哲学しててもいいですか?: 文系学部不要論へのささやかな反論
- ナカニシヤ出版 (2017年3月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
- / ISBN・EAN: 9784779511257
感想・レビュー・書評
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大学行政において文系学部、とりわけ文学部の社会的役割に疑問符が付される状況に抗して、哲学という、社会において直接的に役に立つことからもっとも遠いと思われる学問の意義を説いた本です。
同時に、既成の枠組みのなかで安住して、それを越えていくような思考を回避する今の大学生の実態についても触れられているのですが、演習の授業で「この箇所は、難しくてよくわからなかったので、先生に説明してもらおうと思います!」と発言した学生に苦言が呈されていて、おなじようなことをいったことのある身としては弱ってしまいました。
著者の議論はある程度納得ができるものの、それでもかなり守勢に回っているような印象を受けてしまいました。ただ、形而上学や認識論といったもっともコアな分野の研究がどのような社会的役割をもっているのかと問われれば、たしかに答えることが難しいのでしょうが、政治哲学や倫理学、社会哲学やその他の応用哲学の諸分野には、本書で論じられているような「箱の外に出て思考する能力」の重要性はかなりの部分で同意を得られるのではないかと思いますし、それらの基盤となっているコアな哲学の分野にも一定の社会的役割は認められるのではないかという気がします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
サブタイトルの人文学部の在り方についてが中心で、内容的にはメインタイトルではなく「哲学しようぜ」だと思う。
最終的な著者の意見、「外の思考の実践」と「哲学する勇気」は共感します。
ちょっと徒然なるままに書いている感がありますが、まぁ難しい言い回しは少ないのでさらっと読めるかなと。 -
数学が将来何の役に立つのかと同様の議論
論理と第三の視点を持つこと
学部生が読む本かな
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哲学の効果は数値化され得ぬものだが、だからと言って哲学が不要であって良いというわけではない。哲学の存在意義も勿論ある。大学の先生って大変なのですね。
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2017/6/27読了。必携だ。
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箱の外で考える、正に仕事で若い人に言ってきたこととマッチしている。考えるとはどういうことなのか。安直に正解(があるはずと思って)求めるのでない、本当の思考とは哲学すろことだったんですね。
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とても面白いほんである。岩波新書になってもよかったのになぜナカニシヤなのであろうか。
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前半は、大学において最近何かと風当たりの強い人文系学部の厳しい現状をレポートするような内容。後半ではそれを踏まえて、今この現代の大学において哲学をするとはどういうことか、どういう意味を持つのか、そしてそれはこれから社会へ羽ばたこうとする学生にとって価値のあることなのかどうか、それを「真面目に哲学的に」考察している(そして大いに価値があると結論づけている)。前半は「哲学科准教授の嘆き」とでもタイトルをつけられそうな軽いタッチなのだが、後半は紛うことなく哲学書の様相をみせる。博物学関係の本を読んだ時も思ったのだが、学部生よりも大学の予算を決めるお偉方とその上に立つ政治家に読んでもらって是非大いに予算をつけて欲しいと思う。まぁこの本を読んだくらいでは変わりはしないのかも知れないが(悲)。尺度が一つの世界はその物差しが壊れた時にはもろい。