文庫 日本人のための現代史講義 (草思社文庫 た 6-1)

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794224163

作品紹介・あらすじ

1945年8月、大きな戦争は終わった。しかし世界は、いくらか平和になり、安定が戻っただけだった。
その後も、スエズ危機、中印紛争、ベトナム戦争、ニクソン・ショック、冷戦崩壊、同時多発テロと大事件が続く。
そして今日、日本海を挟んでロシア、中国、北朝鮮そして韓国と、いずれも日本との関係は不安定なままで、
背景には歴史認識をめぐる問題が伏在している。

もはや日本は、「“ごっこ”の世界」にとどまっているわけにはいかない。
では、日本の正確な現在地はどうなっているのだろうか。
未来に備えるための画期的な入門現代史。『明日を拓く現代史』改題。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の将来を担う若者に向けに書かれた現代史のエッセンス。語り口も面白く一気に読める。感動的。教養としての歴史の蘊蓄ではない。「当用」としての歴史。現代と未来を生きるための歴史観。アラカン世代は如何に彼等をサポートできるかを考えねば。多くの人に読んで欲しい。

  • 3日前、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻しました。そして、今日、その行為の制裁として、アメリカと欧州が国際決済体制「SWIFT」からロシアの一部銀行を排除する、とのニュースが繰り返されています。詳しくはわからないけど、これがロシアにとってのダメージになるのは、世界の経済がドルを基軸通貨として動いているから、なのではないのでしょうか?この前に読んだ、ちくま新書「産業革命史」では今回の冬期北京オリンピックで中国がデジタル人民元の実験に踏み切るのはドルの呪縛から離れるため、と書かれていました。アメリカの強さは、ドルの強さ。そのドル覇権への道を本書で初めて知りました。それは第二次世界大戦にアメリカが参戦する前のイギリスとの条件闘争から始まります。連合国同士のイギリスとアメリカは,協力して枢軸同盟と戦うだけではなく、味方の中でポンドとドルのギリギリの戦いもあったのです。パックス・ブリタニカは自然にパックス・アメリカーナに移ったのではなく、ドルがポンドの地位を強奪した結果なのでありました。なるほど…第二次世界大戦から今に至る現代史が、現在進行形の物語として理解出来ます。著者は安倍総理のスピーチライターであった、というバリバリの保守論客。そのリアルな世界観は、今起こっていることの補助線にもなります。アメリカ、インド、中国、ヨーロッパ…大国の野望が作る構造ですが、しかし、一方、今の世界はイアン・ブレマー曰くの「Gゼロ後の世界」,つまりアメリカ、さらにはG7という中心点の存在感の低下が現実となっている世界だと思います。本書の心理的基盤として冒頭から語られる1964年の東京オリンピックの誇り、それがTOKYO2020では消え失せているような気がします。21世紀の世界においては、あまりに懐メロに聞こえるのではないかな、と、つい感じてしまいました。人口減少社会の中で、著者の重い定める日本の進むべき道についても、ロマンチックモードではなくリアルモードで読みたいと思いました。

  • 自分自身の歴史認識の修正作業中。この本は、もともと『海上自衛隊士官候補生のための現代史講義』と言う感じの題名が著者の念頭にあったとのことで、若い人向けですが、私が読んでも多々参考になりました。

  • 知らないことたらけで目から鱗でした。特に中国とインドの関係は初めて知った。

  • 安倍総理のスピーチライターを勤める元外交官による日本を取り巻く現代史について述べたもの。面白い。米英の覇権争い、中国やインドについて、ブレトンウッズ体制、ニクソンショックなど、世界的視点から日本人として知っておかなければならい歴史について述べている。金融に視点を置いた『通貨燃ゆ』の内容も素晴らしかったが、本書も国際関係や安全保障、経済の現代史の主要な事柄を取り上げてわかりやすく解説しており、たいへん参考となった。まさに新しい時代を指導的立場で担っていく人たちに必要な知識だと思った。
    「(野村吉三郎)もし対米戦を避けることができ、日本が国力を温存したならば、英国を助けていずれ戦争に加わるのが必至の米国を含め、有力国という有力国がすべて戦争で国力を消費する中、日本のみはそれをしないでしのぐのであるから、ひとたび欧州の戦争が終わるや、日本は世界に比類ない強国として登場することになるのだ。だから対米戦だけは回避すべし」p27
    「(戦後日本人)当時の先人たちが参加しただろう国際会議のあれこれを想像してみるといい。非欧米、非白人として、いつどこへ行っても唯一の存在だったであろう。同レベルの国々を手を組んで圧力団体を形成できる今日のBRICS諸国は幸いである。そのような同輩をただの一国として持たない日本が入り込もうとした世界とは、もっとはるかに苛酷な何ものかだった。往時の日本人がアジアの代表として強い自意識を持ったのは、このような背景があったからである。それは日本人に、おのれに対する強い矜持(きょうじ)を持たせることともなったのは当然だった」p56
    「(吹浦忠正)「花~すべての人の心に花を~」(泣きなさい~、笑いなさい~)は、喜納が東京五輪の開会式の感動を歌にしたもの」p64
    「(平成天皇(皇太子)の1953年欧州訪問)反日感情の強い英国では、殿下ご一行の長逗留を喜んで引き受けるホテルが存在しなかった」p82
    「(米国務長官)ダレスは先に吉田の謝辞に示唆されていたとおり、相対的に見れば懲罰的要素が極めて少ない対日講和を、欧州諸国や旧英連邦の豪州、ニュージーランドなどへ呑ませるべく八面六臂の外交をした。次いで米国は日本を、戦後の西側貿易体制をなしたGATTに無条件で、かついち早く入れようとした」p83
    「一木一草に霊が宿ると考えたり、何に自分の祖霊が身をやつしているかわからないから生き物をむやみに殺生してはならないと考えたりするのは、インド人と日本人です」p102
    「樋渡由美『戦後政治と日米関係』は、敵を知らずに懐に入ろうとした鳩山(一郎)流外交の危うさについて、米国では国務長官のダレス以下、大方が案じていた様を伝えている。日本では「対米従属」「対米追随」といわれるのを嫌う政治家が、得てしてロシアか中国で得点を稼ごうとしては失敗してきた。その最初の例である」p144
    「(米英中心)戦後経済システムの根幹は、北大西洋両岸の、英語圏のみの力と関与によって築かれた」p153
    「(戦前の国際感覚の欠如)認識格差、情報ギャップが埋まらなかった原因は、おそらく第一次世界大戦を当事者としてどれほど切実に体験したか、あるいはしなかった(日本)かの差に由来する」p163
    「我々が覚えておくべきなのは、米国はこのようにして、世界覇権を英国から文字通りもぎ取った。その際には遠慮会釈などまるでなかったという事実である」p169
    「筆者が外務省で働いていた当時、時折抱いた違和感は、為替のカの字、金利のキの字も目にせず、口にしない毎日を、一国の外交を司る人たちが続けていていいのだろうかというものでした。周りには、ニューヨーク・タイムズの論調を気にかけている人はいても、ファイナンシャル・タイムズなんか読んだことがない、朝日、読売は読んでも日経新聞なんか見ないという人がままありました」p183
    「(変革)第一に変革とは、老人のよくなせるわざではない。余命を数える気遣いをもたず、気力・体力が横溢した若い世代の塊を必要とする。第二に変革には、コミュニケーションがカギを握る。同志的結合は、交し合った会話、送りあった通信の量に比例する。第三に変革は、若者の、ネットワークの、そのもたらすところの「情報における取引コスト」の低さを前提とする。俗にいう「ツーといえばカー」の関係で、それが絶対に必要だ。なぜなら変革とは「同時多発」の営為が力強いうねりをつくり出す中においてのみ可能となることで、渦中にあっては「いちいち相談しなくてもわかる」者たちの活動を前提とするからである」p335

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著者プロフィール

1957年、香川県生まれ。1984年、東京大学法学部卒業後、日経マグロウヒル社(現・日経BP社)に入社。「日経ビジネス」記者として、ロンドン支局特派員など海外勤務も経験。2014年から内閣官房参与として安倍晋三総理の外交政策演説を担当。現在は、筑波大学特命教授。著書に『安倍総理のスピーチ』(文藝春秋)等がある。

「2023年 『日本の「平和」と憲法改正』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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