地球と一緒に頭も冷やせ!

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797347234

作品紹介・あらすじ

地球温暖化を巡ってヒートアップするばかりの人々をクールの粉砕。『環境危険をあおってはいけない』の著者が再び問題提起を行う。

感想・レビュー・書評

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  • 「地球の温暖化」と「世界の貧困」と「二酸化炭素削減」が気になっている人は読んだ方がいい。それぞれが別の課題で、だからアプローチも違うということが書いてある。
    いい本だ。相変わらず山形調が冴えている。

    2008年までは「温暖化を防止するためには二酸化炭素削減!」というのが主流だったけど、最近は「水ビジネス」でしょうか。あと生態系。

    水ビジネスや水市場の本(まだ2冊しか読んでないけど)を書いている人には、上記のことがわかっている人もいれば、わかってるのかな?と疑問に思う人もいるのだけど、後者のわかっているのかな?の人が持ち出す、

    1)2050年には79~110億人に人口が増えれば水不足になる
    2)温暖化したら砂漠化が進行して食糧不足になり、貧困にある人はもっとひどい状況になる
    3)だから水ビジネスが必要

    というのの1と2が、実はそうでもない、ということが書いてある。
    (中国などで水道事業のニーズがあるのはそうだろうとは思うけど)

    水ビジネス本を読んで、「あれ?それって本当?」とひっかかり、2年以上前に新刊で買って、半分読んで放置していた本書を引っ張り出して読んでみた。

    本書では、まず、温暖化の原因は二酸化炭素じゃない(正確には、二酸化炭素かどうかはっきりしない)ことが長期の地球の気温データでもって示される。

    そして、温暖化は長期的な地球の気候変動の流れの中のことであるものの、急激な変化は人間の活動が原因、とは認めている。

    ただし、京都議定書にあるような二酸化炭素対策を年間1800億ドル投じて行ったとしても、対策をしなかった2095年に到達する気温上昇が5年遅れてもたらされるだけ。
    それに、京都議定書の目標は守られてないし、不公平。

    そして、温暖化しても、ホッキョクグマは減らないし、マラリアの流行も気温との相関は薄いし、寒さより暑さで死ぬ人の方が少ないし、暖かい方が雨は多く降る地域が増えるし、暖かい方が農業はしやすいから食料も不足しない。

    だったら、100年の間にもっと安く対策できる他の課題を優先させた方がいいんじゃない?という論旨。

    例えば、エイズや貧困、安全な水に十分にアクセスできないこと、ハリケーンが来ても被害が大きくならないようにする社会政策、洪水を食い止める湿原保護、自由貿易(先進国の農業保護をやめるとか)、低炭素エネルギーの研究開発や炭素税とか。

    ハリケーンや森林破壊の被害が貧困地域で大きいのは、そこにいる人たちが、それを食い止めたり対策したりするお金も教育も衛生環境も持っていないから。
    そこに先にお金を使えば、たとえ温暖化したり気候が変動しても、被害は少なくできるでしょ?

    「今後40年で、ぼくたちは何を実現したいんだろう?」

    今何を優先すべきか。すっきりした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「相変わらず山形調が冴えている。」
      じゃぁ読まなきゃ(山形浩生の訳す本は刺激に満ちてるのは判ってるけど)、、、
      「相変わらず山形調が冴えている。」
      じゃぁ読まなきゃ(山形浩生の訳す本は刺激に満ちてるのは判ってるけど)、、、
      2013/02/07
  • 環境と経済の関係を考えさせる本は良書だなあとやはり思う 問題に飲み込まれず冷静に見つめるために良い効果をもたらしてくれた点で読む価値があると感じた 恐怖で思考停止しそうなひとにはオススメ ただし読むのはそれなりに大変 つらくはないけど労力は必要

  • 2008/9/23 予約 (3冊全部貸し出し中)11/15 借りる、12/12 怪我をしたので途中で返却。
    また読みたい!

    地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す 
    ビョルン・ロンボルグ/著 ソフトバンククリエイティブ 2008.7



     
    内容
    地球温暖化を巡ってヒートアップするばかりの人々をクールに粉砕。
    地球温暖化にまつわる問題の一つひとつを、根拠を明記しつつ検討し、CO2排出削減一辺倒の対策ではない、本当に有効性のある対策を提唱する。

    著者 ビョルン・ロンボルグ
    1965年生まれ。デンマークの環境評価研究所所長などを経て、コペンハーゲンビジネススクール准教授。統計学者。
    著書に「環境危機をあおってはいけない」がある。

  • 「温暖化問題を問い直す」との副題がついていますが、著者は地球が温暖化していること自体を否定しているわけではありません。

    確かに温暖化はしているし、温暖化に人為的な要因が影響しているのもおそらく間違いないし、CO2を削減すれば温暖化が緩和されるのも事実だろう。
    だけど、物凄いコストをかけてCO2削減に取り組むことが、本当に賢明な策なのか、立ち止まって冷静に考えてみようよ、という本です。

    著者の主張点は大きく2点。

    地球温暖化が進んだとしても、アル・ゴアやメディアが喧伝するような暗黒の未来―氷河融解による海面上昇、ハリケーンの強大化による被害の甚大化、メキシコ湾流が止まることによる欧州の寒冷化、伝染病の蔓延−が到来する恐れはないということが1つ。
    冷静なデータ分析と、専門家の学説を紐解きながら、その根拠が説明されます。
    温暖化がこのまま進めば、暑さで死ぬ人は確かに増えるかもしれないが、寒さで凍え死ぬ人がそれ以上に減る。
    ハリケーンの被害額や海面上昇により危険にさらされる人々が増えているのは事実だけど、それは温暖化のせいというよりも、危険な地域に住む人口が増えていることの影響の方がずっと大きい。

    そしてもう1つは、温暖化による悪影響を減らすための方策として、CO2削減はきわめて費用対効果が低い対策である、ということ。
    京都議定書を実現したところで温暖化は止まらず、効果が出るのはずっと先の話だし、しかも数年先延ばしをするだけ。
    その程度の効果しか生まない京都議定書ですら、各国は削減義務を守れないでいる。
    なぜなら、京都議定書を守るには莫大な社会的コストが発生するから。
    そんな大した効果を生まないCO2削減なんかにコストをかけるよりも、もっと別な方法―社会政策や世界の貧困層の所得を上げる経済成長―を優先したほうがずっとよい結果を得られるだろう、ということ。

    この本に書かれていることと、温暖化の危機に警鐘を鳴らす世間の論調の、どちらが正しいのかを判断することは自分にはできません。
    が、著者の説明が冷静で客観的であることはこの本を読めば伝わってくるし、何よりCO2という「手段」が「目的」化しているようにしか思えない今の風潮の異常さが際立って感じられるようになります。

    著者の主張で、もっとも共感するのは、すべては「トレード・オフ」だと考えている点です。
    温暖化を防ぐことも、CO2を削減することも「よいこと」であるのは確か。
    「よいこと」ならやればいいじゃないか、というのは正しい。
    だけどそれには莫大なコストがかかる。
    限りあるコストを投下するには、「何が優先するか」をよく考えるべき。
    CO2削減のためにコストを使い切ってしまったら、もっと費用対効果の高い他の対策に手をかけることができなくなってしまう。
    優先度や公平性を考えずに、「やらないよりやった方がいいんだから」という考え方が盲目的にまかり通ってしまうのは、今の「景気対策」なんかを見ても同じですね…

    というわけで、なかなかの良著だと思いますが、データ分析や解説が丁寧に行われる分、同じような話が繰り返し出てきて、「読み物」としてはやや冗長な気もしました。

  • 思索
    サイエンス

  • 【要約】


    【ノート】

  • 冒頭、ホッキョクグマは増加傾向にあり毎年約50頭が射殺されている事実にふれ、温暖化の1要素?のCO2の削減は手段の1つにすぎない筈が目的化していないか?100年後の0.2℃のための毎年18兆円はコストをかけすぎではないか?温暖化対策以外にも優先度の高い案件があるのではないか?温暖化よりも寒冷化による死者リスクの方が高い現実、温暖化により北緯圏の作物収穫の増加見込み、ヒートアイランド現象は地球温暖化よりも気温上昇が激しいが都市を崩壊させてはいない。などバランスある議論を展開している。

  • 英題:Cool It: The Skeptical Environmentalist’s Guide to Global Warming (Cyan, 2007)
    デンマーク語版題:Køl af : sandheder og skrøner om den globale opvarmning
    著者:Bjørn Lomborg(1965-)
    訳者:山形浩生(1964-)


    【メモ】
    ・ロンボルグ『地球と一緒に頭も冷やせ』サポートページ
    http://cruel.org/books/coolit/



    【目次】
    献辞 [002]
    はじめに [003-004]
    謝辞(ビョルン・ロンボルグ コペンハーゲン、二〇〇七年五月) [005-006]
    目次 [007-012]

    第1章 ホッキョクグマは警告のカナリアだろうか 013
    論争の縮図:ホッキョクグマの絶滅 014
    議論をまとめると 019

    第2章 熱を帯びて:手短に説明すると 023
    地球温暖化:基本 024
    地球温暖化:気温の上昇 025
    熱さによる死亡:未来の道? 028
    ヨーロッパでの死亡 031
    暑さへの対処法 033
    都市の気温情報 035
    効果がある(かどうかわからない)炭素削減 040
    炭素削減のコスト 045
    [枠]炭素輩出をカットし、利益を出すこと 049
    費用と便益――CO2一トンの価値 051
    気候変動対策の費用と便益 055
    もっと暑い世界はどうなるか 063
    地球温暖化以外にも問題はある 067
    ぼくらの世代の使命 075
    [枠]全部やる 078
    もっといい戦略 080

    第3章 地球温暖化:主な心配事 083
    長い歴史:CO2と温度 084
    長い歴史:CO2、温度、氷河 090
    海面上昇 097
    [枠]ペンギンの危機 109
    極端な気候は極端な誇張 117
    河川の氾濫 134
    [枠]竜巻、ヒョウ、雷等々 140
    ヨーロッパに新たな氷河期? 143
    病気が増える:バーモントでマラリア 153
    暑くなると飢餓も増える? 171
    水不足 178
    貧乏なのは、地球温暖化のせい、それとも政策がまずいせい? 188

    第4章 地球温暖化をとりまく政治 197
    気候のつまみで何ができるの? 198
    むしろやるべきこと:開発研究を増やそう 202
    賢い解決策のかわりに、みんなわけもわからずおびえている 212
    [枠]昔の悪いニュース 213
    経済:まともな対話の消失 226
    科学:まともな対話の消失 235
    政治:まともな対話の消失 240
    [枠]本当に地球温暖化をなんとかしたいのだろうか 243

    結び 最優先事項をやるのがクールだ! 249
    そろそろまともな対話が必要だ 250
    [枠]予防原則はどっち側にも当てはまる 258
    最高のものこそクールだ 263

    訳者あとがき(東京/アクラにて 山形浩生) [273-285]
    1 はじめに 
    2 著者について 
    3 本書について 
    4 本書の評価について 
    5 温暖化論争の今後 
    6 おわりに 
    注 [286-315]

  • コストベネフィット

  • 古館伊知郎に読ませたい。
    温暖化とその原因に対する本書の現状認識と将来の見通しは基本的にはIPCCをはじめとする多数派の議論のものとほぼ同じ。違うのは、一つは温暖化がもたらす誇大なマイナスについて批判的に検証している点と、見落としがちなプラスの側面にもきちんと目配りして、トータルな影響を見積もって伝えてくれている点。
    二つ目はそのマイナスを改善するのにCO2の削減以外のより安価で効率のよい方法を探り費用対効果をきちんと比較分析している点。
    さらに三つ目として人類が抱える温暖化以外の問題状況に対しても視野に納め、それらを解決することで主として第三世界の経済状況がどれほど改善されるか、またその改善によって温暖化も含めた問題状況に対する、人類全体の抵抗力がどれほど増進されるか、といった見通しを示している点。
    経済学者が予測する将来の経済発展状況がやや楽観的ではないか?とも思えるが、根拠の薄弱な絶望的未来像を撒き散らす終末論的な「警告」に日々脅され続けている人々に対して、本書は非常に説得力のある福音となるのではなかろうか。

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