操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか
- 草思社 (2018年9月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794223524
作品紹介・あらすじ
いつのまにか「私の考え」が誘導されていた?
トランプを大統領にしたのは「データ」の力だった?
民主主義社会の基盤がいま崩れはじめている!
デジタル・テクノロジーが、国境や民族を超えてつながる自由で民主的な世界を産み出している――
だがその一方で、誰にも予想できなかった事態が起こりはじめている。
SNSやビッグデータ、AIなどの進化は、高速で精緻な情報交換を可能にし、社会システムの基層を大きく変化させている。その変化が「人間」そのものを変えつつあるのだ。
ネットは人びとの抑えられてきた感情を増幅させ、共有される匿名の怒りが世界を「部族社会」に細分化し、
データ分析に頼りすぎる判断は選挙や政策決定にも影響を与えはじめた。
プラットフォームを押さえた一部企業が市場を独占し、AIが生みだす新たな労働環境は所得の格差を拡大して、
社会の分断はいよいよ広がっていく――。
テクノロジーが拓く新たな社会状況が直面せざるをえない難問の数々を、データ・テクノロジーの専門家が詳細に分析し処方箋を示す。
トランプ大統領選を陰で支えた「ケンブリッジ・アナリティカ」社のスタッフ等、各方面の現場当事者の肉声を収載。
本書内容より
・アンケート回答がビッグデータに吸い込まれていく
・自分が知っている以上に自分のことが知られている
・トランプの大統領選とケンブリッジ・アナリティカ
・イギリスのEU離脱、プーチンのサイバー戦の正体
・ネットは人びとの抑えられた感情を増幅していく
・怒りの共有が細分化された「部族」を生みだす
・プラットフォームを持つ企業が市場を独占する
・AIは仕事の格差を産み、社会の分断が加速する
・仮想通貨とブロックチェーンが揺るがす社会基盤
◎本書もくじより
イントロダクション テクノロジーが社会を破壊する?
第1章 新しき監視社会――データの力は自由意志をどのように操作しているのか
第2章 「部族」化する世界――つながればつながるほど、分断されていく
第3章 ビッグデータと大統領選――デジタル分析が政治のありかたを揺るがす
第4章 加速する断絶社会――AIによって社会はどうなるのか
第5章 独占される世界――ハイテク巨大企業が世界をわがものとする
第6章 暗号が自由を守る?――国家を否定する自由主義者たち
結論 ユートピアか、ディストピアか
エピローグ 民主主義を救う20のアイデア
感想・レビュー・書評
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授業でのレポートの課題本だったため読んだ。自分に理解するだけの知識がないからか、本の内容を実行できるわけではなく、そして深く考察することもできなかった。しかし、「個人の意見を持ち、主体性のある自律した市民になる」という提言はこれからの社会を生きるのに非常に重要であると感じた。
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図書館で借りる。
p162にヒッピー・ヤッピーの話をバートレットも書いている。この話は2015年に「サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+」で、東浩紀も指摘していた。どちらかがどちらかを参照したということはあるのだろうか? -
自由意志を操作し、部族に断片化し、政治家により操られ、社会を断絶し、ハイテク巨大企業に独占される。暗号化で政府を否定する自由主義者たち。格差の拡大で民主主義は静かに消えていくのか?
テクノロジーについて、個別個人的なノウハウレベルではなく、社会そして人類に対して、総合的に共通レベルで考えるべき段階になってきたということか。 -
エコーチェンバーにビッグデータ。
ITテクノロジーによって「民意」が誘導…厳しい言い方をすれば操られ民主主義が破綻しつつある。
その中で出来ることっていったら、
・個人が個人の意見を持つ。
・心の自由を維持する集中力を保つ。
・デジタル/ネット上の倫理の確立、浸透。
・内なるエコーチェンバーを意識し、破壊すること(多角的にモノをみる。一次ソースに当たるように努める)。
・教育
・広告モデルからに脱却
が挙げられるだろう。
本書では更にこれを指摘していた。
・アルゴリズムへの査察
非公開で開発されたアルゴリズムによるデータ主導による偏向など。卑近な例でいえばGoogle検索も当てはまるだろうか。検索上位に来るまとめサイトやFake Newsが情報を歪めているのは明白だが、何故そこまでの力をそれらが持ったのかといえば検索結果で上位に位置しているからだろう。 -
「自分の考えをもつ」ことが必要なのだが、その「自分の考え」はすでに誘導されているものである可能性があり、とても悩む。まあしかし、それほど難しく悩まず、「考えずに流されることはするな」という理解でいる。
ケンブリッジ・アナリティカ社など、選挙に関わる描写は他よりも詳細で、読み物として面白かった。やるやらないば別として、技術者としてそれくらいはできるようになりたいと思う。
「オジサンはなぜカン違いするのか」 (廣済堂新書)の文中の紹介。 -
資料ID:21802980
請求記号:007.3||B
デジタル・テクノロジーの進展によって民主主義が変貌しつつある点を具体的な事例を基に論じる。 -
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2018年は、Fuckbook・・・ではなかった、Facebookという組織がいかに腐れ切っているかということが周知の事実になったという点は喜ばしい1年であった。ケンブリッジ・アナリティカの問題に代表されるように、プラットフォーマーであることを隠れ蓑にして、この問題から逃れようとするFacebookという組織を許してはいけないし、故又吉イエス御大が生きておられたら、2019年に地獄の業火に投げ込まれるのはマーク・ザッカ―バーグその人であろう。
前置きが長くなったが、本書はこうしたいわゆるデジタル・プラットフォーマーの台頭が民主主義に対して与える影響を6つの論点から考察し、初期的な対処策までをまとめあげている。
具体的にデジタル・プラットフォーマーにより負の影響が表れている民主主義の論点とは、以下の6つである。
①行動的な市民:データとアルゴリズムの存在により、我々は本当に自由意志に基づき行動しているといえるのか?
②文化の共有:”いいね”や”クラスター(Twitterのような)”で、自らの狭い世界がより増強されるだけのコミュニティで、広範な世界との出会いや価値観の共有は図れるのか?かえって我々は部族社会に先祖帰りしているのではないか?
③自由意志:データとアルゴリズムにより、いかに自由意志が発現する場としての選挙はハックされたのか?
④利害関係者の平等性:人工知能に代表されるテクノロジーによる雇用の喪失と社会格差の拡大はどこまで進むのか?
⑤競争経済と市民の自由:プラットフォーマーによる独占の行き着く先は?
⑥政府に対する信頼:暗号通貨に代表されるように、国家・政府に対する信頼は徐々に喪失されつつあるのではないか?
個々の論点自体は取り立てて目新しいものではなく、昨今よく言われている内容ではあるが、民主主義に与える影響という観点を網羅的に把握できる点で、頭の整理には役立った。