学校の「当たり前」をやめた。 ― 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革 ―

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  • 時事通信社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788715943

作品紹介・あらすじ

宿題は廃止。固定担任制も廃止。中間・期末テストも廃止。およそ全国の中学校で行われていることを問い直し、本当に次世代を担う子どもたちにとって必要な学校の形を追求する、千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長。自ら学習し、将来を切り拓く力は「自律」。大人が手をかけすぎて、あげくの果てになんでも他人のせいにするようなことにならないよう、中1から中3までの授業や行事を組みかえる。生徒や保護者に強く支持される学校づくりの全貌がここに。

感想・レビュー・書評

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  • 『世の中まんざらでもない。大人って結構素敵だ!』『「はやく大人になりたい」こどもを育てたい』…著者からのメッセージを紹介します。

    p183~
    『君たちにメッセージが2つある。1つは人として本当に大切なことをしっかりと分かってほしいということだ。(中略)とにかく忘れてはいけないことは命を大切にすること、人権を守ること、犯罪をしないことだ。絶体に忘れるな。もう1つは、信用を得ることだ。信用を得るためには時間がかかる。信用は行動の積み重ねでしか得ることはできない。(中略)信用を得るために全員に特に努力してほしいことは、掃除だ。掃除は誰にでもできるが、(中略)しっかり汗をかくくらいやってほしい(中略)これをしっかり続けていけば、信用が何かということが必ず分かるはずだ。掃除を通じて学校をピカピカにしよう』

    「宿題は必要ない」「クラス担任は廃止」「中間・期末テストも廃止」
    『当たり前』といわれてきたこと を『疑う』『見直す』
    『目的はなにか』
    『対立があってもいい』
    『トラブルが生じたら対話する』
    中学校校長として学校改革するなかで生まれた言葉たちを読むと、『このようなな教師がいるんだ!』『実際に学校教育を変えた人がいるんだ!』『実際に自分の職場でも生かせるかも!』と、大いに励まされました。
    多くの人は、工藤さんのようにはできないかもしれないけど、『自分のできる範囲』で、まずは、『周りの人を楽しませよう♪』くらいならできるかも?
    例えば、『いじめ』『ハラスメント』状況を発見したら、『それって…、いじめ(ハラスメント)じゃない?』と、ボソリと呟くだけでも意味があるのではないか?だれも聞いてなくても、その独り言は自分が聞いている。自分にうそをつかない。それだけでも、なんだか、いろんなことが救われる気がするのです。
    著者の工藤勇一さん、勇気を与えてくださりありがとうございます。この場をお借りしてお礼を申し上げます。m(。-ω-。)m

  • 窓ガラスが全部割られた中学校で子どもたちと掃除を徹底して普通の学校に立て直すとか、現実にできるんだなー。そこまで人を変えられるんだなー。
    チーム担任制、宿題の撤廃、子どもたちに力をつけるための独自のプロジェクトなとなど、どれも理にかなってて素晴らしいの一言。
     
    少しでも真似できることはないかと思って読み始めたけど、工藤先生の熱意と行動力がありすぎて、取り組まれてることの規模も大きすぎて今の私にはとても実践できそうにない。
     
    けど、先例に囚われず、理想とするものを目指して手立てを考えて実践していくというスタンスは、確実に見習わなければ。

  • 1.ずっと前にテレビで紹介されて以来、気になっていたので読みました。

    2.中間テストやクラス担任という学校生活では当たり前の習慣を廃止してきた著者の努力を書いたものです。
    昔のしきたりに囚われている学校がここまで変化するためには相当な努力が必要です。著者はその努力をいとわずに当たり前を疑っては改革を行ってきました。「教師とは?」「学校とは?」「教育とは?」という本質的な問いから始め、それにそぐわない行為は徹底的に切り捨ててきました。こうすることで、生徒自身の成長を加速させますし、企業の人たちも賛同してくれます。

    3.WHYから始めることがどれだけ大切なのかがわかる本でした。この本では学校でしたが、会社でも同じことだと思います。意味が分からないルールがずっと残っており、上司からの指示でやらされているという体験をしたことがある人は多いと思います。そんななかで、本書は自分で変えていくという選択肢の見本となる本でした。
    本書を読んでいる際に気づいたのですが、もし自分が上司になって「こうあるべきなんだ」と思った瞬間がダメになる瞬間だと思いました。こう思った時点で先入観に囚われますし、押し付けにしかなりません。そうならないためにも常に「WHY」に戻るということが大事なのだと思いました。

  • 工藤校長のこの改革には、基本的には大賛成である。ただ、一方で、どうしても頭から離れなかったことがあって、それがこの本では解決されなかったので、星は辛めだけど3つにした。
    その解決されなかったこととは、こんなに素晴らしい教育を受けられるか、受けられないかということが、「たまたま麹町中学の学区に住んでいるかどうか」ということだけで決まってしまうという問題。もちろん、わざわざ引っ越して、あるいは越境を認めてもらうだけの理由があれば、この教育を受けることはできるかもしれない。でも、千代田区麹町エリアという、都内でも有数の不動産価格が高いエリアに引っ越せるだけの経済的な余裕、あるいは、越境を認めてもらえるだけの「特別な」理由がなければ、あとは「このエリアに住んでいてラッキー」という偶然性だけで、この素晴らしい改革の恩恵に預かることが出来るというのであれば、公教育としてはどうなんだろうと思わずにはいられないのだ。
    これが公立中高一貫校で入試でもあれば、エリア外の子供にもチャンスは開かれるのでまだ納得はできる。でも、同じ公教育で、一方では学区という縛りでブラック校則にがんじがらめにされて学生生活を送らなければならない生徒もたくさんいることを思うと、麹町中学のことを手放しで絶賛できない。同じ公教育でありながら、この改革の恩恵を受けているのは、ほんの一握りの、たまたまラッキーな何百人の子たちにすぎないのだ。
    また、工藤校長が転勤された後、後任の校長がこの内容を引き継いでくれる保証もない。トランプのように、前任者のやったことをすべて否定するのが自分の仕事と思ってるような校長が赴任してきてしまったら?この点も心配になってしまった。
    さらに、上っ面だけ舐めて、うちも改革しましたとドヤ顔する学校がこれからたくさん出てくるのだろう。工藤校長の理念には本当に共感するし、行動力実行力は尊敬するし、麹町中学のような学校が増えてほしいと願わずにはいられないが、前途は多難すぎる気がして仕方なかった。

  • 定期テストや宿題、担任制など数々の学校の当たり前を廃止された公立中学校の校長先生の実践記。
    書評サイトで高く評価されていたので手に取りました。

    一読して驚くのは、実践の一つひとつがきちんとした合理性に基づいていること。
    曰く、
    ·学校は何のためにあるのか?
     子どもたちが「社会の中でよりよく生きていけるようにする」ためにある。
    ·そうであるなら、そこで行われる教育も制度も子どもの自律に向けて作り直されるべき。(筆者はこれを学校のリ.デザインと呼びます)
    ·こういう基本方針のもと、それまで当たり前とされてきたテスト、宿題、担任制、修学旅行などの見直しを進められます。
     目的に最も適切な手段となっているか?
     手段が目的化していないか?
    筆者が学校の教員とともにリストアップした項目は200にも上りました。

    もちろん、筆者の考えに反対する教員も存在します。「対立は学びのチャンス」と捉え、話し合いの中で、上位の目的に照らして解決策を検討し、反対する教員を巻き込み、彼らを改革の当事者にしていきます。

    この辺りの進め方は、学校だけでなく一般企業、行政にも十分応用可能だと思います。
    もうひとつ本書が優れているのは、筆者が民間出身でなく、学校の教員を経て教育委員会で教育行政にあたられた、いわば身内の方だということ。

    とかく改革というと外部出身でないとできないと思われがちですが、内部からでも問題意識の持ちよう一つで大きな成果が得られます。

    仕事に向かうに当たって勇気をもらえる一冊でした。

  • 娘が小学校に通いだして自分の小学校時代からほとんど進化していない教育手法に嫌気がしていた。ランドセル・PTA・教材の現金集金などやり方なども変わらず、教員不足やブラック労働・いじめ・不登校など全くもって改善をしていない。これは学校だけが悪いのではなく保護者も含めて「学校ってこういうもの」という当たり前が改善できなかった原因だと思う。

    こういったことは文科省の指導要領などが悪いと思っていたが、この本には公立中学校でも校長が本気になれば現代の教育として最適なものに近づけるということが書かれていて一保護者という立場ではあるが子供の教育環境を良くできないか、と思いこの本を手に取った。この本は自分が学校に対して考えていた不満や問題に対して公立中学校長が言語化してその解決策を実体験から示していてとても興味深い内容となっていた。

    この本で共感したことは多くあるが特に印象に残ったものとしては
    ・学校に行くことが全てではない。やりたいことがあればそれにコミットする(囲碁の例)
    ・宿題の出し方、やり方
    ・学校は人が「社会の中でよりよく生きていける」ようになるために学ぶ場所
    ・トラブルを学びに変える
    ・企画型取材旅行
    ・学校という不動産の活用
    ・進路を狭めるとその後の進路は広がる
    ・多数決の弊害、少数派意見の尊重
    ・小さな改善を重なることでオセロの駒が一気に返される日がきっとくる。

    現代の高校ではN高とかオンラインの学校もあるが、実質的に卒業までに必要な授業時間は一般的なリアルの高校の20%程度で済むと聞いたことがある。つまり8割の時間は自分の本当にやりたいことにつかるということ。私が望む教育はこの8割の時間に学校でしか経験できない体験型学習や世代を越えた交流などを充実させて、子供たちに「社会の中でより良く生きていける」ようになってほしいと思う。

  • 子供の中学校でも、定期テストが少なくなり、固定担任性が廃止されている。
    工藤校長の行動が、結果として、良かったからこそ、世の中に浸透してきている、ということなのだと思う。

    学校に限らず、当たり前をやめる、というのはとても難しいことだと思う。
    目的のための作業がいつの間にか目的になってしまうのはあるあるなので、常に日々の行動を疑ってかからなければいけないし、個人ではできない、複数人の目がなければ難しいと思う。

    課題のリスト化はそのまま自社でもできると思った。その際は、従業員から上がってくるものでなければならない。
    早速やってみる。

    学校における子供のように、会社における従業員に「自律」を促せるような組織でありたいと思った。
    上司は従業員の成長、自律を考えなければいけないが、直接的に成長を促す、ということがマイクロマネジメントで引っ張り続けることなのか?と難解さを抱いていたが、
    別の本で読んだように、間接的に成長を促す、つまり、経営者自身が成長をし続けて、それを見せ続けることで、従業員の成長に間接的に寄与する、ということを学び、今は随分とスッキリしている。

    ↓メモ
    大半の部分は、法令よりも「慣例」によって動いているだけです。校長が覚悟を持って、自らの学校が置かれた立場で何が必要かを真剣に考え抜くことができれば、いくらでも工夫できるものです。

    作業」を早く終わらせるべく、「へん」だけを先に 20 個書き、その後に「つくり」を 20 個埋めていくなんて「作業」をした人もいるでしょう

    ★心が行動を決め、行動は心を変える

    ノートの取り方については、「黒板を写す」のが日本の学校では主流となっています。しかし、黒板をただ書き写すだけでは、「書き写す」ことが目的となりがち

    対立は当たり前、もしそこに対立があれば、対話を通じて合意形成を図ることで、生徒が自らの言葉で話せるようになることが合宿のねらいです

    そのためにまず最初に行ったのが、課題のリスト化

    ★リストづくりは、教員自身の「自律」を高めるために取り組みました。もし、リスト化を私が単独で行えば、教員による業務改善は、「やらされる」ものとなる

    ★学校は子どもの「自律」を育成する場

    学校を良くするためには、校長や教員だけでなく、保護者も地域住民も、「学校を良くするために、自分たちは何ができるか」という視点を持たなければなりません

    世の中はろくなもんじゃない! 大人なんてなりたくない」と考えているような人間は、自力で解決する姿勢を放棄し、誰かのせいにするからです

    ★宿題や定期考査の全廃、固定担任制の廃止

  • ちょっと斜に構えて流し読みしていたのだが、今回のコロナ騒ぎでじっくり本を読む時間ができたので、改めて読んで、勝手な思い込みに反省した。

    現場の教員をずっと続け、その時その時の子どもたち同僚と向き合い続けて、どうして?いちばんの目的は?ということを自身に問い続けてきた筆者の地に足のついた内容で、共鳴できることが多かった。「目的と手段を取り違えない」「上位目標を忘れない」、「当たり前」なのだけれど、ふと立ち止まらないと素通りしてしまうことも現場では多いのかもしれない。たとえば「なぜ」定期テストを廃止したのか、「なぜ」オリエンテーション合宿を行うのか。「なぜ」学校はあるのかが語られていて、いくつも刺激を受けた。特に、世の中だって学校だって、様々な文化的・習慣的・民族的背景を持つ人、価値観を持つ人が集まって成り立っているのだから、「対立」が起きるのは「当たり前」。それをどう有機的に乗り越えさせる術を身につけられるようにするかという視点は、本当にそのとおりだと思った。

    最近、個人的には「対話」という言葉がキーワードで、いろいろなこととつながってきている気がする。

    世の中ってまんざらじゃないな。大人だって結構素敵だ!と年若い人たちが感じられるような「大人」でありたい。

  • この本を読んで好きな言葉が2つできました。一つ目は感情をコントロールする事、そしてもう一つがトラブルを学びにかえる。今の時代コミュニケーションを円滑にしていく中でいつも怒ってる人、なんとなく付き合うのを遠慮してしまう人、逆にこの人ともっと仲良くなりたいと思う人、いろんな方がいる中でこの感情のコントロールができている、できていないはこの子供の時から作られているんだということがとても大切なことだとおもいました。私自身感情のコントロールできてる方かなとは思いますが、人それぞれ熱くなるところポイントは人それぞれです。相手とお話している時にこの言葉を話してあげればその人も少しは冷静になるのかぁと感じました。もう一つのトラブルを学びにかえる、失敗を学びにというのは聞いたことありましたがトラブルというフレーズが私には刺さりました。ただのトラブルで終わるのではなくそこから学びの財産に変えることわかっていますがすべて仕事の中でやれているかというと三分の1くらいだと思いますので、いろんなトラブルの報告から学びがあるかを考えチェックしていこうと思います。
    本についてですが学校の目的はその人が人生をより良く生きるための手段であり、いくことが目的ではないこと。そんな本来の目的を今一度考えるきっかけになりました。会社もその人がよりよく生きるための手段です。その中で本人にも学びややりがいを与えることができ、人生80年の長い人生で仕事をこれから50年くらいする時代に会社で仕事をすることが楽しみの一つになってもらえるように精進しようと思います。

  • 当たり前を疑うこと
    叱ることをきちんとわける
    命、人権のこと

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著者プロフィール

【工藤 勇一】(くどう・ゆういち)
 横浜創英中学・高等学校長・堀井学園理事/前東京都千代田区立麹町中学校長 1960年山形県生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県中学校教諭、東京都中学校教諭、目黒区教委、新宿区教委等を経て2014年4月より2020年3月末まで千代田区立麹町中学校長。2020年4月より現職。麹町中での教育改革を加速させ、横浜創英中で2022年4月より中高一貫6年制の「サイエンスコース」を立ち上げる。社会で活躍するさまざまな人を学校とつなぎ、「社会に貢献する科学」を創出する新しい時代の学びを構築する。内閣府の教育再生実行会議(2021年9月に第12次提言を出し終了。後継会議が設置予定)委員。

「2023年 『社会を変える学校、学校を変える社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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