街場の日韓論 (犀の教室)

  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794970404

作品紹介・あらすじ

아이고(アイゴー)、困っています。
もつれた結び目を解くために、みなさんの知恵を貸してください。

荒れるネット言説、政治のねじれ、歴史修正主義……
日韓をめぐるさまざまな事象は、「問題」ではなく「答え」である。
11人の寄稿者が考える、日韓相互理解への道すじ。


K-POPや韓国コスメ、文学作品の翻訳などカルチャー面での交流が活発な一方、
泥沼化した政治情況につられてヘイトや嫌韓本が幅をきかせる日韓関係をめぐる言説。
「戦後最悪」とも言われるターニングポイントで、もつれた関係を解きほぐす糸口をどう見つけるか?
韓国での講演や著書刊行が続いている内田樹先生を編者に、思想、歴史、安全保障、文化などの観点から、
11名の執筆者が両国関係のこれからを考えるアンソロジー。
「軽々には解けそうもない問題」を前にして、日韓相互理解の道を探る試み。

感想・レビュー・書評

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  • 内田樹を編者とした、「日韓関係」をテーマにしたアンソロジー。
    内田樹による、寄稿者への依頼文によれば、本書を編んだ趣旨は、日韓関係が「たぶんいまの日本において最も喫緊な論争的主題」であるからという内田樹の考えによっている。
    本書は2020年4月の発行であるが、編者が寄稿を依頼した時点では、内田樹の認識によれば、「日韓関係は僕が知る限り過去最悪」という状態。一方で、日韓関係はクリアカットに、こうすれば解決できるというような解決策があるわけではなく、無数の問題が絡み合って、ほどけにくくなっている状態。それでも、問題が絡み合って出来ている結び目の一つだけでも良いので、「ここは、こうやるとほどけるかも知れないという知恵をご教示頂きたい」という趣旨で編まれたものだ。
    内田樹も一文を寄せているが、その他の寄稿者は、小田嶋隆、白井聡、鳩山由紀夫(元首相)、平田オリザ、その他といった方々で、本当に色々な観点から文章を寄せている。内容は、内田樹の書いている通り、一刀両断といった類のものではなく(白井聡を例外として)、「一気に解決できるとは思えないけれども、熟慮しながらやっていこう」という内容だ(乱暴にまとめると)。
    韓国の人たちに対してばかりではないが、一時期、外国人に対してのヘイトスピーチが大きな問題となった時期があった(もちろん、今でもある)。韓国の人たち、あるいは、ヘイトスピーチを行う人の中には、相手に対しての、ゆがんだ優越感があると本書の中で平川克美は書いている。そうなのだと思うが、ゆがんでいるとは言え、ヘイトスピーカーの優越感の根拠の一つであった、日本の経済優位性も失われつつある。だからヘイトスピーチがなくなるわけではないが、ヘイトスピーカーを含め、もう少し皆が足元を見なければいけないのかな、とも思う。

  • 日本を離れて外国に旅した時に
    日本のあれこれを思ってしまうことがある
    日本に帰ってきてからしばらくは
    その旅した国のあれこれを思うことがある

    日本にいるから見えてこないもの
    日本の外にいるから見えてきたこと

    自分の顔を自分で見ることが出来ない
    それでも
    見ようとすることはできる

    在日韓国人の友達と話している時に
    その辺りのバランスのとり方が
    ものすごく上手いなと
    思うことが幾度もある

    本書を読みながら
    なんども そのことが
    頭に浮かんできました

    平田オリザさん
    伊地知紀子さん
    山崎雅弘さん
    平川克美さん
    の論考が身に沁みました

  • “困ったときには素直に困る。わからないときは「わからない」と正直に言う。うまくことが運ばないときにはしょんぼりする。その方が知力体力ともに働きがよくなるということは長く生きてきてわかったことの一つです。別に逆説でもなんでもなく、ほんとうの話です。”(p.9)


    “知らないなら知らないで、自分自身が無知であることを自覚したうえで、そのことを前提にものを言わなければならない。”(p.139)


    “一人ひとりの生のほんの一部を教えてもらうことで、世界がいかに複雑で自分がどれほど無知なのかという事実に向き合う。”(p.223)

  • 日韓の間にある悪感情の源泉や、最近の韓国の行動の根っこが知りたくて読みました。
    初めての知識や考え方に、衝撃を受けてくらくらしました。
    どんなこともまずはちゃんと知ることから。そうであるのに、知ることすら阻害され、なかったようにされているのなら、問題の解決なんて望むべくもない。
    もう少し、この辺りのものを知ってみようと思います。

  • memo

    平田オリザ
    中田考
    松竹伸幸

  • 平田オリザさんを学長予定で迎える芸術文化観光専門職大学は、韓国の大学の映画・演劇の学部のカリキュラムをモデルにしているようでした。韓国で俳優を目指そうと思ったら大学で学ぶという選択肢があっても、日本では確かに一般的ではないと思いました。伝統芸能も殺陣も大学で学び、現代劇でも時代劇でも衣装を着こなし、お芝居の即戦力になる卒業生の活躍が楽しみです。

  • 日韓の問題、韓国の近代史、知らないことがたくさんあり勉強になった。

  •  印象に残ったのは、両国における文化の価値の相違について書かれた平田オリザの文章と、地図から消された過去の歴史について書かれた山崎雅弘の文章。
     そして、平川克美が紹介した茨木のり子の詩、「くりかえしのうた」。「分別ざかりの大人たち/ゆめ 思うな/われわれの手に余ることどもは/孫子の代が切りひらいてくれるだろうなどと/いま解決できなかったことは くりかえされる/より悪質に より深く 広く」
     知ってたはずなのに「自分の腹に局部麻酔を打ち、自ら執刀」したか、お前は、ばかものよ、と頭を叩かれたのでした。

  • 日韓関係は過去最悪である。一個人として「何とかしたい」という思いから手にした一冊。日本の植民地支配に関する違法性の根本を明快に説いた、松竹伸幸氏の論考が非常に勉強になった。また、安重根義士記念館等、日本にとって「都合の悪い施設」が日本のガイドブックの地図から消されているという事実を指摘した、山崎雅弘氏の論考には衝撃を受けた。「知る」だけではなく、正面から向き合い、理解することが我々にはまだまだ足りていない。そう痛感させられた。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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