- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784780305685
作品紹介・あらすじ
幼い時に父を亡くした私の夢は「家族をつくって平凡に暮らすこと」。だが、不妊治療、流産を乗り越え、ようやく授かった娘は広汎性発達障害だった。娘が幸せになる手がかりを探して療育に奔走するも、わが子と心が通いあわないことに悩む。さらに将来を悲観し、気づけばうつ状態に。チャット、浮気、宗教…現実逃避を重ねるなか、夫に突きつけられた離婚届。娘と離れ、徐々に現実から目をそらし逃げていたことに気づくのだが…「親は子どもの幸せを諦めてはいけない」娘の障害受容ができず、一時は死をも考えるほど、どん底に落ちた著者の絶望と再生の物語。
感想・レビュー・書評
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私の周りにも発達障害の子を持つ人が何人かいるし、自分自身ももしかしたらその傾向があるかも、とふだんから思っているので、本屋でふと見つけた本書を衝動買いした。
なにより帯にある「わが子が可愛くないお母さんのために」という言葉が突き刺さってきたせいでもある。
私の子どもは発達障害ではなかったが、最初の子は「可愛い」と思えなくて長い間苦しんだ。それは子どものせいではなく、もっぱら私の方に原因があったからなのだが、本書を読み進めていく中で、作者の山口さんがたからちゃんを可愛いと思えなかった原因のひとつに、彼女自身の「普通」に対する過大な期待があるのではないかと思ったのだ。
「普通」という、この実体の無い幻想に、どれだけの人が囚われてしまっているだろう。でもたいていは気づかないでいられる。自分自身も特に問題なく育ち、生んだ子どもにも突出した問題がなく過ごせた場合には、「普通であること」そのものが当たり前すぎてわからなくなってしまうのだ。
そこへ、「発達障害」という突出したものが出てくると、そのあまりの異質さに激しい拒否反応を起こしてしまう。
1~2歳ごろの、「目が合うとにっこり笑う」などの反応は、無条件に人に喜びをもたらす。その小さな体から発する愛らしさが、「愛しい」という感情を引き起こすからだ。
しかし、発達障害があると、まずここで躓いてしまう。反応が返ってこないことで、その子には「人間らしい感情がないのではないか」と思ってしまうのだ。
私は、山口さんは決して身勝手な母親だとは思わない。そりゃ、逃げずに明るく立ち向かうことができたらそれに越したことはないだろうが、誰もが超人的な態度をとれるわけじゃない。
自分自身が母親に相談するという思考回路を持たずに成長したからには、疑問点を他人に直接聞くよりもネットで検索しようと思うのも無理はないし、どれだけ尽くしても何も返ってこない、何も理解できない子どもに疲れ果てて、逃避したくなるのも当然だと思う。彼女が「死(心中)」にとりつかれた場面は、気持ちがわかりすぎて苦しくなってしまった。どうしたってそうとしか考えられなくなるよねえ、と、まるで自分の日記を読み返しているかのような錯覚に陥ってしまった。
そして、つかの間の恋(幻想)にすがってしまった気持ちもわかりすぎて笑ってしまうくらいだった。
それでも、やはり第三者から見ると、「その苦しみは自分の中にある普通幻想から生まれてきたんじゃないの?」と言いたくなるのだ。
彼女もやがてそれに気づく。
第12章で、成長した娘さんと会うエピソードで、娘さんがぽつりと心情を漏らすのだが、私はここから先が涙なしでは読めなかった。
発達障害の人には感情がないわけじゃない。飲み込みがちょっとゆっくりだったり、理解の仕方が独特だったり、自分の気持ちを瞬時に的確に表現するのがヘタだったりするだけなのだ。
「普通」にとらわれていると、一般的な基準でそれができないことが許せなくなってしまう(何歳で何ができるようになる、とかそういうこと)
いちばんつらいのは、「母親なら何があっても絶対に離れたくないと思うもの」という決め付けや、「別れた子を思い自分を責めながら泣き暮らす母親」を求める世間の思い込みだ。
親子は絶対一緒にいなくてはならない、という決め付けもまた、時には不幸の温床になる。
子どもを生んだからといって、その瞬間にスーパーマザーに変身するわけではないのに、なぜか人はそれを期待する。期待に応えられない母親は「失格」の烙印を押して責めさいなむのだ。
人は、他人のことはすぐに「身勝手だ」と非難するけれども、誰だってみんなそれなりに身勝手なのが人間だと思う。身勝手だと非難するだけではなにも解決しない。
この先、もっとこういった障害やその周辺の事柄が知られていくといいと思う。いじめなどの問題も、ここから派生していることが多いのだから。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この辛さ、わかる。
家の次男も、たぶんこんな感じだった。でもうちは幸い4人兄弟に恵まれたので、家族中で何とか乗り越えてこれた。いや、二十歳の社会人の今でも本人ともども苦労している。母の私もどれだけ頭を下げたか、どれだけ悔しい思いをしたか数知れず…でも、もういいです。いいのです。子育てなんてそんなもんです。
かこさんのこの告白が、これからのお母さんたちに少しでも力になってあげられるといいな、と思いました。 -
これはすごいよ。すごく響く。
特に中盤以降は半べそで読んだ。
たからちゃん側の気持ちもカコさん側の気持ちもわかる。
同じだよ同じだよ。
わかるわかるわかる。
最後のお母さんからたからちゃんへの手紙。
発達障害を持つすべての人に読んでほしい。
私も、私への手紙だと、メッセージだと思って、またがんばってみようと思います。 -
広汎性発達障害の子を持つ親の気持ちがマンガと文章で赤裸々に書かれている。1組の親子とその周りの人達の奮闘や確執、そして希望が描かれている。
あとがきに賛否両論とあったが、障害を持つ子の親に限らず、この本を必要とする家族は少なくないと思う。
赤裸々な文章は胸を打つ。不安な気持ちで毎日を過ごす誰かの為に、リスクを背負ってつくられた気持ちの入った本だと感じた。必要な人に届くと良いな。 -
きつい、苦しい本でした。でも今までに読んだどの本よりも正直に何を隠すこともなく負の部分を書いていたと思う。
「母親をやめる」ってところは大なり小なり共感出来る部分があるのではないかなと思う反面、そこからの巻き返しはその人それぞれの性格によるところが大きいのだなとも思いました。
辛くて苦しい時、そこからどうするかは結局はその人の性格次第なんじゃないかと・・・。
きっと同じ状況にいてもかこさんのようになる人もいれば、そうはならず明るく幸せな家庭を気づける人もいると思うから、本全体の共感度としては半々くらい。
一番最後で、作者自身が気づけていたことが唯一の救いでした。
あと娘さんの成長ぶりも。
周りで理解しようと思っていても、かこさんのように自分の中でだけで答えや未来を決めつけていたらちょっと何も手助け出来ないかも・・・。
読む側としてはこういう事例もあるんだという、知ることに繋がったので書いてくれてよかったと思います。-
「明るく幸せな家庭を気づける人もいる」
逆に、子どもを窮地に追い込んだ親も、、、家族だけでなく、地域や学校で、体温が伝わるくらいの距離から...「明るく幸せな家庭を気づける人もいる」
逆に、子どもを窮地に追い込んだ親も、、、家族だけでなく、地域や学校で、体温が伝わるくらいの距離から、サポート出来れば良いなぁ、、、2014/04/04
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2018/10/25読了
明るく前向きで頑張るママ
ではなく
挫折してしまった、折れてしまった、「負け」ではないけれど
光と影とでいえば影のルートに進んでしまった、母親の奮闘記。
こういうものこそ読んでみたいと思ったり。ポジティブばかりの「がんばらなくては」に押しつぶされそうな人ほど、求めている「事実」なのだと思う。
本人の生活や戦いだけではなく、ご主人とか、母親とか
あらゆることがきっかけになって、ゆっくりこわれて
壊れてではなく、自分を成立できなくなったのだろうと。
この本を読んでみては思うけれど
果たして、自分が同じ立場になったときに冷静でいられるだろうか。我が子がどんな子であれ、受け入れ、愛してあげられるだろうか
それは、その時になってみないとわからない。
光輝く人ばかりではなく、どんな思いで我が子を手放したのか
そういうエピソードとして読めたのは、作者さんがかなり勇気を出したからだろう。
ある意味、とてもためになる本でした。
ポジティブ以外も認められ、受け入れられてもいいのだ
きっと・・