文庫 異端の統計学 ベイズ (草思社文庫 マ 3-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (650ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794223647

作品紹介・あらすじ

ベイズ統計学は、機械翻訳、迷惑メール除去など身近なITにも利用され、人工知能やビッグデータ解析にも不可欠の、いまや注目の理論。
だが、統計学界の主流派「頻度主義者」により、「ベイズ」は200年近くの長きにわたり、異端視されてきた。
それでも、第二次大戦中・戦後に暗号解読、敵潜水艦の探索などの軍事面や、保険数理、意志決定理論などの実用面で、ひっそりと発展。
やがて、コンピューターの進歩・普及が、ベイズ統計の劣勢を一気に逆転させた。
ベイズ統計の数奇な遍歴と、統計学者たちのあまりに人間的な諍いの物語が、初めて語られる!


序文、および読者の皆さんへのただし書き

【第1部 黎明期の毀誉褒貶】
第1章 発見者に見捨てられた大発見
第2章 「ベイズの法則」を完成させた男
第3章 ベイズの法則への激しい批判

【第2部 第二次大戦時代】
第4章 ベイズ、戦争の英雄となる
第5章 再び忌むべき存在となる

【第3部 ベイズ再興を志した人々】
第6章 保険数理士の世界からはじまった反撃
第7章 ベイズを体系化し哲学とした三人
第8章 ベイズ、肺がんの原因をつきとめる
第9章 冷戦下の未知のリスクをはかる
第10章 ベイズ派の巻き返しと論争の激化

【第4部 ベイズが実力を発揮しはじめる】
第11章 意思決定にベイズを使う
第12章 誰がフェデラリスト・ペーパーズを書いたのか
第13章 大統領選の速報を支えたベイズ
第14章 スリーマイル島原発事故を予見
第15章 海に消えた水爆や潜水艦を探す

【第5部 何がベイズに勝利をもたらしたか】
第16章 決定的なブレークスルー
第17章 世界を変えつつあるベイズ統計学

補遺a 「フィッシャー博士の事例集」:博士の宗教的体験 
補遺b 乳房X線撮影と乳がんにベイズの法則を適用する

感想・レビュー・書評

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  • ベイズ統計の歴史について述べた本。
    トーマス・ベイズによるベイズの定理の発見から、ベイズ統計が市民権を得るまでについてとても細かく記述されているので、面白いのだが読むのに時間がかかった。

    ベイズが生きていた時代に18世紀には、数学者や科学者の多くは自然界の法則を知ることで神の存在を知ることができると信じていたというところが文化の違いを強く感じさせた。また、学問の世界でははじめは受け入れられなかったが、暗号の解読や沈没した潜水艦の場所を探すことなど学問の世界の外で先に使われているという点が興味深かった。

    全体的に読み物として面白かったが、ベイズ統計そのものについての勉強のための本ではないのに注意が必要。逆に、教科書的な記述では知ることのできない人間模様を知ることで心理的な抵抗がなくなるかもしれない。

  • ベイズの統計は偶然知ったというお粗末さなのだが、これがまたフィッシャーの記述統計とまさに血みどろみたいなバトルを繰り返してきたという歴史をこの本を読むまで知らなかった。学会でベイジアンネットワーク分析を使った発表する機会があって、本屋さんで偶然見つけたのがこの本。主流争いするよりもいいとこだけとってうまくいけばそれでいいじゃないか。

  • ベイズ統計の実線にすぐ役立つというものではないが,最近注目されるこの考え方の歴史が概観できてとても面白かった。

  • ベイズ統計の歴史をまとめた"風"の内容。
    ベイズ統計の中身やその発展を説明してくれるのかと期待して買ったが、ベイズ統計の数学的・解析の部分は皆無で関係した人物や社会での扱われ方といった内容の歴史的な事柄が書かれている。

    ベイズ統計について多少の知識があっても、何について書いているのか全くわからない内容が多く、
    著者はベイズ統計どころか、統計学を全く理解していないのでは無いかと疑われるような記述が随所にある(文章の書き方、展開からして翻訳の問題ではない)。
    ベイズ統計の発展を見るつもりで読み進めたが、読み終えても「結局、ギブスサンプラーとMCMCが出てくるまで使い物にならなかったのか」という感想しか生まれなかった(※ おそらく著者のせいで誤った印象になっている)。

    文章自体は読みやすいが、構成や書き方に気に入らないことが多く、よく最後まで読み切ったなと感じる。

    序盤の、ベイズの法則が生まれたあとから第二次大戦時まで(1〜5章)は時系列で物語が展開していくが、
    大戦後〜70年代くらいの内容(6〜15章)は同時代の様々な事例が各論として羅列されるようになるので、6、7、8章あたりを読み始めた際には章ごとに時間が行ったり来たりして混乱してしまった。
    時系列で3部構成に編集し直して、「黎明期」「散発的な発展」「爆発的な浸透」のように分け、2部の冒頭で前章最後のまとめと各論の羅列になる旨の短い文章を入れるだけでずいぶん読みやすくなると思う。

    また、6章以降ではベイズ統計が様々なところで小規模に、散発的に使われていくのだが、
    それぞれの章の中ではその事例を賞賛しているのに、次の章に入ると前章までの事例をけなすような(広がらなかった、上手く行かなかった)な展開が繰り返され、辟易する。
    評価に一貫性が無く、直前まで褒めていたものを急に貶す内容が繰り返されると興ざめだし、一見上手くいかなかったように見えても方法論の内部では知識が蓄積され、どんどん研ぎ澄まされていくことがある(それが後の大きな飛躍の礎になる)のが理解できていないのは著者がバカなんだろうと思ってしまう。

    本書の随所で"頻度主義"と"ベイズ派"の対立が書かれているが、それぞれの派閥に属することの定義が書かれていないためかなりわかりにくい。
    「ベイズの法則を一度でも使ったことがある」人がベイズ派の定義なら頻度主義者なんて昔からほとんど居ないことになるだろう。今も昔も問題の多くは「事前確率をどうするか?」「事前確率が気に入らない」に収束するのだから統計分布を新しいデータでたたき直すのに文句のある人は極端に少ないはずだ。
    逆に、フィッシャー流の統計学を主に使う人が頻度主義者なら現在でも頻度主義は健在で、本書の末にあるようなベイズの一方的勝利ではない。
    時代とともに頻度主義・ベイズ派の定義も変わってくるだろうから章や部ごとにそれぞれの派閥の定義を適度に更新すべきであったと感じる。
    この不明確な言葉・概念の使用は、文中で多く見られる。例えば「ベイズの深遠な哲学が・・」(※ のちには大したことない扱いになっているのも意味不明)のような部分はもう少し詳しく書いてもらわないと、ベイズを知っている人でも「ああ、あの概念はこんな以前に完成していたのか・・」とはならないだろう。
    本書は数式を使わないのではなく、(著者が理解できないから)使えないだけなんだろうなと思えた。

    ページ数は600ページを超え、無駄に長いが、
    得られるものが少ないだけでなく、著者の興味の偏りが明瞭に見える(内容が極めて薄い章が紛れ込んでいたりする一方、軍関係の内容は記載が過剰気味である)ので、「こんなに無駄に長くしないで、書きたい部分だけを書けば良いのに」と思いながら読んでいた。
    本書の題名にそのことがよく表れていて、本書の内容全般としては邦題の方がよく合っていて秀逸だが、英語タイトルこそが著者の書きたかった内容なんだろうなと思う。

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    2021.05.02

  • ベイズの歴史が だらだらと?記述されている。
    私が大学生の80年代では、ベイズ統計を習った覚えがないが、今では必須みたい。
    判ったこと
    ・ベイズは自分の説を出版していない。没後に出版された。
    ・ラプラスが独自に同じロジックを用いてまとめた。
    ・客観的根拠がない事前確率という弱点のため、非主流の時期が続いた
     フィッシャー ネイマン、ピアソンの頻度主義が主流
    ・暗号解読や潜水艦の探索などの軍事、また保険料の計算などで こっそりと使われてきた
    ・コンピュータで大量積分計算が可能になり、1990年代以降は頻度主義と両方を使うことがあたりまえになっている。
    ・MCMC(マルコフ連鎖とモンテカルロ法)、ギブスサンプリング

  • 請求記号 417/Ma 15

  • ベイズ統計学は、フィッシャーやネイマン、ピアソンといった主流は統計学の潮流から長い間異端とみなされてきた。しかし、保険数理人や軍隊という「実務的」な人たちからは、十分なサンプルデータが得られない事象に対しても、ある程度の精度で確率的な評価をすることができる手法として、重宝されてきた。

    そして1980年代以降は、徐々にベイズ統計学の有効性が広く認識されるようになり、現在では、科学研究分野のみならず、画像解析や人工知能による学習過程など、広い範囲で応用されている。

    この本では、そのようなベイズ統計学の誕生から長い苦難の歴史が描かれている。

    我々の一般的な認識では、統計的な推計値というと頻度主義的なものをイメージすることが多いため、ベイズ統計学的な思考方法やベイズ統計学による推計値を理解するためには、いったん頭を切り替える必要がある。

    ある値や確率を推計する際に、とりあえず仮の推計値を設定したうえで、観測値が得られた時点でその推計値を修正することを繰り返すというベイズの手法は、サンプルをもとに区間推定などを行う頻度主義者の統計手法とは、そのスタート地点から発想が異なる。

    そのため、頻度主義派とベイズ派では「推計値」というものの捉え方も異っている。頻度主義の統計における推計値は、一定の条件のもとで試行を繰り返すことによって得られる静的なものであるが、ベイズ統計学における推計値は、様々な条件で起こった事象をもとに得られるものであり、「〇〇という事象が観察されたときに、△△である確率」といった、動的で相互依存的なものであると思う。

    さらに、ベイズ派の推計値は逐次更新していくことができるし、これまでに一度も起こったことがない稀な事故などに対しても、そのプロセスをモデル化することで一定の推計を進めることができる。

    本書を読んで、ベイズ統計学が異端とされた理由は、その仮に設定する「事前確率」というものが、主観的な判断に基づいているからということに、ほぼ集約されるように感じた。

    科学研究において、主観的に何らかの結論を想定するということは、その結果の信頼性を損ねるように感じられるというのは理解できる。ただ、ベイズ統計学はその値を観察値によって修正していくのであり、結果的に十分な回数の修正を繰り返せば、その結果は十分な客観性を持つといえる。

    どの程度くり返せば「十分」と言えるのかについては、十分な判断材料が得られるまで、というかたちで、ベイズ統計学は非常に柔軟である。

    頻度主義が求めるような十分な数のサンプルが得られない時にも使えるということ、求める結果のレベルに応じて柔軟に実験の設計をすることができるということが、科学者に非難される一方で実務家からは高い評価を得られた理由であると思う。

    この本を読んで、ベイズ的な発想という新しい観点を知ることができて、非常によかった。

  • 光秀の定理に出てきたベイズの定理。去年、この定理がちょっと話題になったこともあって、勉強のために買ってみた。でも、読みきれず、途中で積ん読に。。ベイズの説明というよりはその歴史の話でした。トーマス・ベイズさんは牧師で、その理論は保険業界や暗号解読などに役立ったらしい。。

  • ベイズの意味づけについて、参考書として。

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著者プロフィール

シャロン・バーチュ・マグレイン
アメリカのサイエンスライター。スワースモア・カレッジを卒業後、新聞記者生活を送り、現在は社会問題と科学の進歩の関係を中心に執筆。「サイエンス」誌や「サイエンティフィック・アメリカン」誌などの雑誌に寄稿している。邦訳されている著書に『お母さん、ノーベル賞をもらう――科学を愛した14人の素敵な生き方』(工作舎)、『おもしろ科学こーなってる! 365のQ&A』(三田出版会)、『フクロウは本当に賢いか』 (三田出版会)がある。『お母さん、ノーベル賞をもらう』でワシントン州記者賞を受賞。

「2018年 『文庫 異端の統計学 ベイズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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