人間がいなくなった後の自然

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794226471

作品紹介・あらすじ

人間が消えれば、自然は回復・新生する――
これはダークツーリズムでも、廃墟趣味でもない、新時代の「環境人文書」である。

サンデー・タイムズベストセラー/ジョン・バロウズ賞受賞/英国王立文学協会オンダーチェ賞最終候補…各方面から大絶賛!

戦争の緩衝地帯、かつての産業の衰退地、放射能汚染地域、災害跡地…人間が見捨てた土地は、
実際にはリセットされた大地で自然が新しい環境として遷移し、地球上のほかのどのエリアとも異なる豊かな場所となっていた。
世界中の荒廃し果てた土地を訪ね、自然の回復・新生の実態を追った、人間中心主義以降の時代の、
環境人文学の最先端を行く野心作。

「二年間かけて、最悪のことが起きてしまった場所を旅した。戦争、原子炉のメルトダウン(炉心溶融)、自然災害、砂漠化、毒化、放射能汚染、経済崩壊に見舞われた風景である。世界の最悪の場所ばかりを次々に並べる本書は暗黒の書というべきかもしれない。しかし実のところ、本書は救済の書なのである……ある場所が見違えるほど変わってしまい、すべての望みが絶たれたように見えるとき、どのようにして別の種類の生命の可能性を育むのだろうか。」
(本書より) 

●目次
第一部:人間のいない間に
第一章 荒地:スコットランド、ウエスト・ロージアンのファイブ・シスターズ
第二章 無人地帯:キプロスの緩衝地帯
第三章 旧農地:エストニア、ハリュ
第四章 核の冬:ウクライナ、チョルノービリ

第二部:残る者たち
第五章 荒廃都市:アメリカ合衆国、ミシガン州デトロイト
第六章 無秩序の時代:アメリカ合衆国、ニュージャージー州、パターソン

第三部:長い影
第七章 不自然な淘汰:アメリカ合衆国、スタテンアイランド、アーサー・キル
第八章 禁断の森:フランス、ヴェルダン、ゾーン・ルージュ
第九章 外来種(エイリアン)の侵略:タンザニア、アマニ
第一〇章 ローズコテージへの旅:スコットランド、スウォナ島

第四部:エンドゲーム
第一一章 啓示:モンセラトの首都 プリマス
第一二章 大洪水と砂漠:アメリカ合衆国、カリフォルニア州、ソルトン湖

感想・レビュー・書評

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  • 事故や災害などで人が住むのを辞めたあとに再生していく自然の話。
    放射能汚染など、とても人が住めないとされているところにも動物はもどってくる。動物も障害を発生しているという説もあれば、むしろ調子がいいという説もあるらしい。なんにせよ、人がいなくなると自然は豊かになっていくのだ…
    どうしたらいいんだろう?

  • いつも思う、もう一つ物足りない。もう少し意見や考えを入れていいと思う。そうさせない、何か。
    タイトルや序文を読むと、ホラたまらないでしょう?だけど、正直、事例集。。
    私は、地球の為を思えば人類は滅するべきだと思ったのは、例の事件のあった1995年。学生時代。
    人類が滅した後は、果たして回復するのか、気になるでしょう?
    その時は、もう近い気がする。それに対して、作者は、個人の人生では見られないとしているが、いかに。
    次は、小説を読もう。

  • 自然災害、紛争、汚染、経済的理由などから人間が住むことをやめた(辞めざるを得なかった)土地のその後を描くお話
    チェルノブイリやキプロス島の緩衝地帯、フランスのゾーン・ルージュなどに筆者が実際に訪れてレポートしてます
    故意に作り出すのは難しい大規模な実験の結果を見てるようで非常に興味深い
    自然破壊された土地を見ると人間は何かせずにいられないが、それは近世まで続いてた悪名高い治療法の『瀉血』と同じ部分もあるという記述がすごく納得
    でも、病気の治療と同じで放置したほうがいいもの、治療したほうがいいもの、の療法があってその見極めがとても大事だというのもまた真実だと思う

  • かつて戦場となった場所。原子炉のメルトダウンの跡地。人間が自然を破壊しつくした後に、何が起きるのか。ほのかに未来への希望が残る1冊。

    ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BD01877330

  • sk

  • 戦争、災害、産業の衰退、原発事故、薬物汚染などの原因で手つかずとなり人為の及ばなくなった土地を巡る紀行文であり、行く場所行く場所で人の想像を超えて豊かな様相を見せる自然に感嘆の声を上げる。このレポートを読むと、自然環境を保護するためには人間社会から切り離すのが一番いいと思わざるを得ない。もちろんその自然は人間側の都合とは関係なく繁栄するのだが。

  • チェルノブイリの放射線汚染
    第一次世界大戦塹壕跡の重金属汚染
    デトロイトの廃屋街
    人がいなくなり家畜だけ残された孤島

    等における、驚きの自然の再生力
    果たして人間がいなくなった後の世界はディストピアか、それとも地球にとってはユートピアか

  • 戦争や自然、災害、事故、汚染、犯罪、経済的な問題など、様々な理由から人間が住まなくなった場所がある。そうした場所では放置された自然が想像よりもはるかに早く回復し、周囲よりも豊かな生物多様性を持った生態系が回復することがあると言う。 しかし、回復した自然は、決して人間に優しいものではない。本書は、そうした場所をめぐるダークツーリズムであり、グリーンツーリズムである。そんな旅の記録だ。

    さりとてこれは、環境を破壊し続けてきた人間に対する免罪符を与えるものでもない。 人間の業の深さも至るところで感じずにはいられない。

    環境活動家と呼ばれる人たちの振る舞いに傲慢さを感じることがある。環境を壊したのが人間ならば、環境を回復することができるのもまた人間に他ならないと言う類の傲慢さだ。本書は人間に環境に対してもう少し謙虚に向き合うべきではないかと教えてくれているように思う。

    怖い場所ばかり出てくる。でもだからこそ行ってみたい気にもなる。

  • 刺激的な怖い怖いの声。
    「科学的」という、偏った切り取り。
    メディアやSNSを賑わすのはそうした情報。
    政府や事業者もそうした声に、ムキになって答えざるを得ない。とにかく自分の身にマイナスが近づくのぎイヤなみんな。

    じゃあ現地はどうなっているか。
    実際訪ねてみた。
    という本。

    「自然」は、怖い怖い、イヤだイヤだの声で人が近づかない場所で、のびのびイキイキと繁茂している。
    見たり、体験したりする、ということにも,偏りや、勘違いが潜むとはいえ、怖い怖いの声ばかりにウンザリするところに、こうした側面もある、という紹介があることには意味があると思う。

  • 「人間がいなくなった後の自然」(カル・フリン : 木高恵子 訳)を読んだ。
これは素晴らしい。
お勧めです。
単なる紀行文ではなく、示唆に富んだ名著。
衝撃的過ぎて言葉がうまく出てこない。
人間の愚かな行為(戦争、事故、汚染、etc……)によって自然が破壊され人間が去ったその場所を、自然は倦むことなく癒し育み人の手を経ない本当の自然に戻して繁栄を謳歌する。
しかし、もちろん自然に良い影響を及ぼしたのは人間のその愚かな行為(戦争、事故、汚染、etc……)ではない。
それらは総じて、人間にとっても自然にとっても破壊的なのだから。
世界的に増加している耕作地放棄が炭素隔離に一役買っているという皮肉な現象などなど、目から鱗である。
気になった文章をひとつだけ引用。
『アルド・レオポルドは、次のように言った。自然の質を見抜く私たちの能力は「芸術と同じように、きれいなものからの始まる」。その後、「美の段階を経て、まだ言語化されていない価値観」へと広がっていく。彼が言いたかったのは、知識は鑑賞を深めるということだ。』(本文より)
『まだ言語化されていない価値観』てのがいいね。

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著者プロフィール

カル・フリン(Cal Flyn)
作家・ジャーナリスト。サンデー・タイムズ紙とデイリー・テレグラフ紙の記者であるほか、ザ・ウィーク誌の寄稿編集者でもある。オックスフォードのレディ・マーガレット・ホールで実験心理学の修士号を取得。著書にオーストラリアの植民地問題を扱った「Thicker Than Water」がある。

「2023年 『人間がいなくなった後の自然』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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