文庫 絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ: 文豪の名言対決 (草思社文庫 か 6-1)

著者 :
制作 : 頭木 弘樹 
  • 草思社
3.88
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本棚登録 : 661
感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794223364

作品紹介・あらすじ

「希望は生きるのを助けてくれます」(ゲーテ)×「朝の希望は、午後には埋葬されている」(カフカ)
――どこまでも前向きなゲーテと、どこまでも後ろ向きなカフカの言葉を前にして、あなたの心に響くのはどちらでしょうか? 

絶望から希望をつかもうとしている人、あるいは逆に、希望に満ちていたけど、少し疲れてしまった人のための「希望と絶望の『間の本』があってもいいのではないかと思いました。ゲーテが希望を語り、カフカが絶望を語り、読者の皆さんがそれぞれに心に響く言葉を見つけ出すことができる」(本文より)そんな一冊をお届けします。『希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話』を改題。

感想・レビュー・書評

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  • 希望と絶望の間の本、ということだけれど、この極端さは、間というにはあまりにも…と思いながら読み進めた。
    わたしはカフカが好きだ。
    作品は「変身」しか読んだことがないけれど、「絶望名人カフカの人生論」に描かれている日記や手紙に、心底共感した。
    ゲーテは本書で初めて触れる程度の知識しかなく、カフカの抱えている生きづらさ、苦しみを理解できる人なのかどうかが分からず、途中でゲーテの言葉が全く入ってこなくなることがあった。

    最後まで読んで、わたし個人が感じたこと。
    ゲーテが共鳴するもの、それは「(深い)悲しみ」、
    一方、カフカが抱えているものは、「(底知れぬ)寂しさ」。
    あくまで個人的な感覚だけれど、悲しみは、カフカの抱える寂しさに比べ、美化・超越しやすい。ゲーテがしていたように。
    でも、カフカが抱える葛藤を含んだ寂しさは、苦しいばかりで、希望を抱きづらい。(もう一度言います、あくまで個人的な感覚です。)
    最後の章で、カフカは希望を語る。けれど、その希望は常に苦しみと結びついていて、ずっと横たわっているものは絶望なのだ。

    カフカと同じように親との葛藤を持ち、常に絶望することで世渡りをしてきたわたしにとって、彼が発する一言一言には重みがある。これほどまでに、人付き合いを困難にさせ、ただただ普通に生きるということを、しんどくさせる。
    読了後、「絶望名人カフカの人生論」に立ち返った。そこで思ったのは、本書を最後まで読めたのは、きっと、カフカと交互に訪れるゲーテが、本書を支えてくれてたんだな、ということ。つまり「絶望名人カフカの人生論」はやはり、カフカ独特の絶望が敷き詰められていて、読み手の時期を選ぶ。
    そういった意味では、本書はまさに、希望と絶望の間の本、といえるのかもしれない。

    人間が生きていく上で、環境は大きい。二人とも、環境が違えば全く違う人生を歩んだかもしれない。
    けれど、ゲーテもカフカも、持って生まれた人間性が、彼らをこういう人生にしたんだろう。環境が違っても、ゲーテは希望を見出し、カフカは絶望する。そんな気がした。

  • タイトルに惹かれて、図書館に予約し借りて読んだ。

    「希望名人」と「絶望名人」の名言対決的な期待で読み始めた。ゲーテもカフカも世に名の知れた大文豪であるし、ゲーテが楽観主義の希望の人であることはなんとなく感じていたけれども、カフカがそんな「絶望名人」と言われるほどのマイナス思考の人だとは思っていなかったので、未知のカフカを知ることもできるんじゃないかというような期待ももって読み始めた。

    各章ごとに、例えば「前向き/後ろ向き」というような大きなテーマがあり、その章の中に「希望が助けてくれる/希望は埋葬された」というような小見出しがついたセクションがあり、両者の見出しにあった「名言」が対比された形で見開きで紹介され、その次の見開きでその言葉の背景などが紹介されている。

    「恋」に関するテーマのあたりまでは、最初に抱いた期待とか、好奇心を満たそうという意識で読み進めてきた。

    確かに、ゲーテは天才だし、楽天家で明るいし、行動的だし、ゲーテのページを読んでいると楽しくなったり、励まされてたりする。言葉にもプラスの力がある。

    それに対するカフカのページはとても繊細で、常にマイナス思考だ。この本は、カフカを引き立て役として、ゲーテの凄さを表現したかったのだろうか?

    そうでないことが、後半からわかる。対話11「親を超える/親に圧迫される」という章あたりから、読みの比重が逆転する。右側のゲーテのページはさらっと読み流し、早く左のカフカのページが読みたくなる。

    ゲーテがオプティミストであり、カフカがペシミストであったのは、それぞれの家庭の環境に大きく起因していると思われる。その実態がこのあたりから明かされてくる。このページあたりからは、心理療法的での臨床事例的な内容となっていく。

    カフカは作家である前に、人として自分の人生を戦って生きた人であることを知った。彼が自分の心を自由に開放することができていたなら、ゲーテに匹敵するか、ゲーテを超える才能を発揮していたかもしれないとも思える。

    本書の著者(ご自身は翻訳したと言われているが、翻訳は名言部分で、解説部分はご本人が書かれたものだろう)は、あとがき部で自身がこの翻訳をはじめたきっかけが、自分の突然の病と13年間にわたる「ひきこもり生活」に近い闘病期があったことであると明かされている。

    本書は、カフカの気持ちを理解でき、またカフカの絶望の名言で本当に救われた期間のあった著者が編集したという点が重要であると思う。

    そしてカフカも著者もゲーテの言葉に励まされたという事実も述べられている。

    だからこの名人対決は、単に名言対決に終わらない、人を救う力のある本であろうと思う。

  • ゲーテの作品は未読ですが、カフカの変身は読んだことがあります
    暗かったことを覚えています

    ゲーテも、カフカの人となりもそんなに詳しく知ってはいませんでしたが…
    今の私には、カフカの方が心に響いたかな
    カフカは、とても繊細で、優しい人だったのですね
    そんなに自分を責めなくても、と思ってしまいます
    ゲーテが心に響かなかったのかと聞かれれば違います
    若きウェルテルの悩みは読みたくなりました

  • これほどまでに、ポジティブとネガティヴな天才を私は知らないです。ゲーテとカフカこの二人の性格は真反対です。だけども共通する部分もたくさんあります。天才が故に、一般人に理解されない部分もあるのかと私は思ったのですが、この作品を読んで意外に一般人に共感するところもあるんだなと感じました。是非ポジティブ、ネガティヴの人両方に読んで欲しいです。

  • ゲーテの希望に満ちた名言とカフカの絶望が詰まった名言の対比が面白い一冊。
    ゲーテは1932年に亡くなり、カフカは1883年生まれなので2人が対話することはあり得なかったが、この本ではまるで対話しているように2人の言葉が配されている。

    例えばこんな感じで。
    ゲーテ 「人の感情で最も高貴なのは、希望です。
    運命がすべてを無に帰そうとしても、それでも生き続けようとする希望です。」
    カフカ 「ぼくは自分の状態に、果てしなく絶望している権利がある。」

    ゲーテ 「生きている間は、生き生きしていなさい!」
    カフカ 「ぼくは静かにしているべきだろう。
    息ができるというだけで満足して、どこかの片隅でじっと。」

    希望と絶望の極にあるような2人の言葉は、その間を行ったり来たりする人生において、そのときどきの状況や心境によって響く言葉が変わってくるだろう。
    最終章だけゲーテの絶望×カフカの希望と反転している。単に希望=良い、絶望=悪いという思い込みを覆されるようで、読みやすいが奥深かった。

  • ゲーテ、若きウェルテルの悩みは40年くらい前に読んだ気もするが覚えていない。でも人物に興味がわいたので池内紀のゲーテものでも読んでみようかという気になった。

  • ゲーテ
    - 大地にしっかりと立って、まわりを見渡すのだ。力のある者には、世界が語りかける。
    - 望んでかなうことなら、努力に値しない。
    - 絶望することができない者は、生きるに値しない。

    カフカ
    - 朝の希望は、午後には埋葬されている。
    - ぼくの夜は二つあります。目覚めている夜と、眠れない夜です。
    - 当事者であるぼくは、希望を持っている。

  • カフカがネガティブ過ぎて、終始ニヤニヤしてしまった。でも嫌いじゃない、カフカみたいな人。

  • カフカに対する印象が変わった。勿論良い方向に!
    ゲーテはファウストが強烈なため可憐な人物像と混ざらず敬遠しがちだったが
    年老いてもなお恋をしていたその精神は何を置いてもの拠り所だったように思います。

  • YouTuberのベルさんが紹介していて気になっていた一冊です。
    帯は、
    -------------------------
    希望は誰にでもある。
    絶望するよりは、希望をもつほうがいい。
    (ゲーテ)

    ああ、希望はたっぷりあります。
    ただ、ぼくらのためには、ないんです。
    (カフカ)

    対照的な二人の文豪の、
    心に響く対話をあなたに届ける一冊。
    -------------------------
    二人ともさすがと言わざるを得ないぐらい、
    言葉にパワーがあります。
    そして訳者もこの二人を好きなんだろうな、と思います。

    ゲーテのマインドは、
    どこかのビジネス書でも読んだことがある気がしました。
    ゲーテは一国の大臣を務めた経験もあり、
    その経験からくる言葉だからか、
    現代に通じるものがありました。

    一方カフカは、
    「もう!しっかりして!」と
    言いたくもなりますが、
    カフカの優しいところと
    本人は至ってまじめなところが
    疲れたときとか静かにしていたい気持ちのときは
    これで大丈夫かも、と思わせてくれます。

    表現は真逆でも言いたいことは一緒なのでは、
    というページも。

    「朝の希望は、午後には埋葬されている。」(カフカ)

    この一言には、
    思わず膝パーカッションを打ち、
    笑ってしまいました。苦笑

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著者プロフィール

頭木 弘樹(かしらぎ・ひろき):文学紹介者。筑波大学卒。大学三年の二十歳のときに難病になり、十三年間の闘病生活を送る。そのときにカフカの言葉が救いとなった経験から、2011年『絶望名人カフカの人生論』(飛鳥新社/新潮文庫)を編訳、10万部以上のヒットとなる。さらに『絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ 文豪の名言対決』(草思社文庫)、『ミステリー・カット版 カラマーゾフの兄弟』(春秋社)を編訳。著書に『食べることと出すこと』(医学書院)、『落語を聴いてみたけど面白くなかった人へ』(ちくま文庫)、『絶望読書』(河出文庫)、『カフカはなぜ自殺しなかったのか?』(春秋社)、『自分疲れ』(創元社)。ラジオ番組の書籍化に『NHKラジオ深夜便 絶望名言』(飛鳥新社)。名言集に『366日 文学の名言』(共著、三才ブックス)。編者を務めたアンソロジーに『絶望図書館』『トラウマ文学館』(共にちくま文庫)、『絶望書店 夢をあきらめた9人が出会った物語』(河出書房新社)、『ひきこもり図書館』(毎日新聞出版)がある。NHK「ラジオ深夜便」の『絶望名言』のコーナーに出演中。日本文藝家協会、日本うんこ文化学会会員。

「2023年 『うんこ文学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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