1984年の歌謡曲 (イースト新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781650807

作品紹介・あらすじ

「田舎」と「ヤンキー」を仮想敵にした"シティ・ポップ"-バブル経済前夜、1984年は日本の歌謡曲においても大きな転回点だった。70年代から始まった「歌謡曲とニューミュージックの対立」は、「歌謡曲とニューミュージックの融合」に置き換えられた。同時に、「シティ・ポップ」=「東京人による、東京を舞台とした、東京人のための音楽」が誕生。それは都会的で、大人っぽく、カラカラに乾いたキャッチコピー的歌詞と、複雑なアレンジとコードを駆使した音楽であり、逆に言えば、「田舎」と「ヤンキー」を仮想敵とした音楽でもあった。1984年、それは日本の大衆音楽が最も洗練されていた時代-。

感想・レビュー・書評

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  • BS12の「カセットテープ・ミュージック」で、スージー鈴木氏の音楽評論を面白いと思い、活字でも味わってみたく購入。本書を選んだのは、「1984年の歌謡曲」が私にとっても特別な位置付けだからだ。
    当時私は小学6年生、音楽を聴くことの楽しさに目覚めた頃。ザ・ベストテンやザ・トップテンに夢中になり、「明星」付録の「young song」を隅から隅まで読み、ラジオもよく聴いた。当時の推しは中森明菜だが、82年組のアイドルは勿論のこと、いいなと思う曲はジャンル問わずとことん聴いた。とにかく、流行に対し貪欲だったあの頃が懐かしい。
    歌謡曲とニューミュージックが融合し、シティ・ポップが誕生した1984年。大きな転換点となったこの年、たくさんの名曲が生まれたのも頷ける。スージー氏が取り上げたヒット曲は殆ど脳内で再生できるほど聴き込んだ曲ばかりだ。
    「ワインレッドの心」、「そして僕は途方に暮れる」、「北ウイング」、「前略、道の上より」etc.時代を彩る懐かしい曲の数々!そして、ヒットの理由を的確に分析するスージー氏の洞察力にも唸らされる。
    ここ数年自分の中で80'sリバイバルで、青春の思い出の曲をダウンロードしまくっているが、解説と共に聴き直すことで、新たな発見が沢山ある。とりあえず、チェッカーズと安全地帯を聴き直したいなと思っているところだ。80年代…なかなかに奥が深い!知れば知るほど新鮮!本書は歌謡曲の魅力を再認識するための、最高のテキストだ。

  • 筒美京平追悼→近藤真彦→ 売野雅勇ときて、1980年代の歌謡曲をきちんと論じた本はないのだろうかと思い、こちらを手にとってみました。
    
    1984年発売の48曲を分析、そこから見えてくる歌謡曲の転換点を論じる。
    
    この年の売り上げ1位はわらべの『もしも明日が…。』「これほどのヒット曲でありながら、今となっては、ヒットの理由にこれほど説明を要する曲も珍しい」。
    
    安全地帯『ワインレッドの心』、大沢誉志幸『そして僕は途方に暮れる』、薬師丸ひろ子『Woman 〝Wの悲劇〟より』に見る「歌謡曲とニューミュージックの融合」。
    
    『Rock’n Rouge』、『時間の国のアリス』、『ピンクのモーツァルト』、『ハートのイアリング』と失速しはじめた松田聖子から、『北ウイング』、『サザン・ウインド』、『十戒』、『飾りじゃないのよ涙は』と躍進する中森明菜へとゆるやかなバトンタッチ。
    
    その間隙をぬってサブカル的位置を確立していく小泉今日子。
    
    チェッカーズの登場。
    
    「東京人による、東京を舞台とした、東京人のための音楽」=「シティ・ポップ」の誕生。
    
    書かれていることは概ね同感で、わかりやすくよくまとめられているなあと思います。同じことを何度も言っているのがややうるさいのと、『ハートのイアリング』、『十戒』、岡田有希子『ファースト・デイト』の評価が低いのは個人的に納得がいかない。
    (『ハートのイアリング』の作曲が佐野元春だったのは初めて知りました。そう思って聞いてみると『SOMEDAY』だね〜)
    
    チェッカーズ登場の年なので売野雅勇の活躍がすごい。本書では「コピーライター的言語感覚」とされていますが、『ブルージーンズメモリー』では「俺」「お前」だった人称が、『ケジメなさい』では「ぼく」「あなた」になっているあたり、言葉の選び方が本当にうまい。
    1985年の曲ですが『夢絆』がいま聞くと名曲!「涙で割ったバーボン苦いね」「届かないのは心と同じさ」、「せめてものはなむけさ」売野さんの詞がほんとオシャレ。
    
    「ポスト松本隆」、売野雅勇、康珍化、森雪之丞、三浦徳子が切磋琢磨する1984年(そして1985年におニャン子が登場、秋元康によるアイドルのパロディ化が進んでいく)。
    
    それから編曲家大村雅朗のすごさ。『そして僕は途方に暮れる』、『My Revolution』が同じ人によるものだったとは(『JINGI・愛してもらいます』の間奏がめっちゃ好きなんですけど、これも小室というより大村雅朗の仕事なのか)。
    
    『そして僕は途方に暮れる』作詞・銀色夏生、作曲・大沢誉志幸、編曲・大村雅朗という奇跡。カップヌードルのCM曲でしたが、校内放送で流れたとき、あのイントロとサビに衝撃を受けて、(そういうことに詳しそうな)クラスで一番かわいい女の子に「これなんていう曲?」と聞いたのを覚えています。
    
    歌謡曲は時代を映すものなので、どうしてもそこにノスタルジーが混じってしまうのですが、80年代の職人たちの仕事はもっと評価されていいと思います。
    

  • <blockquote>日本の音楽シーンを「ヤンキー」概念から開放したこと
    それが、YMOの最大の功績である</blockquote>
    <blockquote>
    「知的なことはカッコいい」という機運を、80年代前半からの日本のカルチャーシーンに植え付けたことである。(P.192)</blockquote>
    <blockquote>
    よくありがちな音楽本のように、音楽家にインタビューを実施し、そこで音楽家が陶然と語ることを書き起こして終わりではなく、あくまで聞き手として、音そのものと徹底的に対峙し、「その音楽家について、他の誰もない私自身が語りたいことを語る」というアプローチ(p.274)</blockquote>

  • 「そして僕は途方に暮れる」と「Woman」が名曲だというのは異論はない。チェッカーズはベタなバラード「星屑のステージ」が好きだった。

  • 私は1984年のときは高1でした。なぜ覚えているかというと、坊主頭強制の中学校を卒業し、髪を伸ばし始めたころ、流行っていたヘアスタイルがチェッカーズだったからです。目次で当時を彩った歌手がたくさん出てきますが、チェッカーズのほかにも、安全地帯・一世風靡セピア・大沢誉志幸・吉川晃司・キョンキョンと、この年に急成長した歌手がたくさんとりあげられています。まだまだザベストテンは高視聴率でした。【歌謡曲とニューミュージックの融合。シティポップの誕生】という分析や、コピーライターのような時代を彩る作詞家陣(売野雅勇・唐珍化・銀色夏生)というのも納得できます。このとき、秋元康はまだ新人です。この後におニャン子ブームととんねるずで時代を席巻します。アラフィフの歌謡曲好きは非常に楽しめる本です。

  • 結論から言うとチェッカーズすげ〜!ってなる。ソフト市場の底でニューミュージックからJ-POP、また都市と地方の結節点となる理にかなう年代設定だった。

  • 圧巻。分析を読みながらYouTubeで確認していったのですが、この作業が最高に楽しかった。はっぴいえんど中心史観とかね、もっと言っちゃって下さいよ笑 1989も待ってます。20170226

  • 独断と偏見に満ちた歌謡曲全般レビュー。
    1984年と言えば私が独身最後の年であり歌謡曲と洋楽を聴きまくっていた年だ。
    リアルタイムを共有した一個人として此の本に物申す。薬師丸ひろ子が流行っていた印象は全くない。確かにザ・ベストテンには出ていたと思うが高音ばかり強調される変な楽曲ばかり歌っていた、と言う印象だ。チェッカーズが世の中を席巻していたのは同感だ。とんねるずの学園コントが懐かしい。大澤誉志幸聴いてました。LP持ってました。「そして僕は途方にくれる」は名曲なんでしょうね。著者が選ぶ1984年のベストテンを見ても全然ピンと来ない。どの楽曲が優れているか、なんて音楽を専門で勉強している人でないと判らない。サザンオールスターズ読本が面白かったから続けて此の著者の本を読んでみたのけど、ちょっと「教えてあげます」的な態度が鼻につく。純粋にオリコンチャートを呈示するだけでも良かったんじゃないかな?
    個人の音楽的嗜好なんて千差万別、十人十色、なんだから。

  • 非常に刺激的で面白い本でした。
    一気に読み終えてしまいました。
    特に音楽的な素養がない私にも面白く読めました。

    1984年は私は小6で、ベストテンなどの歌番組を通じて歌謡曲に本格的に取り込まれ始めた頃でした。
    チェッカーズは確かに衝撃的でしたし、筆者の言うとおり、先にも後にも近しいバンドがない、という意味でも独特な存在でしたね。
    明菜と聖子の争いも激しい時代でした。

    筆者は、1984年のベストワンに薬師丸ひろ子のWomanを挙げてるのですが、私は角川映画を全くみず、薬師丸ひろ子や原田知世にも興味がなかったんですよね..。
    筆者のWomanへの熱い思い入れを全く理解できず(私がこの曲をきちんと聴いたことがないので)、その点が残念でした。

    音楽的な解説も豊富ですので、好きな方はさらに楽しめるのではないかと。

  • 歌を媒介にミクロとマクロの視点からみる昭和史。自分が子供の頃の世界を大人の目線で振り返り過去を紐解く面白さ。

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著者プロフィール

SUZIE SUZUKI
スージースズキ
1966年、大阪府生まれ。音楽評論家。
著書
『恋するラジオ』(ブックマン社、2020年)、『ザ・カセットテープ・ミュージックの本 〜つい誰かにしゃべりたくなる80年代名曲のコードとかメロディの話〜』(マキタスポーツとの共著、リットーミュージック、2020年)『チェッカーズの音楽とその時代』(ブックマン社、2019年)、『80年代音楽解体新書』(彩流社、2019年)、『いとしのベースボール・ミュージック  野球×音楽の素晴らしき世界』(リットーミュージック、2019年)、『イントロの法則 80's 沢田研二から大滝詠一まで』(文藝春秋、2018年)、『カセットテープ少年時代 80年代歌謡曲解放区』(マキタスポーツ×スージー鈴木、KADOKAWA 、2018年)、『サザンオールスターズ 1978-1985 新潮新書』(新潮社、2017年)、『1984年の歌謡曲  イースト新書』(イースト・プレス、2017年)、『1979年の歌謡曲 フィギュール彩』(彩流社、2015年)、『【F】を3本の弦で弾く ギター超カンタン奏法 シンプルなコードフォームから始めるスージーメソッド』(彩流社、2014年)。
ウェブ連載
「水道橋博士のメルマ旬報――1984年の歌謡曲」「東洋経済オンライン『月間エンタメ大賞』」「80年代音楽サイト『Re:minder』」など。

「2021年 『平成Jポップと令和歌謡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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