- Amazon.co.jp ・本 (740ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791766284
作品紹介・あらすじ
将棋の王様・阪田三吉の軌跡と大大阪の空間性、新世界の荒廃と飛田遊廓、ジャンジャン町の隆盛。産業資本と大阪政界の思惑の一方で、借家人同盟、野武士組、女給たちが立ち上がる…塔のみえる場所で、人々は彷徨い、遊び、闘い、そして何を生んだか?圧倒的密度で描く、大阪ディープサウス秘史。
感想・レビュー・書評
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【書誌情報】
『通天閣――新・日本資本主義発達史』
著者:酒井隆史[さかい・たかし] (1965- )
定価:本体3600+税
発売日:2011年12月
ISBN:978-4-7917-6628-4
将棋の王様・阪田三吉の軌跡と大大阪の空間性、新世界の荒廃と飛田遊廓、ジャンジャン町の隆盛。産業資本と大阪政界の思惑の一方で、借家人同盟、野武士組、女給たちが立ち上がる……塔のみえる場所で、人々は彷徨い、遊び、闘い、そして何を生んだか? 圧倒的密度で描く、大阪ディープサウス秘史! 第34回サントリー学芸賞受賞!
〈http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=1852〉
【目次】
目次 [001-004]
題辞 [006]
序 007
第一章 ジャンジャン町パサージュ論
第一節 新世界! 新しい世界! 012
1 還って来た男――小野十三郎、大阪に帰る
2 古き世界の上に
3 戦時下の遊歩者〔フラヌール〕
4 電気広告塔
第二節 抗争、新世界 047
1 侠客たちの博覧会
侠客たちの博覧会
小林授産場
侠客列伝――小林佐兵衛こと明石屋萬吉
クリアランス小史、あるいは逃亡の地図(1)――博覧会前後
2 見世物と暴動――第五回内国勧業博覧会
3 大阪土地建物会社とルナパーク
4 初期新世界風雲録
侠客群像
ルナパークの凋落
住民・対・大土地
起死回生
5 キナ臭い動き
第三節 水漏れする装置 119
1 ジャンジャン町の誕生
2 私娼、公娼、「生活不安」
3 愚ナパーク・死ンジゲート
岩下清周、小林一三、高倉藤平
高倉藤平小伝
思惑筋の高倉藤平
『大阪日日新聞』 による猛攻
4 二つの土地開発
ジャンジャン町パサージュ論
注 161
第二章 王将――阪田三吉と 「ディープサウス」 の誕生
第一節 阪田三吉のモンタージュ 180
1 「天王寺の長屋」 の阪田三吉
2 「阿呆なトラブル」
3 虚構と歪曲、その論理
第二節 夕陽丘の将棋指し 201
1 棋道半世紀
2 素人名人、阪田三吉
クリアランス小史、あるいは逃亡の地図(2)――旧長町初期クリアランス
燐寸工場と 「今池」 長屋
3 将棋指しとマッチ工場主
第三節 将棋の王様 244
1 身ぶりの人
2 9四歩の青春
3 沈黙と復活――伶人町(夕陽丘)以後
南禅寺の一戦まで
最後の決戦
4 阪田三吉の大大阪
おわりに
注 275
第三章 わが町――上町台地ノスタルジア 287
1 288
2 296
3 310
4 318
5 326
注 333
第四章 無政府的新世界
第一節 借家人同盟、あらわる 338
1 一九二一(大正一〇)年二月一四日、中之島中央公会堂
2 借家人同盟の地理学(1)
3 騒然性、収斂と分岐――中之島、天王寺、米騒動
第二節 Trans Pacific Syndicalism / Trans Pacific "New World" 369
1 荒畑寒村と和田久太郎
2 「主義者」 たちの 〈新世界〉
戎館での会合
「出眼金」 と 「遊侠社」
3 Trans Pacific Syndicalism
4 「訴訟狂」 逸見直造
(一)過払電燈料金返還訴訟
(二)有価証券交換請求訴訟
5 IWW【Industrial Workers of the World 世界産業労働者組合】とサンフランシスコ大地震――アナルコ・サンジカリズムへの二つの契機
6 一九二二(大正一一)年の野武士組
野武士組の登場
荒畑寒村との交流
春乃家の会合――総連合への布石
女給同盟と野武士たち
「一大組合〔ワン・ビッグ・ユニオン〕」 にむけて――いわゆる 「アナボル」 分裂へ
7 縦断と横断
8 「サンジカリズム」 の地理学
第三節 借家人の精神からの社会的なものの誕生 453
1 「ヘンミ」 の記憶
2 長屋経営から 「店子の思想」 へ
3 借家人同盟結成まで――水崎町の 「労働者無料法律相談所」
4 家主・対・借家人
5 借家人の戦術
値上げ訴訟と値下げ訴訟
借家人の戦術としての家賃〔レント〕ストライキ
家主階級・対・借家人階級
6 「部落」 か 「方面」 か
借家人同盟の地理学 パート2
7 社会的なものの上昇
8 「部落」 か、「方面」 か――パート2
方面委員に映しだされた逸見直造
9 方面委員、借家人同盟、侠客――都市に埋め込まれた三つの調停機能
むすび―― 一つの時代の終わり
注 531
補論 外骨の白眼/蜂の巣、蜘蛛の巣、六道の辻――クリアランス小史、あるいは逃亡の地図(3) 561
補論1 外骨の白眼〔しろめ〕 562
1 『滑稽新聞』・対・博覧会
2 『滑稽新聞』・対・悪弘黒眼
3 「新聞王」 吉弘白眼
4 二つの焦点――『大阪日報』 と 『滑稽新聞』
補論2 蜂の巣、蜘蛛の巣、六道の辻――クリアランス小史、あるいは逃亡の地図(3) 598
1 「蜂の巣」 掃討作戦
2 犬殺し――下層階級と危険な階級
注 616
第五章 飛田残月
第一節 湿った底に 620
1 遊郭前史
2 飛田遊郭指定――私娼の制圧?
3 大門通り
4 廊〔くるわ〕のなか
5 旭通り
第二節 敷居の町 661
1 複数形の通天閣
2 湿度と倦怠
3 白昼の幻覚
4 さまよう女
5 敷居の町
おわりに
注 705
参考文献 [714-727]
あとがき(二〇一一年一〇月ニ七日 酒井隆史) [729-734]
人名索引 [i-vi] -
大阪の笑いというのが必然的に要求されてきたということが肌身に染みて実感された。その底流を深い悲しみが浸しているのだ。
あと、川島雄三の、大阪的なるものの指摘、つまり、得体の知れない人やノイズが絶えず出入りしている、その、ごちゃごちゃした感じ。納得。 -
分厚い本。物語りのような経済の本。
-
カオティックなことやもの、ひとびとについて考える。
読んだのは今日(登録した日)から結構前になってしまうので、アバウトで短い感想になってしまう予感があるのだけれど、面白かった。それも半端ではなく。著者がどれほどまでにこの大阪ディープサウスに心ひかれてこの本を書いたのかびっしびしと伝わってくる本である。すなわちほんとうによい本だと思う。
個人的なことに寄せて考えてみると、本書の最後の最後に少しだけ触れられているフェスティバルゲートの中期から後期頃(という表現があるかがわからないが)の間に関西圏で生活していたわたしにとっては、やはりこのような歴史をもつ場所では、フェスティバルゲートはこのような結末にならざるを得なかったのだろうな、と思う。一方で、後期フェスティバルゲートで活動をしていたcocoroomに何度か行ったことがあり、あそこを中心として(今考えてみれば)ディープサウス的な何かがたちあがってゆくのではないか、という期待感もあった。結局あの場所での活動は断念せざるを得なくなってしまったようなのだけれど、そこにいたひとたちは今も活動を続けているようだと聞くし(関西を離れてしまって細部までは知らないのだが)、それもまたディープサウス的なのかな、とも思う。いまは伏流、ただもうしばらくしたら出てくるのだ、と信じている。そういうものなのだろうから。
いつもながらにうまくまとまらない。 -
資料ID:W0165746
請求記号:216.3||Sa 29
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資料番号 : 011443066
請求記号 : 216.3サ -
216.3:Sa