タイの地獄寺

著者 :
  • 青弓社
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本棚登録 : 86
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787220783

作品紹介・あらすじ

「地獄寺」と呼ばれるタイの寺院には、カラフルでキッチュなコンクリート像がこれでもかというほど立ち並んでいる。日本では「珍スポット」「B級スポット」などとして知られ、一部のマニアには注目されてきた。

獄卒、罪人、餓鬼、骸骨、オバケなどが立体像で勢ぞろいする地獄寺は、グロテスクでもあり、ときに笑いも誘う奇妙な風景をつくりだしている。

なぜ、タイの人々は日常生活のなかで地獄を表現しているのか? 地獄寺に魅せられ、タイ全土の83にも及ぶ寺院を実際に訪ねた著者が、タイの地獄思想、地獄寺が生まれた背景、さらに表現されている地獄の数々まで、地獄寺を体系的にまとめた世界初の地獄寺論考。

感想・レビュー・書評

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  • 書棚で出逢ってしまったら読まずにはいられない本ってありますよね。これはまさにそれでした。

    内容は、修士論文の書籍化とのことで学術論文の手法が使われていますが、わかりにくい表現や内容は無し。読みやすく楽しく学べます。

    あとものすごく個人的な話になるのですが、どうやら著者は私の大学の同期生っぽくて(学部生時代に別の大学だったら話は別なのですが)、偶然手に取った魅力的な本が、自分の知っている空間で書かれたという事がうれしいですね。

  • 読んでみると、元は修士論文で、まともに地獄寺の思想的起源やら背景やらをちゃんと書いている。
    写真が多いので固い文体だがサクサク読める。
    地獄にもITが導入されていてちょっと衝撃。
    タイには地獄寺が多いらしい。

  • タイの地獄寺は楽しい。こんなことを書いて不信心だと思うが漫画的で面白いのだ。地獄に行くとこんな残酷なことが行われていると立体的に描かれているが、ちっとも恐ろしくない。表情が漫画的で悲壮感が伝わってこないのだ。タイの人は悪人にも優しいのだろう!

  • 仏教の教えを視覚的にあらわす
    教えを体感するための立体図解
    タイの仏教思想、地獄思想から説明されている
    テーマパークではなく、各寺にそれぞれ地獄をあらわした像がある、写真の様々な地獄図像が強烈なインパクトで、悪いことをすると地獄に落ちる教訓を
    体感できると思う。

    タイの地獄表現は時代に合わせて進化している、
    仏教が生きているから
    日本の地獄思想は千年以上に前から視覚的に表されて変わってないから

  • ともかく調査力がすごい。誠に正統的な論考!だけど、何より写真を見ていくだけが楽しい。一か所著者の写真が出てくるが、恰好が見事にタイでうまく仕事する日本女性である(現地の人が好意的に受け入れられるだろうとすっと思える)。

  • 書店で見かけて一目惚れ。即購入してその日のうちに読了しました。

    とにかく地獄寺の写真に圧倒されっぱなし。クオリティが高い。この本に載っている写真を見るだけでもお腹いっぱいになりそうですが、多分実物見たらもっと圧倒されるんでしょうね。

    しっかしこの風情、どっか見覚えがあるぞ。
    はて、どこで見た風情かなぁ……何か似てるのが日本にあるなぁ……と色々思いめぐらしていましたら、思い出しました。
    そうだ! 秘宝館だ!
    露骨な性描写といい、カラフルでキッチュな作りといい、有象無象が同じ空間に同居するカオスっぷりといい、沢山の種類の奇妙な像を見て回らされる感じといい、場の雰囲気のいかがわしさといい、「ここから先は特別お金取るからね」的ゾーニングがされてたりもする感じといい、かつて日本に点在した秘宝館そっくりではないですか。あとは観光バス走らすだけですぜ兄貴。

    ともかくも、タイに行くことあったら必ず行ってみたいと思いました。地獄寺の紹介、あるいは地獄ツーリズム本としては、とてもいい本だと思います。行き方や行く時の注意なんかも教えてくれているあたりとても親切。

    ただ、研究としてはもっと深く掘り下げられそうなところは沢山あるかな。例えば、
    ・男と女で描かれ方がどのように違うのか? その違いはどこから来るのか?
    ・それぞれの色使いに意味があるのか?
    ・地獄寺の実際の教育効果はどれくらいあるのか?
    ・タイの人々はどういう時に地獄巡りをするのか?
    ・タイの人々は地獄寺についてどう思っているのか?
    ・なぜ地獄寺は田舎に多いのか?
    ・地獄寺を作るにあたって実際にどれだけコストがかかっているのか?
    ・地獄を作る「職人」は一体どのようなライフスタイルなのか?
    ・地獄寺のデザインはどのように決められるのか?
    ・どのような作業を経てそれぞれの像が作られるのか?
    ……などなど、いくらでも思い浮かびました。で、どれもものすごく気になって仕方ないのですが、こういうことを多分未だ誰も調べてない(かもしくは研究書はあるが未邦訳な)んでしょうね。

    にしても、タイの仏教も面白いですねぇ。
    地獄の描写にしても、源信僧都の『往生要集』と共通するところもあり、タイ独自の妖怪じみたキャラもあり。日本の地獄絵図との比較や、恐山との比較なんかもやってみると面白いかもしれません。
    何より、タイ独自の仏教の発展と社会秩序、道徳観の形成に地獄が深く関わっているように私には思えました。単なる美術としてでなく、政治・経済的イデオロギー装置だったり、観光装置だったり……とにかく切り口もそれこそ沢山考えられますよね。
    今後の研究に期待です。

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著者プロフィール

1993年、東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科で美術史学を専攻、タイ仏教美術の地獄表現を研究テーマとする。2016年、修士課程修了。現在、同研究科博士後期課程在籍。タイの地獄寺を珍スポットという観点からだけではなく、様々な社会的要因が複合して生まれたひとつの「現象」として、また地獄表現の系譜で看過することができないものとして捉え、フィールドワークをもとに研究を進めている。

「2018年 『タイの地獄寺』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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