ユートピアの崩壊 ナウル共和国―世界一裕福な島国が最貧国に転落するまで

  • 新泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787710178

作品紹介・あらすじ

これはナウルだけの問題なのか-。豊富なリン鉱石資源の輸出により実現した税金なし・社会保障完備の"地上の楽園"は、なぜ短期間で破綻してしまったのか?太平洋に浮かぶ世界一小さな島国を襲った悲劇の物語から読み取るべき教訓とは-。

感想・レビュー・書評

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  • 信頼のおける友人から
    こんな一冊があるよ!
    と教えてもらった一冊

    たしか その時の雑談は
    「貧困」ということがキーワードに
    なっていました
    「そうそう、そういえば こんな話が
     実際に、しかも今の時代に
    この世界であったそうだよ」
    と概略を教えてもらい

    で すぐに手に入れて
    読み始めました
    いゃあ こんなことが…
    の連続に唖然とするとともに
    読み進めるほどに
    とても「他人事」とは思えず
    いまの この国(日本)のあれこれのことを
    重ねながら 読んでいました

    エピローグのあとの おまけに
    訳者の林さんが、著者のリュック・フォリエさんへの
    インタビューがあるのだけれど
    その中で
    林さんが「今の日本でも…」
    という問いに対して
    フォリエさんは
    「いや それはまず考えられない…」
    とおっしゃっていますが

    いやいや
    速く 広く 大きく 便利なこと
    ばかりが 目に余るように感じる
    のは 私の杞憂でしょうか…

  • 太平洋に浮かぶ小さな島国、ナウルについて、西洋人が到来してから2005年くらいまでの様子を、富裕な国家が最貧国に転落していく過程を中心に描いています。

    Easy come, Easy Go を地で行く話しです。

    リン鉱石の採掘の際には、島民が一切働かず政府が現金を支給していたのは、アラブの産油国も一緒ですね。オーストラリアドルで鼻をかむ話しは、日露戦争時の好況時にお札を燃やして懐中電灯かわりにした話しを思い出しました。

    金を渡したりするだけではなく、各家庭に家政婦を派遣していたというのもすごい話しです。で、今になって家事を学ぶ為にフィジーに留学するというのも、唖然とする話しです。

    転落の過程も唖然とする話しが多く、タックスヘイブンとしてペーパー銀行が乱立してマネーロンダリングが行われていたことくらいはわかりますが、パスポートを販売して、その収益が大統領に流れていたことは唖然とさせられます。

    そして、結局は、オーストラリアが難民入国拒否をするために場所を提供するというハメになるのが切ないです。

    一方で、庶民の生活も、ガソリンがない、銀行にお金がない、商店の棚が空っぽと、かなりすごいことになっています。政府の役人が、食料を確保するために夕方釣りに行くというのもすごい話です。結局、経済破綻をすると物々交換に戻るというのが良くわかります。

    個人的には、狭い島で、人口が1万人もおらず、大した娯楽がないので、みんな車で島の道路を何周もドライブするみたいなところには、とても住めないな、と思いました。

    最後に著者がインタビューで答えていますが、ナウルの人たちはお金に対して、我々とは違う認識。もうちょっというと興味がなかったのかもしれません。

    今後、この国が立て直されて行くことを期待します。

  • 1968年に独立し、リン鉱石によって一人当たりGDP世界一の国が、国・個人とも放漫財政の末にリン鉱石を掘り尽くし、21世紀初めには世界最貧国に!豊かな時代は想像を絶するような不労所得の億万長者が頻出し、暇を持て余す贅沢三昧の消費者だった衝撃的実話。農業も全く廃れた。あたかも宝籤にあたって放蕩三昧した後の姿に似ている。そして今は過去の飽食による糖尿病で死ぬ人が多い。貧しさが逆に食生活の改善、釣りなどの身体の運動になり、救いになっているという強烈な皮肉!2次採掘が始まりつつあることに希望が持てたことが救いか?リン採掘後の荒れた地面が働くことを放棄した人たちの現在を象徴している。中東の産油国ドバイなどには他山の石になるし、日本も教訓にするべき点がある?日本の資源は国民の勤勉さだったが・・・。「日本、荒廃した島-資本主義文明がいかにして裕福な国を破綻させたか」の可能性は冗談ではない。

  • 大分前にこの本の存在を知り、古本屋で見つけて即購入。
    南の島でリン鉱石バブルで一時世界で一番金持ち?になった島の物語。バブル中に稼ぐ手段を作れなかった島は没落するが、難民受入ビジネスでちょっと誤魔化し、それでもやっぱり没落したお話。大きな祭りだったんだろうな。

  • “アホウドリの糞でできた国”とよばれたナウル共和国。昔から渡り鳥のすみかで、その鳥たちの糞が土壌と混ざり合ってできる“リン鉱石”は肥料の原料となり、この国をみるみる豊かにしていった。リン鉱石の採掘によって国民の生活ががらりと変わっていく様子はまるで作り話のよう。しかしそんな状況がいつまでも続くわけがなく・・・。

  • オセアニアに浮かぶナウル共和国の繁栄と没落の歴史。
    リン鉱石で巨額のマネーが流れ込み、多くの国民がリッチになった。しかし、マネーが国民を堕落させ、政治家による無計画な投資と文化の喪失、リン鉱石の枯渇、糖尿病など成人病の蔓延を生んだ。この崩壊の歴史はオイルマネーで盛り上がる中東諸国でも肥満と糖尿病が増えている。同じようにならないとよいが。

  • オーストラリア北東の島国ナウルが世界的金持ち国から、わずか数十年で経済的に困窮する国に成り下がったしまったという嘘のような本当の話。
    「資源国の罠」というがまさしくナウルがそれにあたる。
    そして窮したナウルが取った道とは、また最後に一発勝負した先とは。
    まさしく絶句である結末。訳テンポもよくうん、うーーーむと考えながら読めた。

  •  白井市より小さい(人口は1/6),世界最小の共和国。20世紀,燐鉱石(グアノ)に依存してきた経済は,資源枯渇であえなく破綻した。グローバル化が一国の経済と文化を破壊した,その顚末。一級品の題材を読みやすくまとめている良い本。
     独立後,70年代を中心とする黄金時代。燐鉱石のもたらす収入で,夢の社会福祉制度ベーシックインカムが成り立っていた。分不相応な不労所得は,国民を怠惰にし,無茶な浪費と糖尿病を蔓延させた。鉱山や飲食店で働くのは,中国人。島に一本しかない道路を,ナウル人の高級車が駆け抜ける。
     金持ち国家には,「お友達」が近づいてくる。資源枯渇を見据えて海外に投資もした。しかし凋落にはなすすべもなかった。90年代には国家の収入は激減し,銀行は破綻。国民の貯金は失われた。
     経済が破綻したナウルは,不正行為に手を染める。パスポートを事実上無審査で発行し,タックスヘイブンへの転身で資金洗浄に手を貸した。国際的な批判が高まると,難民受け入れで収入を確保。捕鯨,国家承認など,国連での発言権を利用して,大国から援助を引き出すことも忘れない。…しかし,この転落ぶりには戦慄した。最近では再採掘という少し明るい話題も出ているようなのが救いではあるけれど。
     「終わりは来る」と思っていても,人間ってこうなのか,と思う。ナウルは消滅こそしていないが,ダイヤモンド『文明崩壊』にはそういう事例が多くあった。そういう人間の弱さ・愚かさを,人類全体にあてはめて考えると,やはり絶滅という未来しかないのだろうな。それが近い未来にならないように,歴史に学ばなくては。

  • 1970年代に資源で一山あてて富を得た国がBIに無償医療に...とした結果破綻した実話。

  • 南太平洋に浮かぶ珊瑚礁の島、世界で最小の国、ナウル共和国。この島は渡り鳥によって作られた高純度のリン鉱石により一時期、世界で最も裕福な島になり、そして資源の枯渇によって財政破綻を経験した。働かずして全てを与えられた国民は、車で一周するのに30分もかからない島で高級車を買いあさり、その車が不調になると修理もせずに道端に乗り捨て新車を購入し、最高の医療を得ていた・・・。信じがたい島の歴史と生活は、ドバイなど石油によって国民の生活が潤う国々の未来にも示唆を与えるようだ。そして、ナウルの未来はいかに。経済と政治が地に落ちた後は、「家事」すらできない島の人々を教育するところから始めなくてはいけない。資源の尽きたナウルに手をさしのべる国は、国連での発言権が欲しい台湾や、捕鯨の票が欲しい日本、難民問題を解決したいオーストラリア等であった。世界でもっとも小さい島国をめぐる出来事は、幸福とは何か考えさせられて、非常に興味深かった。

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