キャラメル色のわたし (鈴木出版の児童文学 この地球を生きる子どもたち)
- 鈴木出版 (2020年8月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784790233695
作品紹介・あらすじ
黒人のパパと白人のママが離婚し、イザベラは1週間ごとに両親の家を行き来する生活を続けている。イザベラは家族について、アイデンティティについて悩む。ピアノの演奏会の日、黒人の兄とともに警官に拘束され、銃を向けられてしまう。
感想・レビュー・書評
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場所はアメリカ。日本でもミックスルーツの人が増え、スポーツやアートなど様々な分野で活躍する人もいる中、何気ない言葉に傷ついたり、誹謗中傷を受ける事象もあるだろう。BLMの事件のことについても触れられており、日本語で読めるYA作品として貴重な一冊。 -
始めから半ばの展開、そして衝撃のラスト。
場面場面でいろいろ考えさせられながらも
全くあらすじなど知らずに読んでよかったと思います。
原題はBlended
blended familyは混合家族。
日本語のタイトルも訳もよかった。
両親が離婚しても、それぞれから愛されて、それぞれのパートナーからも愛されて、素敵なお兄さんまでできたら幸せじゃないか、なんて思ってしまうけど、そんなに簡単に割り切れるものじゃないのでしょう。
公式な書類に人種を書く欄があるとか、1967年まで異人種間の結婚が違法とされていたとか、今の社会問題の奥深さを改めて感じました。
日本で暮らす子どもたちにはなかなか想像しにくいことでしょうが、考えるきっかけとして読んでほしいと思います。
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今、読むべき本。多くの人に読んでもらいたい本。たくさんのことを知って、考えることができる作品だけれど、語り口はすごく読みやすくて、親しみやすい。アメリカのローティーンの女の子の生活、という感じで読んでいて楽しい。訳者あとがきにこの本のいいところ、注目して考えてほしいところがうまくまとめられているのもいい。
学校で黒人差別的なことが起きたときに、みんなが声をかけてイマーニを励まして、多くの人が差別について良くないことだという意識を持っているのがわかるけれど、実際はどこか心の奥に差別的な何かを持っていて、それがふとしたときに顔をのぞかせる。クリントの発言で、それが感じられる。そして、そういう面は自分にだってあるのかもしれないと思うとこわい。
銃のシーンはやっぱり衝撃的だった。ポケットに手を入れたら銃だと反応するなんてことは日本だと考えられない。子ども相手ならなおさらだ。でも、これが現実なんだよなとあらためて思った。
このくらいの年齢の主人公の本は最近多いな。同じくらいの年齢の子にぜひ読んでほしい。 -
6年から。黒人と白人の間にうまれた主人公。名前の呼び方も、離婚によって週ごとに変わる2つの生活も持つ私。それでも、彼女は自分を誇りに生きる。象徴であるピアノと彼女の存在が、差別のない世界への希望を描く。
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白人の母親と黒人の父親の間に生まれたイザベラ。両親は離婚していて、イザベラは1週間ごとに母親の家と父親の家を行き来している。
11歳になるまで、まだ人種問題には直面したことの無かったイザベラだが、ある日学校で親友のイマーニが嫌がらせを受け、学校中が緊張に包まれた。
イザベラはイマーニに寄り添い、乗り越えようとしていた。
イザベラは幼い頃からピアノに親しんでいて、近くにせまった演奏会を楽しみにしていた。両親のそれぞれの新しいパートナーともうまく行き始めていて、全てが順調だったのに…。
今のアメリカの問題がひしひしと伝わって来る。
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12歳のイザベラは、1週間ごとに離婚したパパとママの家を行ったり来たり。パパの週とママの週に生活を二つに切り分けられて「わたしの週」はないみたい。それでも発表会に向けて大好きなピアノのレッスンを頑張っていたイザベラでしたが、これまで意識していなかった人種差別の問題が日常生活の中に見え隠れしはじめて…。黒人のパパと白人のママの間に生まれ、どちらでもない自分に悩みながら前向きに生きるアメリカの少女の物語。最後のエピソードは衝撃的。現代アメリカを映し出すラストです。
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2023.7.13市立図書館
ドレイパーの「わたしの心のなか」がよかったので、その続編(今月新刊)の図書館入りを待ちつつ、別の作品を手に取ってみた。訳者(横山和江さん、アン・クレア・レゾット「目で見ることばで話をさせて」もこの人の訳業だった)と出版社は同じ。原題は「Blended」
親が離婚して、共同親権の取り決めでそれぞれの親(と新しいパートナーら)と一週間ずつ暮らすことになってしまった一人っ子の少女イザベル/イジー(11歳)の物語。
調和をくずしてしまった家族と主人公がうちこんでいるピアノ(音楽)が二重写しになっている。また、離婚で黒人のお父さんと白人のお母さんの間に、校内で差別的な事件がおこって黒人の生徒と白人の生徒の間に微妙な空気ができてしまうことも複雑に重なっていて、人種の問題に疎い日本の読者が読んでも、黒人と白人どっちつかずな立場(いわゆるハーフ)の主人公が直面するさまざまなデリケートな問題に多かれ少なかれ気がつき、気持ちを想像することができるだろう。単一民族幻想の強い日本とは違いさまざまな文化が共生していて人種の坩堝とかサラダボウルとか言われるアメリカであっても、ハーフというのはやはり難しい立場であるのだと改めて知った。たがいに相手を決め付けたり糾弾するのではなく建設的に話し合う難しさ、幼いうちは気づきにくかった差別的なあしらいに直面したショック、悪意のないマイクロアグレッションにモヤっとするしんどさ、そんな主人公本人もまた差別的なこと言ってしまったかもと反省するような場面・・・小さな問題を一つずつクリアしたりモヤモヤしたまま抱えたりしつつむかえた最高の日になるはずがショッキングで最悪な出来事に見舞われるという展開ながら、主人公は人間関係に恵まれ、運もよく、この先には希望があると感じながら本を閉じることができて、児童書、YA文学のお手本のような作品だと思った。