量子論の基礎: その本質のやさしい理解のために (新物理学ライブラリ 別巻2)
- サイエンス社 (2004年4月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784781910628
作品紹介・あらすじ
本書は、量子論の基礎と本質をきちんと、しかし易しく解説した新しい量子論の教科書。通常の量子論の入門書とは全く逆に、普遍的で一般的な基本原理から始めて、それを具体化し、個々のケースへの応用例に向かうという、いわば川上から川下へ向かう方向で解説していく。これにより、一般の量子論の中で自分が今どこを学んでいるかを常に把握しながら学べるし、先に進むたびに知識を修正する必要もなくなる。そして、易しく丁寧に解説をしたので、このような川上から始める書き方をしたにもかかわらず、全くの初心者や、高校で物理をやらなかった学生でも読める教科書になっている。
感想・レビュー・書評
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この分野の入門書によくある、量子力学の歴史的背景、つまり(例えば、Planckの量子仮説が唱えられるもとになった黒体放射の問題などの)古典論の行き詰まりについては書かれておらず、まず理論の枠組みとして幾つかの公理を認めてしまい、そこから出発する書き方。量子論に至るまでの科学者たちの奮闘も読んでいて確かに面白いのだが、本書のようなスタイルの本もあって良いと思う。何より要らぬ混乱をしなくて済み、本質的な部分が見通しよく理解できる。また、どうせ大学の講義では歴史から話し出すのだから、参考書として本書を読めばバランスが取れるという考え方もあると思う。
扱っている内容としては、ベルの不等式に一章を割いているのが特徴的だろうか。一方で、他の入門書ではよく理論の応用として解説されている水素原子の電子状態に関する記述は無し。随所に練習問題が配置されており、巻末の解答も結構詳しい。値段が2000円ぐらいと理学書にしてはお手頃価格でこの内容は素晴らしいと思う。
何度か言及されている、本書の続編「量子論の発展」(仮題)は一体いつ出版されるのだろうか…
序章
1 古典物理学の破綻
2 基本的枠組み
3 閉じた有限自由度系の純粋状態の量子論
4 有限自由度系の正準量子化
5 1次元空間を運動する粒子の量子論
6 時間発展について
7 場の量子化—場の量子論入門
8 ベルの不等式
9 基本変数による記述のまとめ
付録A 複素数と複素ベクトル空間
付録B 行列
付録C 問題解答詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ざっと読んだだけだが、量子論の、ヒルベルト空間的な公理からの説明は数学出身の私的にはわかりやすかったが、純粋状態・混合状態といった物理的な内容が難しかった。再読します。
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物理系の学科であれば必ず学ぶ量子論は、自然界のあらゆるスケールの法則を支配します。主に目で見ることのできないミクロな世界の記述に用いられる量子論ですが、ブラックホールや宇宙の創成にも関わる理論でもあり、様々な物理現象との関係が明らかになっています。
一方、量子論は他の物理の分野に比べて、直感的な理解が難しい分野とも言えます。授業や標準的な入門書では、十分な説明がないまま計算から始まる場合が多く、物理的意味が見えにくいため、苦悩する方も多いと思います。
本書は量子論の基本的なルール(公理)から始まるユニークなテキストです。具体的な物理現象への応用についての記載は少なく、書名通り基礎の解説が続きます。量子論を用いた物理現象の解析について学ぶ際は、他の標準的なテキストを開くことになります。量子論の勉強を始めたけれど、計算ばかりで何をやっているのかわからないと感じた方が手に取ると、理論の骨格がはっきりと見えてくるはずです。数学書のような雰囲気を持っているため、好き嫌いはあると思いますが、量子論の深い理解を目指すのであれば本書の助けは必要です。最初の一冊としてではなく、授業や他の本である程量子論を学んでから、本書に目を通すことをおすすめします。
若林智章(新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻)
https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=2001863731 -
東大で全学部の1、2年生を対象として行われる選択講義で教科書として使われている本です。
記述は一般の書籍通りシュレディンガー表現に主として片寄っている感はありますが、量子力学における基本的な考え方や記法(ブラケットなど)を一通り概観することができ、量子力学を学ぶにあたって手に取る一冊目の本として適しています。
量子力学の概念をかみくだいて理解したいような場合には適した内容ですが、問題を解くことに目的をおく場合にはこの本だけでは不十分で、より実践的な本と併用する必要があるというのが感想です。 -
はじめに古典論との違いを明確に書かれている。古典論と量子論の違いにもやもやを感じている方にお勧めしたい。
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多くの入門書にある歴史順に進めるものとは異なり,いくつかの公理から始めるタイプの教科書。入門レベルでは厳しいが,一通り量子力学の計算をしたのであれば,本書が量子力学の体系を整理してくれると思う。
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タイトル通り量子論の基礎的な部分を一から説明することで、本によって説明が違っていたり歴史的な導入によって論理がわかりにくい場合がある量子力学が見通しよく勉強できるようになる本。量子力学の前提知識がなくても大丈夫ですが、線形代数への慣れはある程度必要かもしれません。また、例として主にスピンが使われているため、具体的なイメージを持って勉強していくことが難しいかもしれません。
http://ngskshsh.hatenablog.com/entry/2018/06/23/030426 -
1785円購入2011-06-28
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請求記号 421.3/Sh 49
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公理論的な書き方が新鮮。まさに基礎論だ。最終章のベルの不等式、局所実在論が私に取っては新しい学びだった。今の量子論の限界も記されていて、学者の良心を感じる。度々本文で言及される続編の、『量子論の発展』の出版を切に望む。