森を見る力: インターネット以後の社会を生きる

著者 :
  • 晶文社
3.71
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本棚登録 : 165
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794968388

作品紹介・あらすじ

インターネットは社会を便利で快適なものに変えたが、一方で人間の生命力を弱めていないか。「木を見て森を見ず」の言葉どおり、わたしたちは細部にこだわるあまり、全体を見通す目を失ってはいないか。ネットがあたりまえのものになり、データが氾濫する時代には、データではなく「森」を見よ! 数々の企業、商品開発、広告戦略、メディア、教育行政の現場に携わってきた著者が描く、あたらしい情報社会の見取り図。

感想・レビュー・書評

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  • Twitterでオススメされてて読んだ。
    「この手の本は、話がバラバラだから意味がない」ではなく、色々な経験からくる考えを通して、筆者の思想の幹になるものを感じるものなんだろうなと思う。
    それを、こういう考えだ、それにはこの3つの理由があって、とかって圧縮してしまうと抜け落ちる情報があるんだと思う。

    本文に関しては、特に戦後からの日本の移り変わりの話。結局次の日本はどうなるんだろーと考えた時に自分で意思を持って作品を作ったりそれを編集する人が必要で、そのコアの部分は外注するべきじゃないなと思った。

  • インターネットは社会を便利で快適なものに変えたが,一方で人間の生命力を弱めていないか。「木を見て森を見ず」の言葉通り,私たちは細部にこだわるあまり,全体を見通す目を失っていないか。ネットがあたりまえのものになり,データーが氾濫する時代にはデータではなく「森」をみよ!数々の企業,商品開発,広告戦略,メディア,教育行政の現場に携わってきた著者が新しい情報社会の見取り図を提供している。 
    *推薦者(教教)F.T
    *所蔵情報
    https://opac.lib.utsunomiya-u.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB00375321&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • インターネットが当たり前の世の中になって、既成の行政、企業、流通、教育などのシステムがどんどん陳腐化している。そういう波の中にあって、どのような視点でサーフィンしていくべきかというテーマ。著者はロッキング・オンの創刊者、デジタルメディア研究所所長。

    2012年4月23日のオリコンによるCDシングルデイリーランキングではベスト3のB'zの曲が693枚で過去最悪の数字になったなど、パブリッシングの驚くべく変容ぶりを表す事例に溢れている。

    インターネットの「中抜き(既存の代理店抜き)」時代においてこそ、情報を自分なりに編集する力が如何に必要か腹落ちする一冊。

  • 言っている事のもっともらしさは非常に感じる。

    しかし、文章に鋭さがあまりなく、何となく冗長的に語っている感があるし、この人以外でも同様の主張をしている人・本はあると思うので、特段この本を指定して読んでタメになる部分はあまりなかったように思う。

    結局短期収益思考とか、すごく近視眼的な見方に依存するのではなくて、多面的・長期的に観ることが大切だ、そう言いたいのだろうけど。

  • 現代の情報化社会を俯瞰的に見渡す「森を見る力」の大切さについて。

    単なる懐古のような記述もあったが頷ける点も多く、例えば紙媒体の書籍の衰退についての「僕たちの世代は、インターネットがなかった時代と、インターネットが普及していく時代の両方を知っている。(中略)両方知っている端境期の世代古紙、本の意味と価値を再検討出来る立場にいる。そして、その再検討の中からしか、未来の書籍文化は現れてこないだろう」(P168)という記述などは、改めて書籍との関わり方を考えさせてくれる。

    また広告について論じた章で、「イギリスでは義務教育のカリキュラムの中に「広告教育」が入っていて、その内容は「広告はすべて嘘だから信用しないように」という広告リテラシーの授業である」(P181)という記述があった。以前に比べ広告の意味や質が加速度的に変化し、消費者はその速度について行けていないように感じることが多い。このイギリスでの教育の内容にはとても興味があり、何か参考文献を探して読んでみたいと思った。

  • 渋谷陽一と共に『ロッキング・オン』を創刊するなど、メディアビジネスの最先端にいた著者が説く『森を見る力』。人や社会とのつながりにおいて最早なくてはならないインターネットとの関わりについて、敢えてインターネットから遠いところに視点を置いて(副題のとおり)「インターネット以後の社会を生きる」ことを考察する。
    戦後社会の中で変質したものを順にたどるところから始まるのだが、どれもこれも膝を打つものばかり。「どこか違和感がある」という表現にとどめて批判せず、具体的な提言があったり、自身が実際に行っている活動に言及したり。行動の伴った人の言葉はやはり強い。
    また、語り口にまったく力みがない。これだけの中味なら、ついつい筆にも力が入りそうなものだが、そこはインターネット出現前からメディアを引っ張って来た第一人者。「力作」という形容がまったく似つかわしくないトーンに、逆に冴えと自信が感じられる。
    こんな人に「未来の芽を探していこうと思う」と言われてしまうと、ワタシも何かしないと、という気になってくる。

  • いろいろなところに書き散らしたものをまとめて一冊にした本らしいので仕方ない部分はあると思うが、いろいろと内容が散漫で、最終的にこの本で読者に対して何を伝えたかったのがぼやけてしまっているような気がするが、それは本書のタイトルが「森を見る力」ということなので、個別のトピックスに対する細かいツッコミをしてはいけないという釘を刺しているのかもしれないなどと邪推。カッコよく言えば社会評論だが、とりとめもない雑記もしくは随筆のようにも思える。これで1800円も支払うのはいかがなものか。

  • 日本が戦後流通システムの中で不効率と思われる中間業者を増やしてきたのは「社会の全ての人が豊かになる」ことを目的としていた。つまり、アメリカン・ドリーム は個人が対象であったようにジャパニーズドリームとは社会全体で夢をみたのである。

    一方、官僚たちの天下りに関しても理由があった。公務員の給与ルールに縛られて、初任給やボーナスを高騰させるわけにはいかず、若い優秀な人材を集めるためには退職後のメリットを増大させる必要があった。

    といった具合に日本社会の構造変化の歴史や理由が分かりやすく書かれていて、なるほどと思う部分が多かった。

    そして、現在、インターネットが登場すると今までとは違い「中抜き」の構造が出来上がった。つまり、右から左への物が売れなくなり「量から質へ」と変化し価値の最大化が問われることになった。

    それは個人の想いや生活感覚の上に自分たちの仕事やスタイルを獲得していくことにつながっている。

    その延長線上に都市から、もう一度新しい村を創造することへ移り、新たなコミニュティが出来つつある。

    そんな中果たして何が出来るのか、そして仕事としてやっていけるのか。本当の意味で個人の価値が問われている気がする。

  • 「森を見る力」とは、「出来るかぎり遠くの地点から、現在の自分を見る力のこと」と本書の最初で定義されています。
    具体的にどのようにするのかというと・・・、全くわかりませんでした。
    ひととおり読み終えてみて、著者がいう「森を見る力」とはどのように身につけるのか、その方法の糸口も見えないモヤモヤとした感情が残りました。

    この本には何が書いてあったのか。戦後の社会変容について、企業は、政治は、組織の在り方はどのように移り変わったのか。出版、テレビ、音楽、ゲームはどう変わっているのか。また、インターネットの登場で私たちの生活がどのように変化し始めているかなどが、多様な事例とともに紹介されています。

    まるで、NHKを朝から晩まで見ているかのようでした。

    筆者が伝えたいことは何だったんだろうと改めて読み返すと、「森を見る力」について書かれているのは序章の全7ページだけではないでしょうか。

    「出来るかぎり遠くの地点から、現在の自分を見る力のこと」とあるように、この7ページ以外の約300ページの情報は、私が出来るだけ遠くに行くためのきっかけとなっていて、「多様な情報を詰め込んだけど、あなたはこれらのことをどう思う?」というのが筆者のメッセージではないかと。

    興味のない、知らない情報に触れたとき、それをどう解釈して自分の考えを出せるか、それが森を見る力なのかもしれません。
    だとすると、この本を読んだときにポカーンとした私は、まだまだ森をみれていないことがよく分かりました。

  • 技術が進歩した結果、様々な物事の利便性が向上し、個人の能力以上に出来ることが増えた。
    一方で人間そのものの、思考力や身体能力が低下し、今まで当たり前に出来たことが困難になりつつある。
    進化し過ぎた日本で、失われていくことは改善しつつ、得られた技術をいかに活用すれば、人々暮らしが豊かになるか、様々な事例や体験をもとに、提案された一冊。

    一章
    地域コミュニケーションについて
    ホームガード、お馬鹿タレント アスクルのインデックス、防波堤がない岩手県、出産 病院、テレビ、買い物 車、効率化された教育、リーダーシップがあり過ぎる団塊世代、最後の口コミビックリマンチョコからposシステムへ、マーケティング調査から商品開発、製販分離、奪うマーケット戦略、セブンプレミアムは見た目だけ、ネットで投票にしなかったインターネット投票、能力のない政治家 奴隷官僚、コンドームによるバースコントロール、社会を必要としないニート、モンスターペアレンツに対抗した学校のコンセプト、ショッピングストアの書店、本と趣味のディスプレイ、スタバ本の脱広告、ブックオフの仕組みと古本屋、そろばんと想像力、テーマやセレクトにこだわった書店、ペニオクのステマ、

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著者プロフィール

1950年2月4日、東京生まれ。'72年、渋谷陽一らと音楽投稿雑誌「ロッキング・オン」創刊。'78年、全面投稿雑誌「ポンプ」を創刊。その後、さまざまなメディアを開発する。'83年、定性調査を定量的に処理する「気分調査法」を開発。商品開発、市場調査などのマーケティング調査活動を行う。80年代後半より草の根BBS「CB-NET」を主催、ニフティの「FMEDIA」のシスオペを勤める。'96年、株式会社デジタルメディア研究所を創業。インターネット・メディア開発、企業コンサルテーションなどを行う。アーツカレッジ・ヨコハマ(旧神奈川情報文化専門学校)のマルチメディア科を立ち上げプロデュースを行い専任講師。武蔵野美術大学非常勤講師、日本デザイン専門学校講師などを経験。現在、多摩大学経営情報学部客員教授。キーマン・ネットワーク「コンセプト・バンク」を運営。
〈著作〉
『企画書』『メディアが何をしたか?』『なぞのヘソ島』『一応族の反乱』『生意気の構造』『暇つぶしの時代』『やきそばパンの逆襲』『ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。 』『希望の仕事術』『森を見る力』ほか共著、編著多数

「2016年 『ロッキング・オンの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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