新しい刑務所のかたち -未来を切り拓くPFI刑務所の挑戦- (ShoPro Books)

著者 :
  • 小学館集英社プロダクション
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796871105

作品紹介・あらすじ

今までにない民営刑務所構想に法務省はどう動いたのか…。PFI刑務所が開所するまでの経緯と、著者の人徳と情熱を記録した「西田ファイル」の"読む"ドキュメンタリー。日本初となる、官民協働で運営する「PFI刑務所」を実現させた著者が、これからの"刑務所"の在り方を問う。

感想・レビュー・書評

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  • 他の国の事例についてや民間参入時の入札時の状況、地域住民の方への説明会での様子など苦労や大変さをとてもわかりやすく説明してあった。
    支援プログラムの豊富さや自己肯定感を取り戻すための地域の人との交流など、人は人で支えられるということを考えさせられた。
    刑務所に入っている人は特別な極悪人で自分とは全く関係ない、刑務所は迷惑施設という認識の多い中、刑務所周辺はかえって事件が少ない、地域振興策で経済効果が継続的であるという考え方は新鮮だった。

  • 刑務所施設の整備・運営にPFI方式を導入した法務省の政策担当者が書いた本。導入までの検討の経緯や、整備に至るまでの地元との協議の状況、さらには運営を始めてからの刑務所運営や地域社会に与えた影響などを詳しく書いてある。

    刑務所PFIだけでなく、公的な施設の整備やPFI全般に関することも含めて参考になる点が多いと感じた。

    制度設計の面では、どこまでを民間に委託し、何を官による業務として残すのかという点に、最も気を使っていると感じた。その中でも、海外の事例を豊富に調査しながら、日本において制度上、また国民感情としてどこまで受け入れられるかを考慮しながら線引きをしていくプロセスが、興味深かった。

    日本においては、基本的に被収容者の身体に直接触れる業務は公権力の行使として官の側の業務として残されている。一方で、諸外国の中には、そのような業務であっても適切に委託されるのであれば民間が行うことも認めるという国もあり、この辺りが国によって考え方が異なる点である。

    一方、食事の提供や洗濯など、従来は被収容者が当番制などで行っていたものについても民間に委託する方針とするなど、従来の考え方では刑務所において「サービスの提供」はNGという発想が取られていたものについても、効率化や被収容者の変化に対応して新たな発想を取り入れた点もあり、これらの判断が、PFIの効果を十分に発揮するためには重要なポイントであったのではないかと感じた。

    運営面では、いかに地域に開かれた施設にするかという点を、最初の段階から重要なポイントとして計画していたということが印象に残った。

    刑務所は一般的に迷惑施設であり、新設ともなると地域の懸念が大きいことは容易に想像できる。計画段階から担当官自身が積極的に現地での説明に足を運ぶということはもちろんのこと、運営状態や施設の管理のされ方を透明化するということが、非常に効果的であったということを感じる。

    刑務所ということで、施設の内容を地域に公開するということに、警備上、人権上など様々な課題があったのではないかと想像するが、地域の理解を得ていくためにも、官の側もPFI事業者も協力しながら出来ることを積み重ねていったということが伺える。この点も、新しい制度を実現するためには新しい発想が必要ということの一例だと感じた。

    最終的には地域や一般企業の懸念を解消するだけではなく、更生プログラムの実施や出所後の雇用の場の確保など、様々な面での協力も得られるようになるなど、良い方向の循環に繋がっていったようである。

    新しい制度を作り、それを実際に形にしていくのは非常に大変ではあるが、しっかりとしたバランス感覚と丁寧な進め方で行っていけば、刑務所運営におけるPFI導入といった事業でも、実現への道が拓けるということがよく分かった。

    2021年5月の会計検査院の報告では、運営面での不備もいくつか指摘されているようである。政策担当者が書いた本であるだけに、負の側面やトラブルなどをあまり具体的に書けないという側面もあるかもしれない。それらを差し引いて考えてみても、大変勇気をもらえる事例の本であると感じた。

  • 冒頭で刑務所という「鼻つまみ者」に携わる者の使命感がぐっと来た。
    ここで扱われているのは、犯罪初心者?を収容する刑務所。殺人犯や強盗犯ではない。犯罪者というと味噌もくそも一緒に考えがちだが、矯正という刑務所の役割を考えると、刑務所も色々な形があって良いと気づかされた。

  • 刑務所に民間手法を取り入れる導入と、実際の事例。著者は法務省矯正局審議官。気になるのは、「小学館」でも「集英社」でもなく、「小学館集英社プロダクション」という、PFIの指定管理者を受託しているところから出ている本だというところ。官民そろってのPFI推進の広報本である、という前提で読まなければなるまい。
    刑務所は通常NIMBYであるのだけれど、PFI刑務所は地域振興という現金を携えて地域に歓迎されていく。いろんなことが杓子定規に厳罰化されて受刑者が増える。風が吹けば桶屋が儲かる、のような話ではないのかと終始疑いを持ったまま読んだけれど、払拭は出来なかった。よくあるビジネス立ち上げ本のようなスタイルで…、あ、そうか、刑務所ビジネスってことか!
    と、穿って読みましたが、刑務所内で、社会復帰のための柔らかい考えが導入されているということも紹介されていて、それはまあ、よいことだろうと思った。
    全体的に自分の勉強不足で、なんともわかりません。

  • 刑務所の話もPFIの話も易しく説明している。

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