あなたのマンションが廃墟になる日――建て替えにひそむ危険な落とし穴

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794212993

感想・レビュー・書評

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  • 私の住んでいるマンションは昭和63年築なので、建てられたからそろそろ25年になり、2回目の大規模修繕に向けて準備も進められています。数年前に管理組合の役員を2年間やって、理事の責任の重さを経験しました。

    この本の第1章で、マンションの建て替えのために、理事の役員の方々が何年にも渡って、それに人生のかなりの部分を費やした事例がレポートされています。同じようなマンションに住む私に取って、他人ごとではないような気がしました。

    以下は気になったポイントです。

    ・マンションの老朽化問題が取りざたされるようになると、住民の「五分の四以上の賛成」で建替え決議が成立すると改められる、全員合意からの転換がされたのは1983年(p19)

    ・ニッセイ基礎研究所は「団塊の世代」が退職する2010年までに最悪「新丸ビル23棟分」のオフィス床が不要になるとしている(p27)

    ・総務省の調査では、住宅リサイクル年数は「30年」、木造は「26年」、老朽化で再建されたマンションの平均筑後年数は「37年」(p36)

    ・鉄筋コンクリートの老朽化は、中性化によって「蝕まれた状態」がどこまで進んでいるかがひとつの目安(p38)

    ・財務省は1999年に、マンション(鉄筋コンクリート住宅)の法定耐用年数を「47年」にした(p43)

    ・5分の四の賛同で建て替えを進めようとする場合には、推進派は、反対派すべての住宅を「時価」で買い取る必要がある(p45)

    ・団地を建て替えて超高層化して、新たに分譲戸数を増やそうとしていたデベロッパーは、地価下落と「マンション銀座」で、撤退した(p54)

    ・768戸の住民の中で建て替えの推進委員のメンバーに加わろうとする者は殆どいなかった、委員定数25名のなかで13名が活動した(p60)

    ・住専処理において、金融専門会社7社の不良債権:12兆円のうち、回収不能額は6.2兆円、6850億円の公的資金を投入して、住専7社の資産6兆円を引き継ぐ「住宅金融債権管理機構」が設立(p62)

    ・2002年の「マンション建替え円滑化法」の成立で、債務の付け替えが認められるようになった、全体では80%、各棟別では「3分の2以上」で建替え決議が成立するようになった(p76、83)

    ・終戦において、戦災者、疎開者、引揚者・復員兵の合計:2500万人分の420万戸が不足したために、都市に集合住宅が建てられるようになった(p86)

    ・田中角栄の最終学歴は小学校卒と信じられているが、新潟の高等小学校を卒業して、中央工学校(夜間)で土木、建築、機械、製図を学んだ(p94)

    ・共産党政権を樹立した中国により、米政府の占領政策は変更されて、石油に関する占領政策も変更されて「輸入原油」の生成が認められた(p96)

    ・初期のマンションは、会社員平均年収が20万円時代(1952年)に、500~800万円で分譲された、文字通りの邸宅であった(p115)

    ・田中角栄が告発されたのは、オイルショックでインドネシアの石油利権に米国の頭越しに直接伸ばそうとしたことで、石油メジャーに制裁を加えられたから(p132)

    ・1985年に国土庁は、1982年から2001年にかけて、年平均「263ヘクタール」のオフィスが不足して、合計5000ヘクタールのオフィス面積が必要と示した(p140)

    ・むやみな容積率の緩和は、既存の中古マンションの価値をさげることになった、5階までしか認められなかった地域に、高層マンションが建つことになる(p143)

    ・北海道拓殖銀行は、北海道で殿様商売をする一方で、東京や大阪で土地を担保に不動産業者に貸し込んだ債権が回収できずに破綻した(p170)

    ・建て替えマンションに戻ってきた元の住民は、64%程度であるのが実際である(p188)

    ・住民の管理組合が主体となって、大規模改修の内容を判断、決定するのが「京都方式(管対協方式)」である(p206)

    ・住宅金融公庫でローン返済(金利3%程度)が滞った人は、自動的に信用保証協会に移されて、代位弁済する、金融公庫はお金を返してもらったことになるが、当人へは協会から金利:14.5%の取立てが行われる(p231)

    ・スウェーデンの断熱木造住宅は、断熱効果が高く、砂漠化では冷房不要、北欧では暖房不要(p264)

    ・無断某住宅という考え方は、高温多湿で夏冬の温度差が大きい日本でも、可能である、地表から1.5メートル下の地中温度は年間15度で一定しているから(p266)

    2011/4/24作成

  • 阪神大震災で半壊になったマンションなど建て替えか耐震補強かで住民の意見が一致せず、10年以上も手がつけられないというのをテレビのドキュメンタリーで見た事があります。
    都心ではタワー型マンションがどんどんとできて、一棟あたりの戸数も増えています。高層階と低層階の住民の家族構成や収入にはバラつきができ、何かあった時の意思疎通は一層難しくなっていくでしょう。

  •  研修を機に情報収集。
    ・区分所有法の改正(全員~5分の4)、マンション建て替え円滑化法施行は、建設業界や経済界の要望を受けて設置。老朽化したマンション軍は、巨大な金の成る木。
     1戸2000万*100万戸⇒20兆円プラス周辺産業の活性化。
    ・小泉政権地に都市再生の名のもと容積率は青天井とされ、高層マンションが乱立。⇒周辺オフィス、住宅の食う汁散るが10%台となる。
    ・p29 区分所有法での建て替え決議は、ドイツ、フランスは全員一致が必要。米国の統一コンドミニアム法では8割の決議で区分所有関係が終了とあるが建て替えについては、記載なし。
    ・p36 国土交通省の2002年に公表したマンション建て替え事例で老朽化で再建されたマンションの平均築年数は、「37年」少々。
    ・p43 RCの法定耐用年数は60から65年から47年に短縮された。
    ・p39 東京オリンピック後を境にRCで建設された構造物の寿命が短くなってきた。
    ・p118 英国のリースホールドの説明 デベロッパーは土地建物一体の
      保有権者となり、維持管理に責任を持つ。
    ・p210 青木茂 九州において建物を長く使うリファイン建築を実践
    ・p244 スウェーデンにおける実例。スクラップアンドビルドは結局高くつく。
         社会的コストが特に高くつく。木造でも管理をきちんと行えば100年
         はもつ。
    ・p256 スウェーデン 太陽の家プロジェクト 新しい外装で建物を覆い、通気層に熱をためる。
    ・p260 スウェーデン 無暖房住宅 断熱層を厚くし暖房設備を不要とした。 

    まとめ)
    課題:コンクリートマンションが30年で壊される歴史的背景。容積率という 
       麻薬的手法の限界。
    解決策・ 京都方式 建物とコミュニティを維持しようとする方法論
       ・ リファイン建築 青木茂
       ・ リースホールド 地価を安定させたうえでの土地利用法
       など具体策が見えつつある。いずれにしろいい建物を永く使うという思想を都市やコミュニティを問い直し再考する時期にきている。


  • 1963 建物の区分所有等に関する法律 2002 マンション建て替え円滑化法 東京海上 積立型マンション保険
    スクラップアンドビルドからリファインへ
    無暖房住宅 スウェーデン ハンスエーク、ホテルクーステン

  • 分類=マンション。04年3月。

  • 本のあとがきを抜粋する。

    これまで[住宅]の話は,デザイン的な「個人の趣味」、もしくは天空から見下ろす「都市計画論」のような「マスの観点」で語られることが多かった。私はその間に横たわる「社会的な構造」こそもっと掘り下げれれていいいのではないかと考えた。身の回りのささやかな現象が、実はこの国が直面している歴史の分水嶺に連なる。その現実をノンフィクションの読み物として浮かび上がらせてみたかった。さて、どこまでせいこうしたものか、読者のご判断に委ねたい。
    ========

    いきなりあとがきを読むとピンとこないかもしれないが、著者、山岡氏の試みは十分に達成されていると思う。今まで身近な問題に無関心だったことを反省させられた。

  • 中古、新築マンション購入希望者、オーナさんに1読をお勧めです。但し悲観ばかりはしていられない

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著者プロフィール

1959年愛媛県生まれ。ノンフィクション作家。「人と時代」「公と私」を共通テーマに政治・経済、医療、近現代史、建築など分野を超えて執筆。時事番組の司会、コメンテーターも務める。一般社団デモクラシータイムス同人。著書に『ルポ 副反応疑い死』(ちくま新書)、『コロナ戦記 医療現場と政治の700日』(岩波書店)、『後藤新平 日本の羅針盤となった男』『田中角栄の資源戦争』(ともに草思社文庫)、『ゴッドドクター 徳田虎雄』(小学館文庫)ほか多数。

「2023年 『暴言市長奮戦記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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