- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791772438
作品紹介・あらすじ
NYストリートアートの最先端
地下鉄や都市の壁、最近では高級ブランド旗艦店の壁にも描かれるストリートアートは、エアロゾル・ライティングとも呼ばれ、世界中で「文化」として進化を続けている。単身ニューヨークに渡り、ストリートアートを美術史の表現ジャンルのひとつに昇華させようと独自の創作と研究を行なう大山氏。歴史に名を残すニューヨークのストリートアーティストたちを取材して書かれた本書は、街角のアートと美術史が交差する最前線に私たちを誘なう。
感想・レビュー・書評
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前作がライティング(グラフィック)に関する学問的アプローチに関する決定的な1作だった中で、その続編とも言うべき内容。本作は各ライターにフォーカス、章立てて解説してくれていて今回も勉強になった。そもそもストリート文化なのでなかなかとっつき辛い部分もあるし、学問的なアプローチを取ると嫌われそうな部分を果敢に攻めてくれている点がライティングを知りたい読者勢としては助かる。前作にも通ずるけど、それぞれの作品を批評する美術論独特と思われる言葉使いや表現がオモシロかった。(普段美術論を読まないのでわからず) 作者の意図を読み解こうとすることが野暮だと言う人もいるし、作者の意図が100%正解だと言う人もいるだろう。けれど1つの絵を見てここまで想像力を働かせて言葉にしているのは1つの作品だと思う。人の批評にふれることで絵に限らず何かの対象に対して複雑に思考していくことは尊いんだという思いを改めて強くした。
本著中にも書かれている通り「アフリカンアメリカンの落書き(グラフィティ)」というステレオタイプから脱却するために1人1人の作家について略歴から説明してくれているのがありがたい。様々な出自/時代のライターについて書いていることでNYのストリートアート像が立体的に浮かんでくるのもオモシロい。文中で紹介される作品すべてが掲載されているわけではなく、今の時代ネットで探せばすぐ見れるんだろうけど、その検索をしなかったことで眼前に広がったのはボムされまくるNYの街の姿だった。アウトサイダーアートとして街の壁/地下鉄などにライティングすることはイリーガルだけど、そこにあるコードの在り方、可読性の議論が個人的には好きだった。
有名どころのキース・ヘリング、バスキア、フューチュラ2000あたりも某ファストファッションのTシャツで安易に消費されている状況において改めてその価値を知ることができたのは良かった。着るにしてもリスペクトの気持ちを忘れないでいたい。とくに日本では上記のとおりアートとして海外のライティングを消化する一方で街にある「グラフィティ」に対して愛のない態度が目につく。「許可を得ていないもの」に対して露骨なアレルギー反応を示すくせにバンクシーをありがたがる、そんな態度はf*ck offなので皆これを読んで愛を持ってほしい。ちなみに私の皮膚組織中の基底細胞には真性メラミンが少々含まれる。