最初に父が殺された ―あるカンボジア人少女の記憶―

  • 青土社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791770359

感想・レビュー・書評

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  • ポル・ポト率いるクメール・ルージュによって数百万の人民がなくなったという歴史的な事実は知っていたが、一当事者の体験記を読むことで改めて酷さ、理不尽さがわかった。
    家族が無理矢理引き離され、精神的に辛くても、体を壊しても支え合うこともできず、飢えや過労によって死んでいく。そんな酷いことがあっていいのだろうか。
    ポル・ポト政権が生まれたのは東西冷戦、中国共産党の伸長、ベトナムの台頭を快く思わないタイの思惑…など当時の世界情勢が背景にある。
    本の冒頭にもこれは誰にでも起こりうることだと記載があったが、誰かの利己的な思惑によってこのような悲劇が繰り返されないことを望んでいる。

  • 日本がポルポトを陰で支援していたこと、つい数十年前に起こった出来事だということ、忘れてはいけないと思った。

  • 「ポルポト」「知識人の大量虐殺」世界史の授業で習って言葉だけは知っていたけど、まさかこの酷い話がつい最近の出来事だということに驚いた。作者は自分の親と同世代。ほんの50年前に、ハイソな人々と農民の立場が180°ひっくり返るトランプゲームのような革命が起きていたなんて。

    『あなたがこの時代にカンボジアに生まれていたとしたら、これはあなたの歴史になっていたかもしれない』冒頭にあったこの文章は大袈裟なタラレバではないのだと受け止めた。

    ポルポトの大虐殺の歴史をまともに知らなかった自分を恥じると同時に、カンボジアに観光しに行った数年前の自分にこの本を読ませたい。


    ・極端な資本主義/共産主義は危険だということ
    ・飢えや貧しさ、絶望は人々の優しさを奪うこと
    ・戦争で最初に犠牲になるのは子どもであること
    ・憎しみが憎しみを生むこと

    親になった今だからこそ、より一層「戦争は絶対に嫌だ」という想いが強くなる。今生きている平和を当たり前だと思わず、平和を守るために過去の残虐な戦争の歴史を知り、子どもたちに伝えることが大切だと気づかされた。

  • ネットフリックスの映画を見たが、映画での描写は少なめなので理解が曖昧。
    なので背景理解を自分で調べることによって、当時の悲惨な状況を垣間見ることができた。
    ミクロで見ると戦争って本当につらくて、当たり前の幸せがあっけなく破壊されてしまうものだと、作品を通じて強烈に訴えかけられる。

  • 巻頭に飾られた著者の家族たちの写真を目にしてから本文に入ることになるため、ルオンの家族たちの誰が生き延びることができるのか、知ったうえで読み進めることができる。率直に言って、そのことが読み進める上で救いだ。そうでなければ、救いが無さ過ぎて、読み進めるのも辛い。

    クメールルージュによる自民族迫害を生き延びた著者とその家族。いつ、誰が、なぜ、殺されるのか分からない、その状況を読み進める緊張たるや声をあげたくなる。読みながら、ルオンが危機を脱すればため息をつき、食料を見つければ安堵する。迫真の筆致。

    起きたことの理由を理解することは、人間の頭脳では無理かも知れない、そう思わされる極限の不条理。少女の視点で、起きたことが事実としてのみ語られ、解説や考察はない。それ故に読者も惑い、不安になり、怒りを感じ、無力さを知ることになる。

    記憶すべき文章の数々。重いが、受け止めなければならない作品。

  • クメールルージュによる大虐殺を経験した、中国系カンボジア人の一家の物語。
    クメール語で書かれた次兄の手記を長兄が英訳し、それを参考に三女が自身の経験した事実とともにドキュメンタリーとして仕上げた作品。しかし、長兄が翻訳を拒んだ章があるという。長兄と次兄が送られた労働キャンプでの日々が描かれた章がそれにあたる。訳されない訳せないからこそ、とてつもなく怖ろしい出来事がそこにあったのだろうと思われ、肌が粟立つ。
    中国の文革と同様、共産主義の嵐が人民から豊かな土地を根こそぎ奪い取った事件。
    罪は、共産主義の考え方にあるのではなく、それを実施する方策の拙さにあるのだろうか。

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