だから、もう眠らせてほしい 安楽死と緩和ケアを巡る、私たちの物語

著者 :
  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794971876

作品紹介・あらすじ

オンライン投稿サイト「note」にて、20万PV突破!!!
注目のノンフィクション・ノベル!

僕は医師として、安楽死を世界から無くしたいと思っていた。

安楽死を願った二人の若き患者と過ごし、そして別れたある夏に
何が起こったか――。オランダ、ベルギーを筆頭に世界中で議論
が巻き上がっている「安楽死制度」。その実態とは。
緩和ケア医が全身で患者と向き合い、懸命に言葉を交し合った
「生命(いのち)」の記録。

オランダでは年間七〇〇〇人が安楽死を迎え、日本の世論でも
国民の七割が賛成を表する「安楽死制度」。

スイスに行く手続きを進めながら、それが叶わないなら緩和ケア病棟で
薬を使って眠りたいと望んだ三〇代の女性。そして看護師になることを夢
に、子供たちとの関わりの中で静かに死に向かっていった二〇代の男性。
二人と過ごした日々を通して見えてきたものとは。

写真家で多発性骨髄腫をかかえる幡野広志氏、
世界中の安楽死の事例を取材して紹介した宮下洋一氏、
そして精神科医の松本俊彦氏と、
在宅で緩和ケアを行っている新城拓也氏との対談も収録。

【目次】
プロローグ
 ・吉田ユカからの電話

1:止まってしまった心――吉田ユカの場合
2:もう一人の安楽死――Yくんの場合
3:暮らしの保健室
  ・看護という力
  ・死の色と雨
4:スイスに行けない
5:安楽死に対峙する、緩和ケアへの信頼と不信――幡野広志と会う
  ・幡野広志と吉田ユカ
  ・緩和ケアを信頼できない理由
  ・耐え難い苦痛とは何か
6:安楽死の議論はやめたほうがいい――宮下洋一に会う
  ・パンクするスイスの現場
  ・流れ作業化する安楽死
  ・海外の安楽死システムは完全か
7:命ではなく、希望を守りたい
  ・Yくんの右腕
8:安心して死にたいと言える社会――松本俊彦に会う
  ・安楽死をしたい人に、安楽死で応えるべきなのか
9:もし未来がわかったなら
10:少し先の未来がつなぐもの
  ・緩和ケア病棟にて
11:欲望を換金する――新城拓也に会う
  ・二極化する中での個人責任論
  ・鎮静についての考え方と予防的鎮静
  ・ノックされたら開けてしまう
12:一〇日間の涙
  ・月曜日の憂鬱
  ・カンファレンスにて
  ・ラインを引く
  ・一〇日間

エピローグ
  ・釧路の海に

あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 「だから、もう眠らせてほしい」西智弘さん: 日本経済新聞(2020年9月5日 有料会員限定)
    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63449850U0A900C2MY5000/

    「安楽死でしか救われない人は、そう多くない」緩和ケア医が語る日本の現状 | ハフポスト NEWS(2020年9月16日)
    https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f5ecdeac5b67602f6070583

    『だから、もう眠らせてほしい』2つのテーマ|西智弘(Tomohiro Nishi)|note (2020年11月6日 有料)
    https://note.com/tnishi1/n/n074248443a44

    だから、もう眠らせてほしい | 晶文社
    https://www.shobunsha.co.jp/?p=5809

  • 著者、西智弘さん、どのような方かというと、某所のプロフィール記事には次のように書かれています。

    川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター、腫瘍内科/緩和ケア内科医長。一般社団法人プラスケア代表理事。
    2005年北海道大学卒。室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、2007年から川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。その後2009年から栃木県立がんセンターにて腫瘍内科を研修。2012年から現職。現在は抗がん剤治療を中心に、緩和ケアチームや在宅診療にも関わる。



    で、本作の内容は、次のとおり。(コピペです)

    僕は医師として、安楽死を世界から無くしたいと思っていた。

    安楽死を願った二人の若き患者と過ごし、そして別れたある夏に何が起こったか――。

    オランダ、ベルギーを筆頭に世界中で議論が巻き上がっている「安楽死制度」。

    その実態とは。

    緩和ケア医が全身で患者と向き合い、懸命に言葉を交し合った「生命(いのち)」の記録。

    オランダでは年間七〇〇〇人が安楽死を迎え、日本の世論でも国民の七割が賛成を表する「安楽死制度」。

    スイスに行く手続きを進めながら、それが叶わないなら緩和ケア病棟で薬を使って眠りたいと望んだ三〇代の女性。

    そして看護師になることを夢に、子供たちとの関わりの中で静かに死に向かっていった二〇代の男性。

    二人と過ごした日々を通して見えてきたものとは。

  • 過去に点滴で生かされて空を見つめるご老人たちの病室をみて、自分もこうなるのかと怖くなり安楽死が日本でも可能にならないかなとずっと思っていた。
    この本を読み、以前とは別の意味を安楽死に対して思う。
    緩和ケアの詳細。患者さんととりまく家族や親戚、医者との必ずしも患者本人とは一致しない決断。
    対話せずに、結論を急いでは絶対いけない問題だと。

    見解が違う者同士が、どちらが是が非かを競うのではなく、対話することにより、導き出される新しいこたえ。それは普遍ではなく、個人、時代や環境によって一つではないということ。

    選択肢の一つとしての安楽死だと。
    筆者あとがきの、人の死は3つある。
    肉体の死、精神の死、社会的な死。
    今の時代、3つめの社会的死に向き合っていくことが
    安楽死制度の導入を進めるより急務だと感じた。

    読んで、出会えて良かった一冊。

  • 安楽死とは。緩和ケアとは。
    耐えがたい苦痛とは。

    死に向かう際の過ごし方について、話し合い、対応してこられた医師による、現場からの声。

    そこに人がいること、そしてそこにいる人の存在を感じることのできる本でした。

  • 本件のような状況には、自身も家族もなっていないです、
    ただ精神的に苦しく、もう人生諦めたいと思ってた今、
    未来をこんな風に考えて生きる人々と回りの人たちを知って
    苦しさに息がつまりました。

    先のことを考えたら、強くなれるのか。
    という、作中の言葉に絶句しました。

  • 医師が多方面にインタビューする本は珍しい。安楽死という重いテーマだが、いろいろな意見が出てきて投げ出さずに読めた。社会的に議論されていることがコンパクトにわかる点もよかった。


    2年後に読み直してみた。社会的というか、多様な価値観で決して統一されないなか、生死を考えることは数字では判断できないし、患者や医療者の人生そのものや価値観がかかわる大きなテーマと感じた。

  • 安楽死を願った二人の若き患者と過ごし、そして別れたある夏に何が起こったか――。オランダ、ベルギーを筆頭に世界中で議論が巻き上がっている「安楽死制度」。その実態とは。緩和ケア医が全身で患者と向き合い、懸命に言葉を交し合った「生命」の記録。
    私は仕事柄、がんに限らず筆者と同じように「死」と向かいあう。だけど診療科の関係で緩和ケアとはほぼ関わらないし、医者の中では遠いところにいる。正直安楽死制度は個人的に必要だと思っている。かといって自分が主治医でその選択権を委ねられたら困るだろうけれど。自分が患者だったらその選択肢がほしいと思うだけだ。だけど、筆者の安楽死をできるだけ減らしたいという思いを抱えながら診療に全力であたる人の考え方は共感できるし、自分も最後まであがく人でありたいなとも思う。それが患者にとって幸せかどうかは、人によるし、全く同じことはできないと分かっている。答えがない中で、社会的にもっと議論が進んでできるだけ多くの人が苦しみから解放される仕組みを目指すしかない。格差を受け入れて制度化するしかないというのは暴論にも聞こえるけど、考え方はみんな違うわけだし一理あるなと思った。

  • 安楽死も緩和ケアも、この本の内容は私の経験でも思考でもないから語れないけど、安楽死を巡る問題の「私の中での居場所」を見つけたい。

    という自分の問題意識とは別に、もっと文体の密度が欲しかったかな。巻頭に登場する安楽死希望の女性の苦しみなど、当事者が安楽死を望むに至った経緯心情がが案外とさらさらと書かれているので物足りなかった(これは好みの問題かもしれないが)

  • 緩和ケア医の西智弘さんの書く、安楽死と緩和ケアの話。

    西先生が実際に看取った患者さんの話に、安楽死や緩和ケアを深く考えている方たちとのやり取りを通じて、私達に安楽死と緩和ケアについて考えさせてくれる良書。

    西先生が担当した3人の末期がんの患者さんとの対応にあたったときの葛藤が見えたことで、医療者も悩んでいること、いろいろな考え方があるということ、それがよくわかった。そして、自分が安楽死を求める患者側になったとき、何を考えるべきなのか(というのか、どう考えてしまうんだろう)ということにちょっと触れることができて有意義だった。

  • がんの苦痛と比べるとものすごく軽いものだと思うが、私は首がとても痛い。
    痛みは麻痺して吐き気と頭痛が常にあり、息が苦しくて眠れない。
    心療内科での治療が、無駄だったとは思わない。
    でも、心療内科の先生は、生理痛に対しても痛み止めをくれなかった。
    歯医者の痛み止めを飲んでいると言うと、癖になるから止めなさい、というだけだった。
    歯医者の痛み止めを飲むと、生理痛がなくなるだけではなく、気持ちも明るくなった。それを言うとますます痛み止めを厳しく止められた。
    ぎっくり腰で形成外科にかかったとき、注射をされて、思わず「苦くなくなりました!息ができます!先生すごい!」と言ってしまった(笑)
    ここでストレートネックであることが分かり、処方された痛み止めを使っていたら、心療内科の薬がとても少なくなった。
    痛みが続くと、体は麻痺する。代わりに悲しくなる。生きていたくなくなる。
    そんなことがあった。

    理想的な死、と言うものを考えると、複数の人が「あれは見事だった」という死に方がある。
    お風呂に入り、好物のお酒を少し飲み、こたつで時代劇を見ながら「あれ、おじいちゃん息をしていない」と亡くなったり。
    前日美容院に行き、翌日起きてこないまま亡くなったり。
    山が好きで好きでたまらない人が山で亡くなったり。

    ああはなりたくない、という死に方もある。
    延命措置を受けて体中管だらけになり、意識朦朧として亡くなったり。
    長い入院の果てに誰からも忘れ去られて亡くなったり。
    腐り果てた遺骸で見つかったり。

    あれは嫌だという死に方を、医療関係者が進めるのは何故だろう。

    そもそも病気になった弱った状態で、たらい回しをされる現状。
    ここではダメです、と言われ続けるのは、受験や就職活動で複数落ちた経験があるなら想像はできる。
    その「ダメです」が、衣食住すべてにおいて言われ続け、たらい回しをされ続ける、現在の状況。
    痛みは患者が感じるもので、医者が感じる物ではない。
    「耐えがたい苦痛」が、本人の自己申告でしかない以上、医者がそれを信じてくれなければ薬ももらえない現状。
    その人間が「自分の尊厳」であると信じているものが奪われ、永遠に戻ってこなく、代替えも見いだせない状況が「好転しますよ」としか言えない医者や看護師を信用する気にはならない。
    さらにその医者や看護師が、患者であり障害を抱える事になった自分よりも社会人である身内の意見を優先するとなったら。
    だったら、まだ自分に体力があるうちに、最後の自分を守る手段として医者による自殺幇助を受けたいと思うのは、ごく当たり前のように感じる。

    まず、苦痛なく生きること。
    次に、病気になってしまったら苦痛を受けることなく治療できること。
    治療ができるできないに関わらず、生きていてよいのだと肯定されること。
    自分にとって生きる、死ぬとはどういうことか静かに考える時間が十分に取れること。
    周囲の人とそれを共有する時間と余裕があること。
    その上で、満足した死に方をすること。
    この順番には納得がいく。

    ----
    P99辺りからの「自分の事は決められないけれど、他人のことは決められる日本人」というのにとてもしっくりきた。
    安楽死反対派の死への同調圧力とともに、今の日本では生への同調圧力が強い。

    P16
    >日本には安心して死ねる場所がない
    これは本当にそうだと思う。
    妊活をして産まれて、幼稚園から大学まで受験して、会社に入って、婚活をして、妊活をして、終活をして。
    スナック菓子のベルトコンベアみたいに流されていって、不良品は跳ね出して。
    賞味期限内の正規品だけが正しい国民みたいだ。

    P46
    安楽死と尊厳死の違いについて。
    ・積極的安楽死…医師が注射など手を下す。
    ・医師による自殺幇助による安楽死…医師は薬などを患者に手渡す。
    ・消極的安楽死、もしくは尊厳死…本人の意志に従って、苦痛を止める以外の医療行為を止める。

    P177
    「言葉をふるまう」
    これ、すごい。この言葉がすごい。

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著者プロフィール

川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター、腫瘍内科/緩和ケア内科医長。
一般社団法人プラスケア代表理事。
2005年北海道大学卒。室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、2007年から
川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。その後2009年から栃木県立がんセン
ターにて腫瘍内科を研修。2012年から現職。現在は抗がん剤治療を中心に、緩和ケア
チームや在宅診療にも関わる。また一方で、一般社団法人プラスケアを2017年に立ち
上げ代表理事に就任。「暮らしの保健室」「社会的処方研究所」の運営を中心に、地
域での活動に取り組む。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医。
著書に『がんを抱えて、自分らしく生きたい――がんと共に生きた人が緩和ケア医に
伝えた10の言葉(PHP研究所)』、編著に『社会的処方:孤立という病を地域のつな
がりで治す方法』(学芸出版社)などがある。

「2020年 『だから、もう眠らせてほしい 安楽死と緩和ケアを巡る、私たちの物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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