〈サーカス学〉誕生: 曲芸・クラウン・動物芸の文化誌

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  • せりか書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796703420

作品紹介・あらすじ

ジュネが愛してやまなかった綱渡り、中原中也の詩「サーカス」の舞台裏のエピソードなど、サーカスを切り口に、歴史・美術・映画・文学を横断しながら"サーカス学"という新たな文化空間を切り拓く。

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  • <サーカス学>誕生
    ~曲芸・クラウン・動物芸の文化誌

    著 者 大島幹雄
    せりか書房
    2015年6月5日発行

    夏ごろから読書メモをさぼり始めた。これは8月ぐらいに読んだ本。

    著者はロシア文学を専攻した著作者。この本ではサーカスに欠かせないいろいろなものの歴史を調べ上げている。綱渡り、クラウン、熊、ブランコ、象など。
    世界一のサーカスはロシアのボリショイサーカスだけど、その本当の団名は大変長いため、初来日公演で日本人が勝手につけた名前であり、しかし、それがロシアに逆輸入されて今ではロシア内の国立のサーカス団のほとんどがボリショイの名前を使っている、という驚きの事実もあった。

    1.綱渡りの詩学
    綱渡りはエジプトが最古のルーツという説がある。紀元前1万2500年頃、ナイル川沿岸で行われた。
    江戸時代、揺監期の歌舞伎の座元、早雲長太夫は蜘蛛舞を得意とする家柄で、これから蜘妹舞は歌舞伎にはいっていき、宙乗りなどケレンの技へと結び付く。
    韓国映画「王の男」は追いつめて綱に上がったのではあるが、自由を求めて上がったともいえる。綱の上は自由に跳躍できる。
    二次大戦後、シベリアに抑留された松原という人物は、綱渡りで屋根を越えて強制収容所から脱出した。

    2.心に秋を抱いたクラウン、エンギバロフ
    エンギバロフというクラウンは、37歳で他界したが、生きていれば間違いなくチャップリンやキートンを超える20世紀最高峰クラウンだったはず。
    ソ連時代のサーカスで、クラウンたちはパントマイムをほとんど使わず、セリフを多用しながら笑いをつくるのが基本だった。

    3.第二章中原中也とサーカス~サーカスとブランコ
    1958年のボリショイ・サーカス初来日の時、ソ連邦国立サーカスという本来の団名を、招聘したアートフレンド・アツシエーションの理事長神彰は、公演の成功はタイトルにあると考え、社員にネーミングをさせた結果、「ボリショイ・サーカス」に。すっかり定着したばかりかロシアに逆輸入され、ロシア各地のほとんどの国立のサーカス団はボリショイと名乗っている。

    4.ロシア・アヴァンギャルドとサーカス
    サーカスの映画でおそらく一番の観客動員をしたのは、ソ連映画の「サーカス」であろう。チャップリンの「サーカス」でも、「地上最大のサーカス」でも、「道化師」でもない。
    1936年のイズベスチア掲載のコメント「サーカスはソビエトの観客の知性や感性に働きかける知的喜劇である」
    マヤコフスキなどソ連の若いアヴァンギャルドたちは一斉にサーカスへと突き進んだ。
    サーカス演劇で活躍した「タカシマ」という日本人ジャグラー

    5.熊の神話学
    ボリショイサーカス初来日公演の時、ある新聞がショーの一番難しいところで演じていたのは熊ではなくぬいぐるみを着た人形である、と書いた。翌日、本物かどうか確かめたいという人が柵に近づいて手を伸ばすと熊は怒ったように吼えた。
    まだ芸を仕込まれていない狂暴な熊を買ったジプシーたちは、まず熊に2日間絶食させ、3日目に塩にしんを与えた。水一滴のまされていなかった熊は、のどが渇く。ここで強い酒を与えるとすごい勢いで飲むので死んだように寝てしまう。ここで釘抜きで爪をすっかりぬきとり、鼻の骨に輪を通し、顎のまわりにくさりをつけて、その先端を鼻にからませ、檻から出して車につめこんだ。
    古代から神聖なものとして崇められてきた熊は、キリスト教がヨーロッパを征服するまで、スラブ・シベリア・ゲルマン・ケルト民族のなかで、百獣の王であり、神であった。

    6. 第六章 旅する象・叛乱する象~映画の中の象物語
    カエサルの催した見せ物で、4頭の象は、客でいっぱいになっている食堂の寝椅子の間を、飲んでいる連中の誰にも触れぬよう慎重に歩を進めながら、自分たちの席につくために歩いてゆくようなことすらやつてのけた。
    静岡県三ヶ日にある象泣き坂という坂。
    象と話せるようになったローレンスは、ダーバンへの出張から帰ると、7頭の象が自分を出迎えるように待ちわびていた。また、ヨハネスブルグの空港で帰りの飛行機に乗り損ねたが、650キロほど離れたトゥラ・トゥラでは群れが例によって彼の家に向かおうとしていたのである。しかし、あとで聞いた話だが、ガウたちは突然止まって向きを変え、藪の中に戻ってしまった。あとで調べると、それはちょうど飛行機に乗り損ねた時刻であった。

    7.インディアンロープの伝説
    イギリスにあるオカルト研究会は、オカルトがまがいものであることを実証する団体。
    『超能力者ユリ・ゲラー』の著者でもある超心理学者のアンドリア・ブハリッチも、インデイアンロープの謎解きに挑んだ。それはテレパシーを通した集団幻覚によつてもたらされたものだというまったく新たな見解で話題になった

    8. 竿芸のフォークロア

  • めっちゃサーカスの動物の章おもろかった・・・あとサーカス映画めっちゃ観たい・・・「ベアーズ・キス」とか「恋人たちのパレード」、「ゾウとアタシに雪が降る」・・・めっちゃ観たい・・・ゾウとクマかわいい・・・

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784796703420

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著者プロフィール

大島幹雄:1953年宮城県生まれ。早稲田大学第一文学部露文科卒業。ノンフィクション作家、サーカス学会会長。石巻若宮丸漂流民の会事務局長、早稲田大学非常勤講師も務める。著書に『海を渡ったサーカス芸人──コスモポリタン沢田豊の生涯』(平凡社)、『虚業成れり── 「呼び屋」神彰の生涯』(岩波書店)、『満洲浪漫──長谷川濬が見た夢』(藤原書店)、『〈サーカス学〉誕生──曲芸・クラウン・動物芸の文化誌』(せりか書房)、『明治のサーカス芸人はなぜロシアに消えたのか』(祥伝社)などがある。


「2021年 『日本の道化師 ピエロとクラウンの文化史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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