樺太(サハリン)が宝の島と呼ばれていたころ -海を渡った出稼ぎ日本人 (SQ選書08)

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  • 社会評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784784515448

作品紹介・あらすじ

現在のロシアによって開発が進められているサハリンは、かつて日露戦争後、北緯50度以南が日本の領土「樺太」になった。「宝の島」とも「夢の島」とも呼ばれ、日本の財閥系企業が中心になって開発をすすめた樺太。北海道や東北の貧農や失業者が仕事を求めるなか、漁業や林業への出稼ぎが最も多かった。また、日韓併合以後に強制連行された朝鮮人も多く樺太に渡ったが、大半は炭鉱で働かされた。しかし、そうした人びとについての資料や記録は現在ほとんど残されていない。海を渡り極寒の地で生きた出稼ぎ日本人18人への聞き書きを通じ、近代日本の民衆史を掘り起こす。

感想・レビュー・書評

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  • かつて樺太にはアイヌの人々が住んでいて、松前藩の陣屋もあったりと昔から日本人には馴染み深い島だったが、1905年日露戦争終了後のポーツマス条約以来、太平洋戦争終了の1945年までの40年のあいだ正式に日本の領土となった。

    当時の樺太の産業と言えば、林業や漁業そして炭鉱業などで、本土から実に多くの労働者が出稼ぎに渡り、終戦時の人口は45万人だったらしい。冬の寒さは北海道でも大変なのに、更に北に位置する樺太では相当な苦労があった事だろう。本書では大正から終戦頃まで、実際に樺太で住んでいた18名から聞き取りを行っている。

    林業や漁業の仕事内容や職場環境について、日本人と一緒に多くの朝鮮人が働いていた事、給料や食生活そして住宅事情について、終戦直前に攻め込んできたソ連軍の事、本土への引き上げの様子など、当時の島の様子を知る大変貴重な資料である。

    また本書には登場しないが、終戦の混乱で犠牲になった朝鮮人や、戦時中に外国人と結婚したばかりに、帰国を認められなかった日本人女性も多くいたらしい。資源が豊富な宝の島であったと同時に、悲しい過去があった事も決して忘れてはいけないと思う。

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