こころをひらく対話術 精神療法のプロが明かした気持ちを通わせる30の秘訣

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797355895

感想・レビュー・書評

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  •  今、個人的にもっとも尊敬し、追いかけている精神科医の泉谷先生が、真に対話をするということがどういうことなのかを教えてくれる。

     ムラ的共同体で生きてきた日本人は、「心が通じ合うこと」が「相手と自分が同じであること」と思い込んでいる傾向がある。対話をする前提として、「他者」を「よくわからない未知の存在」と認識することが大切。そして、異質なものと遭遇する事により、自分が変わることを歓迎する姿勢で対話にのぞむべきである。と書かれている。

     そもそも人間の頭は、効率化を目指して「たかをくくる」傾向を備えている器官だが、たかをくくると、対象の微細な変化を見落としてしまい、変化できる可能性をつぶしてしまう。ではたかをくくらないためにどうしたらいいのか。

     他に、悩むことの大切さ。他人の経験を先取りして奪うことの問題点。より高次な理性とは。森有正さんの文の抜粋と、二項関係(二人称関係)が陥る問題点。なども興味深かった。

    印象に残ったところ
    ※食事や睡眠の時間を正確に決めておくと、欲求が、必要から生じないで、習慣から生じることになる。というより、自然の欲求のほかに、習慣による新しい欲求が生じる。

    ※私たちは、まだ、ハラスメントという警告がなければ他人の怖さが実感できないような個人主義の初歩段階にいる。

    ※愛と欲望の大きな違いは、他者も自分と同じように孤独を生きていることに気がつけるか否かというところにある。

    心に刻むべき事が多く、今回もメモを取りまくりでした。

    泉谷閑示さんや喜多川泰さんの本を何冊も読んで、この歳になってやっと、少し、学ぶ姿勢、聴く姿勢ができてきたような気がします。子供の頃から体験してきた学校の授業、習い事の数々は、自分の学ぶ姿勢がなってなかったせいで、実は何も学べていなかったと実感して愕然としました。やっとこれから真の学びが始められるかもしれません。

  • 以心伝心で空気を読むような「ムラ的」コミュニケーションではなく、自分自身の考えと軸を持ち、それゆえに相手にも別の軸を認め、相互のコミュニケーションによって双方がステージを高めあう「対話」の重要性には我が意を得たりである。
    タイトルには“術”とあるが、本書には対話の前提となる心構えとそれに必要な基本的対応が示されているように思う。この基礎部分がなくてテクニックだけを教えられても役には立たないだろうし、逆にこの本に書かれている心構えは精神世界の教えとして十分なものだと感じる。
    本書とは直接関係ないが、引用した「本末転倒」から、時を記す暦の終焉が人類の終末を示すというのも同様に本末転倒なことだなぁと気づかせてもらった。
    基本的な考え方の近さを感じ、著者のほかの著作も読みたくなった。
    11-85

  • 「変わりたくない人に対話はできない」と言い切る。禅問答をはじめ、思考すること、思考停止を打ち破ることにつながる技法。自分または相手を尊重し、聴く力と質問力を育てていく。自己との対話から、対話による共同思考へ。ムラ的なコミュニケーションから個を大切にする対話へ。生き方の問題へと話題が深まっていく。

  • カウンセリングを主業務とする精神科医が日々の経験から語る、対話の本質に迫る本。
    対話とは、話のキャッチボールでお互いの認識が変化し、さらに一段と高い認識に到達する行為。
    そんな対話ができる友人は数少ない。
    分かってもらえないと日頃から悩んでいるそこのあなた、分かってもらえないなんて当然ですよ。悩でいないで、この本を一読してみませんか?

    以下注目ポイント
    ・相手を「他者」として見る。
     自分と同じとは考えない。
    ・「あなたのためよ」は、押しつけ。人を歪めるだけ。
     おいしいから食べてごらんなさい→私はおいしいと思うけどあなたもいかが?
    ・「うち」は変化を忌み嫌う。人を束縛する。しかし、人は日々刻々と変化するもの。
    ・経験と体験
     経験とは、体験にすることによってその人が内的に変化した場合。感性や価値観が多少なりとも変わる。
    ・自分の意見をもって表明することは、ディベートで勝つこととは違う。ディベートで勝つことはモノローグに過ぎない。
    ・ダイアローグ
     話のキャッチボールで、お互いの認識が変化していく。単なる会話はモノローグに過ぎない。
    ・わかる、わかる
     人のことがそんなに簡単に分かるわけがない、逆に不信感が高まる。
    ・話手が、当然として語らない、基本公式を問う。
    ・無色透明な分身を飛ばして聞く
     自分の好みは本体に残して聞く。
    ・「理解」と「同意」は別。
     わかるはあいまい。
    ・向き合う準備のできていないテーマ
     無意識に避ける。借り物の価値観、できあいの常識で片付け、自身では考えたことがないこと。
    ・自分の考えをバージョンアップし続ける。
    ・対立は、理解を放棄した、「対話」の遮断によって生ずる。
    ・流れから飛躍しない質問で、相手の基本公式を理解する。
     ちょっと話が戻ってしまいますが。
    ・意図が見える質問で、流れを妨げない。
    ・対話により、認識を増やし、自分で考え判断できる自由を生み出す。そして理由のよくわからないマニュアルを減らす。
    ・聴いたからにはアドバイスしなければという気持ちから自由になる。特に性急なアドバイスは単なる一方的は押しつけ。
    ・借り物の考えを自分の考えに置き換える。稚拙であっても、置かえて行く作業が真に考えるためには必要。
    ・自分の考えが、対話の前提。
    ・哲学とは、物事について基本的な前提のところからていねいに考えていく行為。
    ・習慣による新しい欲求を防げ。by ルソー
     食事と睡眠の決まった時間は単なる習慣による欲求の可能性あり。

  • 「対話」とは、相手と自分が他者であることを自覚するとともに、自分すら「他者(第三者)」の存在であることを自覚すること。日本人のムラ社会的考え方(文化背景)によって、私たち日本人が「対話」をどれだけ無自覚に避けているのかが分かります。

  • テレビ番組の案内役だった恋愛に臆病だという女性タレントに見事なカウンセリングを行った精神科医の書いた本。

  • 初めての参加で、ちょっと緊張しましたが、色々なお話しが聞けて楽しかったです。

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著者プロフィール

泉谷 閑示(いずみや・かんじ)
精神科医、思想家、作曲家、演出家。
1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒業。パリ・エコールノルマル音楽院留学。同時にパリ日本人学校教育相談員を務めた。現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック(東京/広尾)院長。
大学・企業・学会・地方自治体・カルチャーセンター等での講義、講演のほか、国内外のTV・ラジオやインターネットメディアにも多数出演。また、舞台演出や作曲家としての活動も行ない、CD「忘れられし歌 Ariettes Oubliées」(KING RECORDS)、横手市民歌等の作品がある。
著著としては、『「普通」がいいという病』『反教育論 ~猿の思考から超猿の思考へ』(講談社現代新書)、『あなたの人生が変わる対話術』(講談社+α文庫)、『仕事なんか生きがいにするな ~生きる意味を再び考える』『「うつ」の効用 ~生まれ直しの哲学』(幻冬舎新書)、『「私」を生きるための言葉 ~日本語と個人主義』(研究社)、『「心=身体」の声を聴く』(青灯社)、『思考力を磨くための音楽学』(yamaha music media)などがある。

「2022年 『なぜ生きる意味が感じられないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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