もう一度 天気待ち

著者 :
  • 草思社
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本棚登録 : 34
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794220264

作品紹介・あらすじ

世界十か国に翻訳されて黒澤明監督を知るための第一級の資料として、楽しい読み物として、定評のある名著『天気待ち』を復刊。新たに三船敏郎と黒澤明との関係・交情等、大幅な書き下ろし原稿を追加、決定版として刊行。記録・スプリクターとして長年そばに仕えた著者にしか知りえないエピソードが満載。愉快な自筆イラスト多数。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の野上照代は、最近では山田洋二監督の映画「母べえ」の原作者として知られているが、この人の本当の顔は、1950年に黒澤明監督の『羅生門』にスクリプターとして参加し、それ以降の全黒澤映画に記録・編集・制作助手として参加し、黒澤監督を支え、かつ見守り続け、黒澤明およびその映画、そして出演者の三船敏郎、仲代達也等を語れる唯一の人物である。

    この本は「天気待ち」として一度出版されたが、絶版になって久しく、今回新たに大幅な書き下ろしを加えて復刊した。

    著者は全編に渡り黒澤監督やその周辺の人々を温かく見守り続けているのが、活字を通して伝わってくる。
    ここには悪い人は一人もおらず、良い人ばかりで、そしてみんなが鬼籍に入っていく悲しい物語でもあり、かつて栄華を極めた日本映画の歴史でもある。
    彼女のスクリプターとして仕事に関わっていたことも影響しているのかも知れないが、全てが今、目の前で展開されているが如く生々しく伝わって、映画の撮影現場に連れて行ってくれる感がする。
    映画ファン、特に黒澤ファンには必読の一冊です。

  • ふむ

  • 黒澤明監督の映画で記録係を長年務めた筆者。黒澤監督やスタッフ、役者達の作品にかける情熱や対立を時に生々しく綴る。名作を支えてきた当時の熱気と、良作、時に失敗作の裏側にあった苦労が伝わって来る。

    黒澤映画に関する本はこれまでも何冊か読んできたが、本書の半分くらいは黒澤監督とスタッフや役者達との衝突に関する話のような印象だ。その衝突も、無事に終息したこともあれば、降板(黒澤監督自身のも含め)という結果になってしまうことも。

    「映画監督というのは周囲の迷惑も省みず信念を貫く必要がある」といった言葉が印象に残った。一流のスタッフ・役者達のプライドを時に押さえつけてでもひとつの作品をイメージ通りに完成させなければいけない監督という仕事。作品の良し悪しも全て監督の評価と責任になることを象徴している。

    タイトルの「天気待ち」は黒澤映画の製作過程で良く言われていた言葉だ。「もう一度」という言葉に、辛抱強く数々のトラブル対処に奮闘してきた著者の苦労と郷愁の両方が滲み出ている。

  • 復刊。書下ろしは後半の復刻部分と重複するエピソードもあるが、面白く読んだ。

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著者プロフィール

野上 照代(のがみ・てるよ)
1927年、東京生まれ。黒澤明監督映画のスクリプター、のちに制作助手。戦後、出版社勤務ののち、伊丹万作監督の遺児(後の伊丹十三)の世話を頼まれ、京都へ。1949年、大映京都撮影所に記録見習いとして就職。1950年、黒澤明監督『羅生門』に初参加する。以後、東宝に移り、『生きる』以降の黒澤作品すべてに参加(他監督作品も多数)。またエッセイストとしても有名で、1984年、「父へのレクイエム」で第5回読売・女性ヒューマン・ドキュメンタリー大賞優秀賞を受賞。同作は2008年に山田洋次監督『母べえ』として映画化された。著書に、『完本 天気待ち』(草思社文庫)、『母べえ』(中央公論新社)、『黒澤明 樹海の迷宮―映画「デルス・ウザーラ」全記録1971-1975』(共著・小学館)、ほか多数の黒澤関係の出版物に編者としてかかわっている。現在、黒澤映画の「語り部」として様々なメディアで活躍中。

「2021年 『文庫 蜥蜴の尻っぽ とっておき映画の話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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