- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784790233824
作品紹介・あらすじ
それぞれの事情で、養母の家に預けられた3人の子どもたち。みんながバラバラの方向を向いていて、ちゃんと向き合わずに過ごしてきた。そこへ新しくアスペルガー症候群の男の子が仲間入りし、その子の母親に会いたいという願いをかなえるために4人は冒険に出かけることになる。
作者M・G・ヘネシーのデビュー作『変化球男子』に続く第二弾です。これからの時代、家族とはどう定義すればいいのか? その問いに対するストレートな回答がこの物語です。どんな家族も、最初から家族なわけではありません。本物の家族になるには、その成員がみな、自分以外のメンバーの心の痛みをわかって、助け合うことが必要なのです。そういう家族が集うのが本物の家庭であり、子どもにとってはそここそが、安心できる自分の居場所となるでしょう。
感想・レビュー・書評
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M. G. Hennessey
https://www.mghennessey.com
海を見た日 鈴木出版 Suzuki Publishing
http://suzuki-syuppan.co.jp/script/detail.php?id=1050023900詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「これからの時代、家族とはどう定義すればいいのか? その問いに対するストレートな回答がこの物語です。」とあった。
育った環境も違う、自閉症やADHD、言語の違いなど問題も抱えている4人の里子と、育児放棄をしている里親。そんな5人が家族になっていく過程が描かれている。
家族ってなんだろうを考えさせられる。
血縁関係にありながら心の繋がりがない家族がいかに多いいか。
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これが児童書なことに驚き。すばらしい
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夫を亡くした里親と一緒に住む、ティーンエイジャーのナヴィア。同じく里子の男の子2人、女の子1人のために、母親の様に家事をこなす。
頁が進むにつれ、4人が本当の家族になってくる。
初めは名前が混乱して話がよくわからないのは、海外文学あるある。そこを通過すると、それぞれの個性がハッキリしてくる。
現代的なストーリー。
鈴木出版の児童文学にはいつも心を持ってゆかれる。
#中高生 -
令和4年度課題図書、中学校の部。
アメリカの里親制度についての作品ということで、まあ重ためのテーマ。
バラバラの里子4人に
ネグレクト気味の里親と、
移民にアスペルガーにヤングケアラーとてんこもり。
登場人物がバラバラ過ぎて最初はどうなることかと思うけれど、冒険に出てからは話がぐっと面白くなる。
タイトルの意味がわかって、表紙を見たら、ほろりと感動しちゃう一冊。
ただこれで感想文を書くのはちょっとキツそう。
読む分には面白かったけど。
アメリカの里親制度のリアルな歪みを描いているらしいけど、それを、日本の中学生はどう受け止めるのかな…。重すぎる。 -
それぞれの子供が抱えている悩みや願望がリアルに伝わってじゃあ自分はどうだろうと考えることができる本。
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読書感想文コンクール課題図書中学校の部
評価は大人としてで、中学生向けかと言うと疑問です。
アメリカの里親問題、そして人種や障害も絡まった複雑なストーリー。
私の好きなシリーズの中でもかなり読み応えがありました。
原題は「エコーパークの漂流者たち」となるそうですが、「海を見た日」という邦題がとてもいいと思います。この「漂流者」と訳される「Castaway」には、「(家族などから)見捨てられた人」という意味もあるそうです。
物語のクライマックスでの登場人物たちの会話から抜粋
「オレたちは、無人島に流れついた漂流者だ!」
「いや、海に投げだされたんじゃなくて、世間に投げだされたって意味」
「でも島にたどりついた、でしょ?」
「たしかに」
「ってことは、漂流者だって捨てたもんじゃない」
タイトルの意味を知る前から、この部分が一番心に響きました。
「島」が表すのは、ほっとひと息つける「Home」だと思いますが、一人でも多くの里子に「島にたどりついてほしい」と思います。
日本でも子どもの貧困など問題は多いけど、アメリカの数の比ではない、と改めて思うとともに、もちろん日本の子どにも知ってほしい世界の現状ではあるけれど、以前自分の娘にこういう類の本を勧めたとき、「(自分の問題でいっぱいいっぱいで)心がまいってるときに読みたくない」と言われて以来、勧められないでいます。
日本版の表紙と裏表紙、そしてラストからは希望や勇気ももらえる本だとは思うので、より社会問題に関心のある子には読んでほしいと思います。
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『感想』
〇里親のもとで育つ、複数の子どもたちの物語。
〇子どもって妄想が好きだ。妄想の中では自分が主人公になれる。これは楽しみだけじゃなく、現実逃避でもある。大人になっていくと妄想している暇がなくなる。これは夢を諦めていく側面もある。
〇血の繋がりが一番大切ってわけではない。現実でも他人である人と結婚したり、親友ができたりする。でも一緒に過ごした時間が多い、成長の過程でいつも傍にいて変化を見ていた人っていうのは、共通する思い出も多いわけで、大切だ。
〇父が母が自分をいつか迎えに来てくれるという希望を持っていて、でも現実にはもう亡くなっていてそれがない状態というのは、諦める理由がある分いいのかもしれない。実はどこかに父母がいるのに、父母の意志で迎えに来ない、それを子どもが知ってしまった時はどうなのだろう。
〇自分の殻に閉じこもって、自分のことだけを考えてしまうのは仕方ないのだが、人は人と関わり合いながら生きていくしかない。子どもにそれを求めるのは難儀であるしかわいそうなことだが、強く生きていってほしいと心から願う。 -
著者が里親制度の特別擁護者として活動しているというだけあって、制度がパンクしかけていて、誰でも申し出れば里親になれるというあたり、現状が生々しく記されている。
物語は「ミセスK」という里親のもとにいる4人の里子のうち3人の視点から交互につづられる形。ミセスKは、夫を亡くしてから悲しみに支配されていて、自分の仕事をこなすのだけで精一杯。子どもたちの食事などは、ほとんど14歳のナヴィエアが面倒を見ている。つまりナヴィエアは自分が里子であるうえにヤングケアラーでもあるのだ。
新しく入ってきたアスペルガーの男の子クエンティンは、母親が重い病気で入院しているという。ママに会いたいクエンティンの望みをかなえるために、もうひとりの男の子ヴィク(この子はADHD)は、ある朝こっそり家を抜け出すが、けっきょくナヴィエアが気づいて、4人の子ども全員でクエンティンの母がいるという病院をめざすことになる。
大人も子どもも、それぞれの問題を自分の頭のなかだけにとどめていて、お互いに対しては「きっと○○だろう」という想像で動いているから、話がややこしくなる。でも、だいじなことをちゃんとつたえて、きちんと対話するってとてもむずかしいこと。それができるようになったナヴィエアやヴィクはとてもえらい。とくにこれから高校に進学するナヴィエアのことは、心から応援したくなった。 -
里親であるミセスKの家にはもうじき高校生になるナヴェイアとスペイン語しか話せない幼いマーラ、そしてやたら元気なヴィクが里子として暮らしている。そこへ自閉症のクエンティンがやってきた。クエンティンが入院している母親に会いたいと思っていることに気づいたヴィクは、二人でクエンティンの母親に会いに病院を目指すが…。
里子たちも、里親も大きな問題を抱えながらも、必死で生きていることが伝わってくる。難しいテーマながら、前向きな気持ちにさせてくれる話だった。