文庫 思考する機械 コンピュータ (草思社文庫 ヒ 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794220585

作品紹介・あらすじ

重要なのは機器ではなくコンピュータという考え方だ。第一人者が原理から説き起こし、並列処理や進化的アルゴリズムなど最先端の話題まで解説する必読の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • この本を読むことでPCを分解したような気分になる。ふだん何気なく使っているコンピュータのしくみを知るのに大事な本


    ●メモリの章にあったデータ圧縮の話が楽しかったなぁ…ようはモールス信号のように01の組み合わせ(2進数)で情報を処理する。だから使用頻度の高い情報(文字だとTやEがよく出るがQやZはあまり出ない)を優先的に短い進数に登録する。これがデータ圧縮のしくみ。
    この方法があらゆるデータで用いられる。画像データでも色を01で表し、それをピクセルの数だけドットで01を配置していく。その中でもよく出てくるグラデーションンパターンは短い01に登録される。そうするとデータの節約ができる。そういう仕組みだと、グラデーションパターンなどがない画像ほどデータは大きくなる。テレビの砂嵐のような画像はパターンがないから圧縮ができない。白黒だからいいけれどこれがカラーになったら大変なのである。

    ●アルゴリズムは樹形図のように広がっていくから、試行が長引けば確率は指数関数的に増えていくので計算不能レベルになる。
    そこでヒューリスティック(発見方法)によって答えを減らすのである。世の中の事象には考えるまでもない出現頻度の低い事象がある。これは経験知によって判別されるものだが、そういった考えるべきでないものを志向から除き、効果の高いものだけ計算する。これがヒューリスティック。
    これがプログラミングとかでも役立てられている。だから計算処理が早くなる。これを使ってチェスや将棋でコンピュータが名人に勝てるようになった。これを極めるのがAIである。
    ●並列コンピュータ…計算の手が足りないのなら人足を増やせばいい。そうはならない。コンピュータは逐次処理が得意である。だから、役割分担して、途中からスタート!な仕事はできないのである。人はアルゴリズムではなく、直感的に物事の全体像を予想して、分散的に作業を進めることができる。だから仕事の分担ができる。これういう作業の分担をできるようにしているのが並列コンピュータである。プロセッサと呼ばれる。
    天気予報やロケットの大気圏突入の計算などの大気の物理的移動の予測は、気温と気圧と湿度と風速など複数の要素が影響し合って結果が出る。それぞれの変化を同時計算する必要があるので、並列コンピュータが活躍する。

    天才が凡才に歩み寄ってくれている非常に良い本でした。

  • 人間も有限状態機械なのです。

    コンピュータは1と0で演算を行なっているが、別にそうある必然性はない。ただ二つの最小のユニットが存在して、それらを組み合わせることで計算を行う。棒でも水圧でもコンピュータは作れる。情報の伝達、記憶は同じ。自分宛に伝達すれば、それが記憶するということになる。

    進化論的シミュレーションの話が印象的。事物が全て階層的構造になっているわけではない。淘汰を繰り返して残ったものを信頼したいと筆者は言う。今ってどうなってんだろう。
    25年前の本なのに、こんなに面白く読めるのはすごい。

  • コンピュータの作り方から始まって人工知能の作り方まで書いてある。
    無駄な文章が少なく、すぐ読み終わる。
    特にデータ圧縮の話は知らなかったので面白かった。
    文字の出現頻度や画像の頻出パターンを利用して圧縮しているらしい。
    人工知能に関しては、著者が言うには進化の過程をプログラムでシミュレーションすることで、人間には理解不能な形で達成されるらしい。

  • コンピューターについての理解が深まる。みなさんぜひ読むべし。

  • ちょっと長くて面白くないと思った時もあったけど、まとまっていたし作者の雰囲気が伝わるよう。
    ハッピーな感じはなかった

  • 本屋で見かけてタイトルに惹かれて購入。
    タイトル通りコンピュータについて概念を書いてあり
    ブール演算回路に始まり、メモリ、CPUなど
    コンピュータの中身からコンピュータの今後についても言及しており
    コンピュータ好きな著者が書いた本である事がすぐわかる
    個人的には少しとっつきにくかったが、好きな人は好きなジャンルだと思う

  • コンピュータは論理的な機械である、という端的な説明からはじまり、丁寧な解説のあと、大きさや処理速度を気にせず論理的な仕組みだけに着目すれば、半導体でなくても実現できるという帰結が気に入った。
    この帰結は導入であり、面白い話をするために必要な知識を例題的に解説、後半の万能機械(チューリングマシン)、並列計算、メモリと情報といったトピックに進む。
    何より、これらのトピックからコンピュータの機構について読者に知識を与えるとともに、階層的技術設計の限界や、創発特性の話題に続くところが素晴らしい。
    さらに、AIに関する熱狂や誤解がはびこる中、機械学習やAIは、学習する機械の本質は昨日今日生まれたものではなく、フィードバック制御と本質的に変わらないことを容易に受け入れることができる。
    そして、進化論的シミュレーション、淘汰によるプログラムの形成のアイディアと背景は、研究してみたい、こんな本を書いてみたいと思えた。

    惜しいところは、チューリングマシンが端的な解説であること、計算不可能問題に関する解説が少ないこと。

  • コンピュータの概念を書いた本。20年前に書かれたものだが、今も色あせてなく、読むことができる。コンピュータに馴染みのない人でも読めるが、バックグラウンドが少しある方が良いかと。

    コンピュータが好きで、もっと好きになりたい人にはおすすめです!

  • 本屋で見かけて購入。コンピューターの根本原理についておもしろい話がいっぱい書いてある。コンピューターの本質は論理であるとか、スイッチを使った論理ブロックでできているとか、そのスイッチは電気式(半導体)でなくとも機械式でも流体式でも化学反応でもいいとか。1940年にシャノンがブール代数の真偽をスイッチの開閉に置き換えたってのはすごい発想と思った。 
    これらが単なる教科書的な説明ではなく、コンピューター研究者としての実感のこもった言葉で語られているので飽きない。おもしろかった。

  • コンピュータの入門書。とはいえこの本を読んだからといってコンピュータを使えるようになるような実用書ではない。論理回路から始まるコンピュータの本質を学ぶ、教養としての入門書である。

    ただし、全くの素人が読んですぐに理解できるかは疑問。文書に比べて図が少ないため、読んでイメージするのは難しいと思われる。高専の情報科1年生程度の知識をつけてから読みたい。

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著者プロフィール

コンピュータ科学者。マサチューセッツ工科大学在学中からlogo言語の開発に携わるなど、早くから注目を集めてきた。とくに並列マシン、並列プログラミングを専門とし、数万台のプロセッサからなる超並列コンピュータを製造するシンキング・マシン社の設立に協力した。

「2014年 『文庫 思考する機械 コンピュータ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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