旅の効用: 人はなぜ移動するのか

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794224361

作品紹介・あらすじ

インドを中⼼に世界を旅してきたジャーナリストが、
⾃他の旅の記憶をていねいに辿りながら
「⼈が旅に出る理由」を重層的に考察するエッセイ。 
なぜ人は何度でも、何歳になろうと旅に出るべきなのか。
それは旅こそが私たちにとって最⾼のセラピーであり、
⾃分を育む⾏為にほかならないからだ。
旅好きも、旅が遠くなった⼈も必読の滋味あふれる旅論。
【スウェーデン発、欧州ベストセラー!】

(本書より引用)
不機嫌という病を治すにはまず、自分の安全領域から外に飛び出すことだ。
そうすれば、すべてをコントロールしなくても日々がうまく運んでいくと気づくこともある。
いったん異文化の中に身を置けば、足が地に着かなくなっても
「すべてうまく行くだろう」と信じることができる。

変化がなければ心は消耗する。だが新たな見方をするようになれば、新たな展望が開ける。
旅をすれば感覚が研ぎ澄まされ、世間や家庭内の状況に対して注意深くなる。
今まで無関心だったことにも、不意に何かを感じるようになるのだ。
今まで見えていなかったことが不意に見えてくるのである。

美しい言葉に言い直すとすれば、旅と遊牧民の生活様式こそイデオロギーだった。
旅は、前もって予見可能であってはならず、ページを開いた瞬間の
本のようでなければならなかった。
旅人は、自分が今から何と出会うか、誰と遭遇するかを知っていてはならなかった。

感想・レビュー・書評

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  • なかなかのボリューム。
    旅行記というより放浪記。文章の癖が気になる。
    旅行は帰る場所があることが前提。
    交通用具が発達して、旅のスタイルも効率化されているけど、時間を気にせず旅したい。

  • 広辞苑によると旅は「住む土地を離れて、一時他の土地に行くこと。 旅行。 古くは必ずしも遠い土地に行くことに限らず、住居を離れることをすべて「たび」と言った。」 とされている。旅の前提は、居場所があるということのようだ。「スウェーデンの生活が安定しているからこそ、そしてスウェーデンにいれば安心だからこそ、しばらくスウェーデンを離れるのも容易なのだ。もしスウェーデン社会が荒れていたら、旅立つのは不安だろうし困難だろう。しかし、ポジティヴなことであれネガティヴなことであれ、ともかく何も変わらないからこそ、彼女は冒険家になることができ、不意に姿を消したり、不意に戻ってくることができるのである。」P173。なぜ私たちは旅をするのか?レクストレームは「旅は、私たちがホモサピエンスであることと関連がある。好奇心だ。「無用な」知識を求めて努力し、知恵を拡大し、視野を広げ、世界像を拡大し、混沌を整理し、秩序を確保しようとする意思である。」P 154。生まれつき好奇心があるから、自宅を出て遠くに行く。旅の効用は?ユーリア・ツィンマーマンの研究によれば、「旅の前までは当たり前と思っていた事柄について新しい見方をになり、物事を高く評価するようになることが判明した。旅をした人は新たな体験に対して開放的になり、精神も安定し創造的になるが、それは旅が私たちの言動を調整し、行き先の習慣を受け入れることを教えてくれるからだ。旅をする人は他人に共感するようになり、容易に妥協して他人とうまくやっていくようになる。」P 263。また著者のガールフレンドカーリンは「あなたは異文化の中に入って初めて、自分を見つめ始めることができるのよ。別の文化に反
    応することによって、自分が何者か、自分がどこから来たかを理解する。異文化の人たちから奇妙だと思われることによって、あなたの自画像は正確になっていく。旅は鏡のようなものよ。そして最高のセラピー」P 266。旅とは自分の置かれた環境から出て自分を客観視する行為なのかもしれない。

  • 純粋な旅行記ではなく、旅から他の旅行記や文学作品など様々なものを横断しながら、旅とは、そして人間とはについて深掘りしていく。

  • スウェーデン人ジャーナリスト、ペール・アンディション氏による旅のエッセイ集。

    全編旅行記のような内容を想像していたが、アンディション氏自身が若い頃に経験した旅の様子や、旅行作家の思想についてなどの記載があり、割と盛りだくさんの内容。インドの列車旅行やヒマラヤトレッキング、そしてギリシアの島々など、決してパック旅行では体験できない旅が描かれている。

    人は旅を重ねるごとに多くの事を考え、物思いに耽り、時には一冊の本として形にする。これも旅の効用の一つなのかもしれない。

  • 不機嫌という病を治すにはまず、自分の安全領域から外に飛び出すことだ。世界を旅したジャーナリストが「人が旅に出る理由」を重層的に考察。味わい深い旅論!(e-honより)

  • 旅の本質というか、旅をすることでどうなるのか?
    いろんな角度で描かれていて、旅の本質を改めて感じさせてくれます

  • 自身が外に出て感じていたものの、言語化できていなかったことを、言葉にしてくれているシーンが多々。
    ワクワクの再体験。

  •  Kindleのセール本で何かいいのないかな〜とディグする習慣があるのだけど、そこで見かけて読んでみた。コロナ以降、全くもって旅をすることがなくなり早2年。徐々に解禁ムードが漂う中、改めて「なんで旅行するんだっけ?」という基本的な動機を思い出させてくれた気がする。
     著者はスウェーデンの方で旅関連の著名な雑誌を立ち上げた人らしい。タイトルがだいぶ硬いので、理詰めでガチガチの議論をしているかと思いきやエッセイで読みやすい。本当にいろんな角度で旅について論考しているのだけど、大きな主張としてはツアーではなく、メジャー観光地ではなく、ゆっくり、長くといったスローライフならぬスローツアーのすすめとなっていた。自分自身は著者の考えと近くて、いわゆる観光名所よりも地元の人がどんな感じで暮らしているのかに興味を持つタイプなので主張に納得することが多かった。ただ何ヶ月も旅に出れるわけでもなく著者と比べて時間に限りがある生活ゆえに予定詰めすぎてセカセカすること多いなと思っていたので、旅慣れた場所で時間をかけてゆっくり過ごす、みたいなことが今一番したいかも。
     また著者はインドに心酔しているようで自身のインド訪問時のユニークなエピソードが色々あって興味深かった。ただ旅に対するモンド映画的な態度は若干気にかかった。つまり、あくまで自分はスウェーデンという帰る場所があり、それありきで発展途上国をたまに訪れることで楽しむ的な。それは発展途上国の発展を望まないという態度に映らないでもない。旅の結果、外貨が現地に落ちるのだからいいじゃない、という論は本著でも展開されていたけど、昔からこの手の善に関する議論にすんなりと乗れない自分がいることを再認識した。
     完全インドア派がますます加速しているので以下のラインを意識しながら書を捨てて旅に出たいものです。本著内で絶賛されていた「パタゴニア」を次は読もうと思う。
    —————————————————————————
    体験が人間を形成してくれるのだ。私たちは体験でできているのだ。体験の結実なのだ。体験する印象が増えれば増えるほど、私たちは人間として成長する。

  • 自分が求めていたような内容ではなかった。著者の旅行記を書きつつ、過去の旅行記から、人が旅行をする理由を著者なりに解説するような内容であった。もう少し客観的な内容(新書的な内容)を期待していたので、ちょっと期待外れだったかな、という印象。

  • ヒントだらけの大切な本でした
    早く旅に出たいよ。

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著者プロフィール

ペール・アンデション(Per J. Andersson)
スウェーデンのジャーナリスト・作家。1962年、同国南部のハルスタハンマル生まれ。同国で最も著名な旅行誌『ヴァガボンド』の共同創業者。過去30 年にわたってインドを中心に世界各地をバックパッカー、ヒッチハイカーとして、あるいはバスや列車を利用して旅する。現在ストックホルム在住。2015 年刊行の前著(インドからスウェーデンまで自転車旅をし、スウェーデン人女性と結婚したインド人についての伝記)がベストセラーになり、一躍人気作家となる。

「2020年 『旅の効用 人はなぜ移動するのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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