大阪ミナミの子どもたち;歓楽街で暮らす親と子を支える夜間教室の日々

著者 :
  • 彩流社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779126123

作品紹介・あらすじ

西日本最大の歓楽街で
様々な問題を抱える子どもたち・親たちに、
地域に根を下ろし手を差し伸べ
見守り続けたMinamiこども教室の活動の軌跡。

困窮から抜け出せずにいた父子や
公的看護のもとで懸命に生きた子、
海外に送還された唯一の親とSNSで絆を確かめあう子、
義務教育からはじきとばされた子、
迷う親を後押してSOSを発した子…。

子どもをめぐる悲しい事件が跡を絶たない中、
孤独、家族離散、困窮、暴力被害などで
当事者をひとりぼっちにしないために!

感想・レビュー・書評

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  • 「大阪ミナミの子どもたち」書評 福祉行政の弱点 救う視点に力|好書好日
    https://book.asahi.com/article/12882018

    大阪ミナミの子どもたち | 彩流社
    https://www.sairyusha.co.jp/bd/isbn978-4-7791-2612-3.html

    kuma0504さんが、たまどんさんが挙げた本にイイネをしてくださったから、知るコトが出来た。やっぱりブクログは良いなぁ~

  • 大阪に生まれ大阪に住む私にとって、次の一文を読んだとき、こっぱずかしいとも思ったが、やっぱり素直にうれしかった。
    -『子どもたちに大阪の暮らしはどうかと聞いたら、「とても温かい。ここに帰って来られて本当によかった。」と答えた。』

    これを言ったのは、フィリピンにルーツを持つ高1の姉と中学生の妹。
    でも実は大阪でこの一言を言うまでには、母と子とが大阪→北関東のある町→フィリピン→北関東と巡るものの、いよいよ生活費も底をつきかけて追い込まれ、最後の一手として大阪で知り合っていた著者にSOSをスマホで送り…という前段がある。

    でも私は思う-大阪の街って、本当に温かいの?-ある面ではウソだと思っている。
    私の妻が臨月で地下鉄に乗って病院に通うのに私がついて行ったとき、優先座席に先に座っていた人達は妻の姿が見えないふりをして、決して席を譲ろうとはしなかった。それも世間では「大阪のおばちゃん」と言われるような、出産を経験したと思われるような女性が、である。
    大阪の街って、現実は東京や他の都市と差がなく、やっぱり他人から一線を引き、自分のみが満足すればいいという今風の街としか日常では実感できなくなっている。

    と思っていたところに、この本と出会った。
    著者の金光敏さんの名前は知っていた。毎日新聞朝刊の大阪地域面でコラム「共に生きる・トブロサルダ 大阪コリアンの目」が連載され、外国人コミュニティーやマイノリティーなどに関して、当事者の立場に自分をどっぷり浸からせたうえで生じる自分なりの思いを発信していたから。

    それにしても金さんは相変わらず不器用だ。
    不器用というのは言葉どおりの意味ではない。つまり、別にたいしてお金になるのでないし、日本政府から何とか褒章をもらえるのでもないのに、外国ルーツの子どもやその家族から“大阪ニモドッテ仕事シタイ”とか“タスケテ”とか言われればバァーと走るかのように行動し、いろいろ大変な思いをしても、その子どもから「やっぱり大阪は温かい」なんて言われたら、もうしんどかったことなんか吹っ飛んだかのように大喜びしているという意味。

    私はこう思う。大阪の街をいい感じにしてきたのは、金さんのような、自分がお金や名誉を得ることよりも、子どもの笑顔を大切にしてきたような不器用な人が他の都市よりも多くいたためだ。
    だから万博か何か知らないけど、他都市と似たようなイベントを打って、プランナーや映画監督にプロデュースさせるようなやり方って、大阪の良さを最大限に引き出すのには力不足だと思う。へたすりゃ前述の地下鉄車内のような自己満足のみの価値観の支配がもっと進んでしまう。
    本当に大阪にいろんなところから人を呼びたいのであれば、金さんみたいな人や活動を大阪いっぱいに広げる方が面白い結果になるはずだ。

  • 私が育ったミナミの「いま・ここ」ルポ。子どもの困難は親の困難でもあり、親の困難は社会の課題につながっているということがわかります。著者の最近の口癖である「ケースワークとフレームワークの両輪をつくる」の意味も広く伝わってほしいです。

  • これまでに触れた数々のドキュメンタリーや各種媒体の記事から、大阪は様々なケースでの子どもの受け皿が厚く多岐にわたっているイメージがあったものの、その取り組みをじっくり知る機会がなかなかありませんでした。
    Minamiこども教室という一拠点をベースに、外国ルーツの子ども(親子)とどのように関わりフォローしているのか、学校や周囲とどういった方法で連携しているのか、これまでよりは一段深く知ることができました。

  • 大阪樟蔭女子大学図書館OPACへのリンク
    https://library.osaka-shoin.ac.jp/opac/volume/667478

  • 外国籍の母親,多くは母子家庭の子供たちの実情を知ると何か手助けをという気持ちになるのも分かる.夜間教室を開いたり子ども食堂を運営したり,素晴らしい活動だ.最後に日本の外国人の子供への教育の公的な制度にも言及してあり,かなり不利な状況であることも知った.

  • 内容はすごくよかったんだけど、誤字脱字が多かった…

  • 大阪市の歓楽街界隈に暮らす、外国ルーツの子どもたちのための夜間教室を主宰する在日コリアン3世の著者が、教室に通う子どもたち、そしてその親たちのことを綴った本。

    大阪市に在日コリアンが多いことは知っていたが、それ以外の外国籍人口も「政令指定都市のなかでもっとも」多いそうだ。
    いちばん多いのはコリアンだが、次いで中国籍、ベトナム籍、フィリピン籍、ネパール籍の順に多いという。

    「Minamiこども教室」は、学習支援のみにとどまらず、「さまざまな家庭支援のケースワークを積み重ねてきた」という。子どもたちを支援するのみならず、経済的困難などを抱えるその親たちをも支援しているのだ。

    《中には資金援助が必要な事案もあり、そのたびに私たちは葛藤した。家庭を丸々引き受けて援助することにはそもそも無理があるし、そんな能力も持ち合わせていない。ただ、支援を求めてくるケースはどの場合も緊急度が高く、放置するわけにもいかないものばかり。多くのスタッフはその現実のはざまで頭を悩ませていた。》117ページ

    お金うんぬんよりも、赤の他人である親子に親身になって寄り添う著者たちの献身的活動に、頭が下がる。

    各章の〝主人公〟となる親子が、それぞれ強い印象を残す。
    また、全体を通して感じることだが、「Minamiこども教室」周辺の行政や公立校、宗教団体などはみな対応があたたかく、著者たちとの連携・信頼関係がきちんと築かれている印象を受ける。
    他地域ではなかなかこうはいかないのではないか。

    これからの「多文化共生」の、一つのモデルケースを見る思いがする一冊。

  • 「外国人住民が容易に公的支援からこぼれ落ちる構造問題はもはや日本社会の欠陥だと言わざるを得ない」
    この本を読むと支援の受け方を知らないだけで簡単に生活が破綻する事例があることがわかります。
    僕自身やっぱりこういう現実から目を背けないように仕事にもボランティアにも向かわないといけないと改めて思います。

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著者プロフィール

Kim Kwang‐Min.
1971年、大阪市生野区生まれ。
在日コリアン3世。
特定非営利活動法人コリアNGOセンター事務局長。
多文化共生、人権学習の教育コーディネーターを務め、
さまざまな子どもたちを支援するソーシャルワーカー。
NPO事務局長以外に、大学非常勤講師、学校法人理事、
外国人の子どもたちを対象にした
夜間教室「Minamiこども教室」実行委員長、行政委員など。
共著に、
『子ども白書〈2004〉』
(日本子どもを守る会 編、草土文化、2004年)、
『多文化社会を生きる子どもとスクールソーシャルワーク』
(鈴木庸裕、新井英靖、佐々木千里 編著、かもがわ出版、2018年)、
『外国人・民族的マイノリティ人権白書』
(外国人人権法連絡会 編、明石書店、2007年)、
『大阪の貧困 Ⅱ 格闘する現場からの報告』
(反貧困ネットワーク大阪実行委員会 著、耕文社、2011年)他多数。

「2019年 『大阪ミナミの子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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