裏切られた自由 上: フーバー大統領が語る第二次世界大戦の隠された歴史とその後遺症

制作 : ジョージ・H・ナッシュ 
  • 草思社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (712ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794222756

作品紹介・あらすじ

本書は第31代アメリカ大統領ハーバート・フーバー(任期1929~33)が第二次世界大戦の過程を詳細に検証した回顧録です。誰もが避けたいと思っていたにもかかわらず、二度目の世界大戦が起こってしまったのはなぜか。そして、あの戦争についていまだ語られざる真実とは――。「正義の連合国」対「邪悪な全体主義国」という従来の見方を真っ向から否定する本書は長いあいだ公にされませんでしたが、2011年に米国で刊行され議論を呼んでいます。さまざまな情報にアクセスできたアメリカの最高権力者が、20年の歳月をかけて完成させた第一級の史料です。

感想・レビュー・書評

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  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB2410662X

  • 『#裏切られた自由(上)』

    ほぼ日書評 Day519

    第31代米国大統領フーバーによる著書。彼は多くの著書を残したが、それらとは異なり(おそらくは記載内容が世間に与える影響の大きさを配慮した結果)彼の死後も1世代以上の長きに渡り封印され、2011年ようやく刊行に至った。

    おりしもヴェノナ文書の解読公開等に端を発する歴史修正主義的観点を裏付ける史料として、引用されることが多い。

    冒頭編者序文と編集方針に関する注だけで150頁(A5版)を超え(ちょっとした新書版ほどのボリュームだ)、上下巻の上巻だけで700頁というまさに大作で。編年体で「歴史書」的な体裁を取ってはいるが、そこは当事者の息吹とでもいうべき緊迫感がひしひしと伝わってくる。

    ルーズベルト政権下、駐日大使であったグルー氏の回顧によれば、状況は以下のようであった。
    「我々の公電に対してワシントンからの回答はほとんどなかった。ワシントンへの報告は、暗闇の中で川面に小石を投げるような感覚であった。小石がさざ波を立てているのかどうかさえもわからなかった。ただ、私の訴えをワシントンでは誰も信じようとしていないことだけはわかっていた。つまり私の訴えは歓迎されていなかったのである。それでも、私たちは、日々変化する状況を慎重に分析し、ワシントンに欠かさず報告した」
    同じく11月4日には「もし米日戦争勃発という事態になったら、私の考えを訴えた公電を、後世の歴史家が見逃すことがあってはならないと思う。和平交渉が失敗すれば、日本は生きるか死ぬかの…」と記した。
    さらに、交渉の一部始終を把握したフーバー自身の11月16日のメモには「日本との戦争は無意味である。(この政権は)戦争したい、場所はどこでも良いと考えているようだ。(…)対日戦争については(…)ヨーロッパに部隊を遣ることに対する反発より弱い」とあったという。
    とどのつまりは、11月25日、FDRによって招集された会議録には「問題は、いかにして彼らを最初の一発を撃つ立場に追い込むかである。それによって我々が重大な危険に晒されることがあってはならないが」とまで述べられているのだ。
    太平の眠りを覚ます蒸気船よろしく、イノセントな米軍を、週末のある日(12月7日)に突如、日本軍の戦闘機が奇襲したというナイーブな俗説が成立する余地は皆無だと言い切っているに等しい。

    その後、戦局が進み枢軸国の敗色が濃くなった時期においても、無条件降伏の要求や、原爆の取り扱い、さらに枢軸国による「占領地」のみならず欧州各国を英ソの影響下に置く割合等、数多くの密約が連合国首脳間のみ(適切な議会の批准を経ることなく)で取り決められていったという証言が多数記述される。

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  • 上下巻共に膨大な資料をもとに歴史の検証がされている良書。翻訳も日米近現代史研究家である渡辺惣樹氏がされているので、大変わかりやすかった。
    フーバー大統領といえば、大恐慌になすすべも無く無能で終わったということになっているが、本書を読めば、対策も明確になっており、彼の主張には、政治家として必要な先見性があったのだと理解できる。
    歴史に「もしも」というものはないが、大統領を続投できていれば、あのような戦争はなかったのだと思う。

  • スターリンは当たり前ですが、チャーチル、ルーズベルト(&ハル)、これらの人物は共産主義に加担して今の今まで世の中を拗らせた元凶である事が良くわかりました。フーバー元大統領がこの書物をまとめてなければ、知る事が困難だったと思うと少し高いですが読む価値は大いにあります。

  • 大学図・1F開架 209.7A/H85u/1

  •  これは元大統領フーバーが第二次世界大戦の開戦に至るまで、及び終戦処理についての米英ソ首脳の鍔迫り合いを、彼のもと集まった第一次史料及びそれに準ずる資料をして語らしめているので、じつに説得力がある。国連が発足してたちまち機能不全に陥ったのも、本書に示されたカイロ、テヘラン、ヤルタ等々の会談の経過を読めば、当然の結果だったと改めて納得させられる。
     フーバーは大統領に就任してまもなく世界大恐慌に遭い、そのため思うに任せぬ不運な日々を過ごしたわけだが、その実務能力はピカ一であったという評価はやはり正しかったようである。

  • ルーズベルト大統領は戦争をしたかったのだが、アメリカが先に手を出すわけにはいかないので国民や議会に対する開戦への大義名分が欲しかったのである。日本を経済封鎖や石油の禁輸や資産凍結によって苦しめ、日米交渉の最期の頼みの綱であった近衛首相との会談もわざと無視した。日本は日本で国策を遂行するためには、アメリカの要求を安易に了承するわけにはいかなかった。国内に目を向けると、軍部や超愛国主義者やマスコミも開戦への圧力を政府にかけてくる。日米開戦はやむなしということになる。さあ、一体誰が一番の悪者なのであろうか。

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著者プロフィール

1874年アイオワ生まれ。スタンフォード大学卒業後、鉱山事業で成功をおさめ、ハーディング大統領、クーリッジ大統領の下で商務長官を歴任、1929年~1933年米国大統領(第31代)。人道主義者として知られ、母校スタンフォードにフーバー研究所を創設。1964年死去。

「2017年 『裏切られた自由 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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