不安の書 【増補版】

  • 彩流社
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  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779126048

作品紹介・あらすじ

ペソア最大の傑作といわれる『不安の書』の完訳、
装いも新たに、待望の復刻!
旧版の新思索社版より断章を増補。

感想・レビュー・書評

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  • 厭世、夢想、諧謔、静謐といった読後感。その様々なバリーションと組み合わせに心ひかれる。/きっかけはたまたまテレビで観たマドレデウスの「vem」のMV。それでマドレデウスにはまり、ヴィム・ヴェンダース監督の「リスボン物語」(1995)に出演すると知り、観に行ったところ、主人公が夜、ひとりで読んでいた本がフェルナンド・ペソアで、ストーリーにも大きくかかわってくる…というのでフェルナンド・ペソアを手に取ることに。最初は、映画で引用されている箇所を探したのだけど、見つからず、何年も探してたどりついたのが、版の違いか、若干の際はあるけれど、「 日中のとてつもない明るさの中では、音の落着きも黄金のように輝いている。いたるところに柔らかさがある。もしも戦争があるといわれたなら、戦争はないと言うだろう。こんな日には、柔らかさ以外には何もないことを乱すものは何もありえない。」(p330)。そして個人的に折に触れて手に取る作家のひとりに。今回は、断章的でどこからでも読めるのをいいことに読み通すのに8ヶ月半もかかってしまった。以下、目にとまった所。/思うに、人生は、地獄からやってきて乗合馬車がやってくるまで待っていなければならない旅籠屋なのだ。p19/自分の感じることを書くのは、そうすることにより感覚の熱気を冷ますためだ。p22/この世ではわれわれは全員、知らない港から出て知らない港に向う船の上に暮らしている。p42/自分のことを知らないのが、生きることだ。自分のことをろくに知らないのが、考えることだ。p85/もし娯しんだのであれば、わたしたちは失敗した(もしも愛しただけであれば、死んでもよい)、p.168 /眠くなく、そうなる理由もなく、わたしには眠りたいという強い望みがあるp351 /そのまま続けさせたらよい。ドミノが行なわれ、勝負に勝とうが負けようが、牌は倒され、ゲームは終わり、明かりが消される。p392 /あらゆる努力は恥ずべきことだ、あらゆる行為は不活発な夢だからだp422 /夢見る以外になにもしたことがない。わたしの人生の意義はそれ、それだけだった。p430/活発な精神の移動性をそなえたすべての人と同様に、わたしは定着することに本質的、運命的な愛着を感じている。新しい生活と未知の場所をひどく嫌う。p436/人生は無意識に行なわれる実験的な旅だ。p436/弱いので不満を漏らし、芸術家なので不満を音楽的に織り上げ、どうしたら美しくなるかという自分の考えにそっていちばんよいと思われるように夢を整えて娯しむ。p410/「すべてを延期せよ。明日もしなくてすむことは今日けっしてすべきではない。実際、明日でも今日でも何もする必要はまったくないのだ」p551/求めない者だけが幸福だ。なぜなら、探し求めない者だけが見つけられる。p561/夢見たものに対するおまえの愛は、経験したものに対するおまえの軽蔑だったp607/今日、わたしは自分自身についての宗教の苦行者だ。一杯のコーヒーと一本の煙草とわたしの夢は、宇宙、星辰、仕事、愛、美や栄光の代用品となるに十分だ。刺激の必要もほとんどない。阿片をわたしは心に持っている。p618/夢見ることを始めるにあたって最良の方法とは本によるものだ。p.631/

  • 皮肉で孤独を享受するあたりに共感しまくる。しかし書くことに対する姿勢には圧倒される。眠い時でも書く。眠い状態を。まねできない。
    しかしながらまた完成版がないのがこの書である。
    書いたら死んでも残るかも、を最大限活かした書。いやしかし…夢に生きたしと思えども、周りの人間を煩わしいと思えども、患って生きるしかない人間=読者にするの強すぎるな。お前は俺か

  • 実にメロウでメランコリックな本だ。ここに記されている事柄を事務的に綴れば、ある堅実な生活を過ごす(?)勤め人の内省と観察、あるいは省察を綴ったものとなるだろう。1人の人間の内側にここまで豊かな思念が詰まっていることに唸らされ、そして彼が見る外側の世界が一見すると退屈な日常であるようで、しかし同時に豊満なディテールを備えた(悪く言えばペソアの陰鬱な世界観をそのまま投影した)ものであることも痛ましく感じさせられる。いつも思うのだけれど、この「つぶやき」は今のブロガーの共感を誘うのではないか。読むことを薦めたい

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著者プロフィール

Fernando Pessoa (1888-1935)
20世紀前半のヨーロッパを代表するポルトガルの詩人・作家。
本名のフェルナンド・ペソアだけでなく
別人格の異名カエイロ、レイス、カンポスなどでも創作をおこなった。
邦訳に上記4名の詩選『ポルトガルの海』(彩流社、1985年/増補版1997年)、
『アナーキストの銀行家 フェルナンド・ペソア短編集』(彩流社、2019年)ほか。
散文集『不安の書』は、ペソア自身に近い男ソアレスの魂の書。



「2019年 『不安の書【増補版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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