生時代に流体の研究室で学んでいたのだが、渦線や磁力線とトポロジーの関係に興味があり、位相関係の数学の本も読んでいた。ちょうど本書でも紹介されている「位相への30講」という本だが、当時は開集合を使った公理による位相の導入が、どうしても紐の引き伸ばしや、ドーナツとボールの話に結びつかなかった。本書は距離から位相へつながる世界の話が詳しく説明されており、なんか今頃になって、ようやくあの頃のモヤモヤが晴れたと感じた。ミルカさんとテトラちゃんのやりとりの雰囲気で、わかった気になってしまうのか...とも。
この感覚を大事にして、もう一度「位相への30講」を読み直そうと思う。クラインの壷や射影平面などの興味深い図形についても、少し突っ込んだ内容の本などを読んで勉強してみたい。
7章からはちょっと趣向が変わり、微分方程式から物理の話になって「ん? なんか話が全然違う方向へ?」となるのだが、やはり数学ガールはちゃんと着地が決まっていてうまく繋がっている。ペレルマンがポアンカレ予想を証明するために、リッチフローという位相幾何とはちょっと違う物理的な手法を用いたとは、結構話題になったと聞いていたが、本書では類似性のある熱伝導方程式を披露しているのが、なんとも言えない妙味を感じた。そう言えば、ミルカさんも高校生だったよね。自分もリッチフロー方程式については、勉強して理解したいと思っている。
最近では仕事がらもあるが、手で計算する機会があまりないので、フーリエ展開なんか久しぶりだった。自分にも衝撃的だったのは、テトラちゃんの「べき乗の形のものをフーリエ展開した時に、言葉を失って椅子から立ち上がる」という所。バーゼル問題の結果が示された時は、思わず「おお!」と思ってしまった。日頃から手で数式をいじってみようと思う。
ポアンカレ予想は証明されたが、このままポアンカレ予想と呼ばれ続けるのか。ポアンカレ・ペレルマンの定理とかに変わることはないのかな。