韓国文学の中心にあるもの

著者 :
  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781620930

感想・レビュー・書評

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  • 「82年生まれ、キム・ジヨン」から遡って、セウォル号、IMF危機、光州事件、都市開発、朝鮮戦争、植民地支配が終わるまで。そこに生きた人々を描く文学作品の読書案内。


    わかりやすく丁寧な初心者向けでもあるが、相当に重厚な一冊だった。
    読んだことがある本についても、ほんのわずかだが、理解が深まった。特にハン・ガンの「少年が来る」は、ずっしりと重く、感想を書けていなかった。わたしにはとても言語化できなかったから、斎藤真理子さんの言葉に救われるおもい。

    韓国について無知なのはもちろん、日本についてもそうだと痛切した。まえがきの「一つ大それた希望を言うなら、韓国文学を一つの有用な視点として、自分の生きている世界を俯瞰し、社会や歴史について考える助けにしてもらえたらありがたい。」という言葉を受け止めて、これから考えていきたい。

    紹介されているたくさんの本の中から特に気になっているもの
    「外は夏」キム・エラン
    「ショウコの微笑」チェ・ウニョン
    「年年歳歳」ファン・ジョンウン
    「鯨」チョン・ミョングァン
     鄭芝溶、呉圭原の詩集も読んでみたい。
    読み終えたら、また本書にもどってきて、理解を深めたい。

  • #49 「韓国文学の翻訳者、斎藤真理子さんとのお話。」前編 | ホントのコイズミさん | SPOTIFY オリジナル
    https://hontonokoizumisan.303books.jp/ep/49

    韓国文学・K-文学特集「韓国文学の流行&クオン『新しい韓国の文学』のブックデザインをひもとく|韓国文学の流行&ブックデザイン|アート&カルチャーと遊ぶ・暮らすをデザインする|デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-(2019.12.25)
    https://www.mdn.co.jp/art-culture/k_book/601

    書籍詳細 - 韓国文学の中心にあるもの|イースト・プレス
    https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781620930

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      今週の本棚:『韓国文学の中心にあるもの』=斎藤真理子・著 | 毎日新聞(有料記事)
      https://mainichi.jp/articl...
      今週の本棚:『韓国文学の中心にあるもの』=斎藤真理子・著 | 毎日新聞(有料記事)
      https://mainichi.jp/articles/20221001/ddm/015/070/011000c
      2022/10/02
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「なぜこんなにも面白く、パワフルで魅力的なのか」韓国文学翻訳家・斎藤真理子がひも解く、物語の裏側にある韓国の姿|Pen Online
      htt...
      「なぜこんなにも面白く、パワフルで魅力的なのか」韓国文学翻訳家・斎藤真理子がひも解く、物語の裏側にある韓国の姿|Pen Online
      https://www.pen-online.jp/article/012345.html
      2023/01/07
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【アジア本NOW】『韓国文学の中心にあるもの』 - NNA ASIA・アジア・社会
      https://www.nna.jp/news/2484...
      【アジア本NOW】『韓国文学の中心にあるもの』 - NNA ASIA・アジア・社会
      https://www.nna.jp/news/2484247
      2023/02/23
  • まず声を大にして言いたい事は、タイトルと装丁はシンプルだけど中身は濃厚てんこ盛り!時系列を遡るかたちなのもわかりやすいし情報量が凄い。これまで漠然と聞き流していたニュースや両親から聞いていた時代のことが次々に繋がり出す感覚に圧倒され、基本的に本は図書館で借りる派だけど読了後即、発注しました。巻末の年表はこれから資料としても何度も見直すと思う。
    ポリタス 石井千湖さん推薦本

  • 昨年読んだ『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』は主に日韓関係の歴史を大学生といっしょにわかりやすく学ぶ内容で、あれはあれで歴史の苦手な私にはすごく勉強になったけど、本書は斎藤真理子さんの韓国および韓国文学にまつわる豊かな知識を系統だてて惜しみなくキレッキレの文章で分け与えてもらえる本で、なんというか打ち震え、打ちのめされた…。私が韓国文学に初めて触れたのは10年くらい前、キム・ヨンス『世界の果て、彼女』で、以来小説としての面白さだけを傲慢に求めて、たまに手に取り、ああでもないこうでもないと勝手な感想を抱いてきたけれど、歴史を学ぼうと言う真摯な姿勢とそこから得られたはずの知識が絶対的に欠けていた。というか、これって、韓国文学に限らず、世界中の文化全般の受容について、自分の姿勢が問い直されるぐらいのダメダメ感だよ。だけど、不思議と不快ではなく、虚心坦懐、ここから始めればいいかなと、うっすら清々しくもあり。それは、斎藤さんがあとがきで「恥があるということは恥ずべきではありません。」と書いてくれたからなのかも。

    本書で紹介されて、読んでみたいと思った作品
    (☆は特に優先順位高め):
    ☆キム・エラン『外は夏』
    ☆チョン・セラン『フィフティ・ピープル』
    ハン・ガン『少年が来る』
    チョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』
    ☆崔 仁勲『広場』
    堀田善衛『広場の孤独』
    ファン・ジョンウン『ディディの傘』
    ☆ファン・ジョンウン『年年歳歳』
    ハン・ガン『回復する人間』

    ちなみに朝鮮戦争に対する日本人の意識が描かれたレアな例として挙げられた柴田翔『されどわれらが日々』は、高校生の時「おさえておくべき名作」なのかなと思って読んだものの、女子学生の描かれ方にモヤモヤした記憶しかなくて、何十年かぶりに意外な再会を果たした感じでそこも興味深かった。

  • 私だけかどうかわからないが、いやー、相当にヘヴィだった。

    斎藤真理子が出てくるまで韓国の文学は金芝河くらいしか知らなかった。それが『カステラ』以降、なんでこんなに面白いの、力があるの、とぐいぐい読まされてきたが、いかに表面的だったことか。セウォル号事件や光州事件、そして朝鮮戦争などを今に至るまで背負い続けその影響下にあるからこそ(若い世代の作家まで含めて)の、力だったんだな、と思い至る。その重さ。読み終えて、ぐったりくたびれてしまった。面白いけど、重い本だと思います。そして確認したい本、読みたい本が増える。

  • 『82年生まれキム・ジヨン』から韓国の小説に興味を持ち始めた初心者だが、この本を読んで、いかに自分がお隣りの半島の近現代史について無知無関心だったかを痛感した。例えば、戦後日本の敗戦と帝国解体により(それまで強制的に押しつけられていた)日本国籍を突然失った朝鮮出身者が、朝鮮戦争勃発によって帰国断念を余儀なくされたことは知っていた。しかし、そこで自分がイメージしていた彼の地での「戦争」の姿は、まさに日本における第二次世界大戦の様相で(基本、敵の姿が見えない空襲など)、沖縄戦のような敵味方が入り乱れる地上戦であったという基礎的認識が欠けていた。さらにイデオロギー対立を軸として疑心暗鬼をかきたてられた戦争であったということも。帰れなかったのももっともだと目が開かれた思いがした。さらに済州島から逃れてきた人々が在日コリアンの源流の一部、という事実も覚えておきたい。今日ならば難民条約に該当する難民として保護されるべき人々であったのだから。

  • 本書で紹介されているパク・ミンギュ「膝」を、以前読んだことがある。
    よく分からないと感じて終わってしまっていたのだけど、それは自分の知識不足、歴史認識不足のせいだった。
    今までいかに韓国文学のパワーや面白さだけをぬくぬくと享受してきのたか思い知らされ、恐ろしい気持ちに。
    遅いけど遅すぎることはないと信じて、今からでも歴史を学んでいきたいと思う。

  • 韓国社会が経験する苦難に作家はどう向き合い、そうして生まれる作品を読者はどう受容してきたか、の一端が見えてくる。

    また、1960年は日本と韓国にとって分水嶺だったんだな、と。市民運動の成功体験と失敗体験は、その後の両社会における主権者意識にも根深い影響を与えたことが、比較によって鮮やかにわかる。

    そして、知れば知るほど日本について、自分について考えることを余儀なくされる。韓国社会の痛みや苦しみを「よその国」の出来事とするには、日本の関わりはあまりに深い。
    個人的に物心ついたとき既に日本は経済大国だったし、それを享受してきた自覚もあるが、その発展の礎には隣国の悲惨な戦争が含まれ、その戦争が今も終わっていないということ、しかも日本においてそのことはほとんど意識されないということ。意識せずにいられる状況の中で、価値観や歴史認識が形成されているということ。そういったことと否応なく向き合うことになる本だ。

  • もっと韓国の文学作品に触れてみたくなった。胸が苦しくなる部分も多いけど、この本を読んでから韓国文学に触れたり再読すると、より深みある読書になると思う。

  • 韓国文学の読み解き本というか、書評というのか、濃厚すぎて打ちのめされた。重く、苦しく、ぐったりするが、読者として受け止めなければという気持ちになる。それは作家や著者が過酷な歴史や社会に真摯に向き合い、読者の知性や感受性を信じていることが伝わるから。そして読後に何らかの痕跡を心に残すことで、読者の断罪行為や傍観者になることを許さないのだ。

    本書の読後は韓国文化の解像度が高くなることは間違いなく、日本にいるエンタメ消費者としての態度を顧みさせられる。日本が戦後復興やら経済成長やらバブルやらで、いかにも自力で豊かになったという顔をしながら、隣国がどれほど過酷な状況だったか。

    日本の作家とは比べ物にならない程のリスクを背負って書き上げられた数々の作品や、社会的な痛みを安易に扱うことなく、苦悩を満身創痍ですくい上げる作家の姿勢は、既存の文学に物足りなさを感じていた人たちにとって「私が読みたい物語はこれでした!」と思わずにはいられない文学であり、私もその一人として何度も救われたし打ちのめされたし、これからも求めて止まないだろう。

    数ヶ月前に読み終わっていたが、あまりに圧倒されて感想が書けず。最近本書で取り上げられていた『こびとが打ち上げた小さなボール』を読み衝撃を受けたので、改めて本書を再読。
    そして斉藤真理子さん、こんな素晴らしい本を出してくれて感謝。また、各媒体で書かれている文章の感性が好きなので、エッセイやトーク本の出版を希望。(個人的に大好きだったロシア語通訳者で作家の故米原万里さんみたいに本を出して欲しい)

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著者プロフィール

斎藤 真理子(さいとう・まりこ):翻訳家。『カステラ』(パク・ミンギュ著、ヒョン・ジェフンとの共訳 クレイン)で第一回日本翻訳大賞受賞。著者に『韓国文学の中心にあるもの』(イースト・プレス)、訳書に『サハマンション』他多数。

「2023年 『82年生まれ、キム・ジヨン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斎藤真理子の作品

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