自己啓発の罠: AIに心を支配されないために

  • 青土社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (161ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791775088

作品紹介・あらすじ

「自己啓発」とは何か
私たちは自己啓発に夢中だ。自己啓発の文化は、古典、宗教、資本主義などから生まれたが、今日では人工知能、ソーシャルメディア、ビッグデータという新しいテクノロジーが自己啓発の意味を書き換えている。それは数千億規模の産業だが、私たちを決して幸せにしてくれない。むしろそのせいで私たちは落ち着きを失い、不安になり、自暴自棄になっている。本書は自己啓発がなぜこれほどまでに有害になったのかを分析し、自己啓発の罠から抜け出すための新しい自己の概念と社会変革がなぜ必要なのかを具体的に示す。

感想・レビュー・書評

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  • 長年の歴史や社会で積み上げられてきた自己啓発は、現在では休みなく行う活動として義務化し、AIやテクノロジーに依存し服従されている。自己としてでなく社会や生をよりよくするため「私たち」によりよい物語を語るために日々開発・貢献していくべきという。正直ちょっと難しいが、自己を啓発するため先に明らかにしておくべきことといった感じを受けた。
    8冊目読了。

  • マーク・クーケルバーグ『自己啓発の罠』。人々が「自分をアップデートしつづけていきたい」と感じ、実践し、それが実は本人の利益という、よりはそれを支援する各種サービスを提供している組織の利益にのみなっていることを指摘している。

    その「自己啓発」の思想を歴史的に紐解き、もともとは善いことであった「自己啓発」がITの普及した現代では資本家や組織の商売の道具に如何に変質していき社会に組み込まれ、もはや個人では解決不能な問題であるかを分析してる。

    この本、ユーザの情報を扱っているすべてのソフトウェア/サービスの開発者に読んでほしい。自身が提供するサービスが社会のなかでどのような役割を果たしている・社会に影響を与えているかを考えるいいきっかけになるとおもう。

    「自己啓発」だけでなく「創作活動」を売りにして商売をしている会社が創作者をいかに食い物にしているかということについても示唆がたくさんある。創作活動をしていて「ふぁぼ数」とかで悩んでいる人も読んでみるといいかもしれない。

  • Twitterでフォローしている方が取り上げていて興味持ち、購入。

    本編は150ページ程なのだが、正直、密度が濃くて読んでいくのは大変だった。社会として本来解決しなければいけないことに向き合わず、自己の能力を高めることのは正しいことなのか?AIによる可視化、強化も起こる中で自己啓発ばかりにかまけていることは正しいのか?ということを問うていると感じたが。

    訳者あとがきでも自己啓発本ばかりを読んでいる人にこそ届いてほしいと書いてあったが、恐らくそういう本ばかりを頼るような人には、読むのが色々な意味で苦痛だと思う。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/569412

  • 本書によると、人間は、ソクラテスの時代から自己啓発をしていたのだという。
    人類は、自己の完全化という概念を追い求めてきた。過去の哲学をいろいろと取り上げて、自己啓発というものが新しい考え方ではないということを説明する。

    読んでいて、引っかかったのは、自己の完全化という概念が、現在言われている自己啓発と同様のものなのだろうか、という疑問はある。現在の自己啓発はとどのつまり幸福の追求であると思うが、哲学者たちが探求してきたのは、そういうものだったのだろうか。
    彼らは世界を自分なりに解釈して、自分の言葉で表現することに心血を注いでいたのではないだろうか、と思う。そういう意味では、世界のすべてをデジタル化して誰でもアクセスできるようにする、という目標を掲げているgoogleのほうが、古代の哲学者たちのスタンスに近い気がする。

    本書でやり玉にあげられるのは、そういったテック企業だ。SNSや自己啓発アプリは、他者との比較を意識させ、人々の不安をあおり、みんなで競って自分の情報を投稿、入力する。それはテック企業の収益につながる。ユーザーが情報提供して、テクノロジーは強化されていく。

    他者との比較は、テック企業が介在しなくとも、文明社会に生きているかぎりは避けられないだろう。本書も、自己啓発そのものを否定しているわけではない。自分の弱さをツイートし、それをテック企業が情報収集する。という、罠にはまるのが問題だとしている。人は環境や他者との関係において成長する。
    幸福を追い求めても幸福にはなれない。ただ、様々な経験をして、そういった物事を自分の中でつなげていくことによって、発見であったり、新しいことを思いついて、なにか作り上げたりする。それが自己啓発なのかもしれない。

    この本では自己啓発というものが、テック企業によってビジネスの材料にされているという論点だが、昔からあるような自己啓発本や、セミナーについては触れられていない。著者がAI分野の人間だからかもしれないし、本書で取り上げているのが、あからさまな自己啓発ではなく、巧妙に偽装された(しかし本質的には自己啓発と同じ)テック企業が開発したサービスだからかもしれない。いずれにせよ、自己啓発というジャンルは人の成長を助けるわけではなく、元締めが総取りするビジネスでしかないということなのかもしれない。

  • 本屋でも、電車に乗ってても、ネットサーフィンをしていても、いつも目の前には「自己啓発」の広告。
    決して広告主は私たちにより良くなってほいしなんて思ってはいない。我々の時間とお金を狙っているのだ。もちろん全てがそんな企業ばかりではないが、「自己啓発ビジネス」の罠を知りつつ、自己啓発をすることが大切だということが理解できる書籍。
    「私たちの立場を改善するだけでなく、ゲームを変えよう。自分を変えることばかりにこだわるのではなく、社会を変えよう」それが本気の自己啓発。

  • 情報哲学の専門家という説明であったが、社会心理学やそのほかの研究結果も引用していた。哲学はもちろんのこと、それだけではないので、初心者でも読める本である。
     卒論のテーマを読んで考えるためにはいいと思える。

  • イーロンマスクのカリフォルニアでの渋滞解消は事実を見ておらず、机上の空想になりがち。
    木を見て森を見ず。そんなことかもしれません。

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